【心理学科】「ものづくり × 心理学」: ユニ・チャーム社との共同研究を学術誌に掲載!(4)

たかが掃除、されど掃除。掃除でポジティブ気分が増えることだってあります。本日は、そんな掃除について、どんな道具を使うとどんな気分の変化が生じるのかを共同研究で明らかにした心理学科宮﨑由樹准教授からの報告をお届けします(投稿は学長室ブログメンバーの大杉です)。

 


心理学科の宮崎です。

日本人間工学会の学術誌 『人間工学』 の59巻1号に、福山大学・北海道大学・ユニ・チャーム株式会社の共同研究の成果 「隙間清掃の容易なフロアワイパーの心理評価」 を発表しました。

この論文では、非常に狭いスキマも清掃可能なフロアワイパーで床清掃をおこなった後の気分好転を報告しています。フロアワイパーでの床清掃時に、家具・家電や壁のスキマ(例えば、冷蔵庫と壁のスキマ)、ソファと床のスキマなど、狭いスキマをうまく掃除できないことに不満を感じたことはないでしょうか?この研究は、そうした床のスキマ清掃に対する消費者ニーズに応じて開発されたフロアワイパーの心理評価を行ったものです。

実験では、日本の一般的な食卓を模した清掃スペース(↓)を準備し、実験参加者にそのスペースをスキマ清掃のしやすいフロアワイパー、ないし標準的なフロアワイパーで清掃してもらいました。実験スペースには、家具が置かれ、幾つかの狭いスキマがありました。そして、ところどころに擬似的なゴミをまいて、スキマも清掃するように参加者に促しました。

以下のリンクから、清掃スペースの360度画像がご覧いただけます。

Post from RICOH THETA. – Spherical Image – RICOH THETA

これらの動画がそれぞれのフロアワイパーでの清掃の様子です。

<スキマ清掃のしやすいフロアワイパーでの清掃の様子>

<標準的なフロアワイパーでの清掃の様子>

実験の結果、スキマ清掃のしやすいフロアワイパーでの清掃後には、ポジティブ気分は増し、ネガティブ気分は減ることがわかりました(ポジ/ネガ気分はPANASという心理尺度を使って測りました)。一方で、標準的なフロアワイパーでの清掃後には、そういった結果は認められませんでした。

この研究で、清掃スペースにうまくマッチしたフロアワイパーで清掃することの大切さが明らかになりました。スキマ清掃しやすいフロアワイパーでの清掃のように、スキマをスムーズにうまく清掃できれば、清掃後には気分が好転することが分かりました。また、清掃後には、それぞれのフロアワイパーの使用感も測りましたが、スキマ清掃のしやすいフロアワイパーを使用することは、快適で楽しいこと、清掃後にまた使用したくなることも示されています。

<実験で使用したスキマ清掃のしやすいフロアワイパーです。>

このように、産業界と連携した研究が心理学科では行えます。ユニ・チャーム株式会社との共同研究については、これまでも学長室ブログで報告しておりますので、過去の記事もぜひご覧ください(共同研究1共同研究2共同研究3共同研究4共同研究5)。

なお、企業と共同研究を実施する際には、認知心理学研究室のゼミ生も活躍してくれています。この研究には、2020年度卒業生の恒石あずささん(広島県立神辺旭高等学校出身)が協力してくれました。

高校生のみなさん、福山大学の心理学科で企業が抱える課題の解決に一緒にチャレンジしてみませんか?


気分転換に掃除をする、という人は多いかもしれません。どうせ掃除するなら、よりポジティブ気分になり、ネガティブな気分が軽減する道具を使いたいものですね!何を使うか、どう使うか、そんな様々な要因が、人の気分に影響するという面白い報告でした。

今週土曜はオープンキャンパス(春の見学会)です。高校生の皆さんも、そんな心理学の不思議をぜひ体験してはいかがですか?

 

 

学長から一言:狭い隙間の中にある埃や塵がスッキリと掃除できた時の爽快感、分かりますねえ。逆にわずかに手が届かず、イライラした経験。同じような気持ちは背中の痒いところに手が届くか、もう一寸かの時にも感じるかもしれません。そういう使う道具によっても結果が異なる場合の微妙な気持ちや心の動きを科学的に検証できるのも心理学という学問の面白さなのでしょう。