【薬学部】学生の努力が実る!学生発表奨励賞の受賞!

2024年10月16-17日に開催された第63回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会 中国四国支部学術大会(岡山)において、薬学研究科と薬学部の学生4名が学生発表奨励賞を受賞しました。薬学部長室にて受賞者へ賞状と副賞の伝達式を行い、その後に学長室を訪問して受賞の報告を行いました。そのことについて、薬学部の松岡准教授からの報告です。(投稿は五郎丸です)

 


日本薬学会中国四国支部学術大会の学生発表奨励賞の受賞者は、以下のとおりです。

要田 恒希さん(薬学研究科博士課程1年生/衛生薬学研究室)、山脇 葵さん(6年生/分子免疫学研究室)、藤井 惇一さん(6年生/病態生理・ゲノム機能学研究室)、辻 颯真さん(5年生/医薬品化学研究室)の4名です。

 

井上学部長より受賞者へ、賞状と副賞が伝達されました。

賞状を伝達される要田さん

賞状を伝達される山脇さん

賞状を伝達される藤井さん

賞状を伝達される辻さん

井上学部長と受賞者たち

指導教員とともに受賞の喜びを分かち合いました。 写真左から、要田さんと竹田教授、山脇さんと今教授、藤井さんと道原教授、辻さんと町支教授

 

続いて、大塚学長のところへ受賞の報告に伺いました。学長から、「よく頑張りましたね、おめでとうございます。」という労いと祝いの言葉を頂き、とても和やかな雰囲気で、研究成果についての報告が始まりました。

 

要田さんは「ペルフルオロオクタン酸による乳がん細胞遊走の促進:PPARα制御性の脂肪酸2位水酸化酵素FA2Hの関与」という研究題目で発表しました。 

ペルフルオロオクタン酸(PFOA)は、ヒトに対して発がん性を示す物質として規制され、生体への影響について世界中で関心が高まっています。これまでに我々は乳がん細胞の遊走を正に調節する因子としてペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα)制御性の脂肪酸2位水酸化酵素(FA2H)を報告しています。本研究では、PFOAがPPARαを直接活性化することに加え、PPARαの抑制を担うPPARβ/δの働きを抑えることでFA2Hの発現を誘導し細胞遊走を促進することを解明しました(1)。また、ごく最近、FA2Hの機能解析に関する論文が刊行されました(2)。 日頃よりご指導をいただいております竹田先生をはじめ諸先生方のおかげで学生発表奨励賞をいただくことができました。深く感謝申し上げます。更なる成果を上げることができるようにこれからも精進してまいります。

(1) J. Toxicol. Sci., 47(4), 2022

(2) J. Biochem., 177(1), 2025

受賞を喜ぶ、要田さんと竹田教授

 

山脇さんは「ピシフェリン酸の抗不安・抗ストレス効果と腸内細菌叢への影響」という研究題目で発表しました。

ヒノキ科サワラの葉に含まれる生理活性成分の一つであるピシフェリン酸は、これまでの研究から老化促進モデルマウスにおいて抗不安効果を示すことが分かっています。そこで私は、うつ病の実験モデルである拘束ストレスモデルでピシフェリン酸を摂取することによる抗不安・抗ストレス効果について研究を開始しました。その結果、ピシフェリン酸が抗不安・抗ストレス効果を示し、拘束ストレスによる腸内細菌叢の変化を抑制することを明かにすることができました。今後、さらに研究を発展させることで、うつ病のリスク軽減や病態悪化の抑制に貢献できると期待しています。授業の勉強と研究を二つ同時に行うのは、非常に大変でしたが、興味深い結果が得られていく中で研究のおもしろさを実感することができ、自身の研究成果を学会発表する機会を頂くことができました。指導頂いた先生方、また協力して頂いた研究室の方々に感謝申し上げます。

日本薬学会中国四国支部学術大会会場にて、写真左から村上さん、山脇さん、柴田講師(岡山県立大学・共同研究者)

 

藤井さんは「脂漏性皮膚炎関連頭皮微生物に対するヒノキチオールとコーン由来マルトオリゴ糖類の相乗効果」という研究題目で発表しました。 

脂漏性皮膚炎は、一般人口の3~10%が発症すると言われています。その原因の一つとして、M. furfurの増殖が関与しています。しかし、M. furfurを減少させても、S. aureusの増加やS. epidermidisの減少が起こると、 他の皮膚トラブルにつながる可能性があります。そこで、化粧品の保湿成分や抗菌作用を持つことが知られているPCA亜鉛、ヒノキチオール、 レオガードMTの3成分が、M. furfur、S. aureus、S. epidermidisに与える影響を調べました。その結果、単独での有効濃度だけでなく、2種混合時の最適濃度も明らかになりました(1,特許共同出願中)。また、一昨年にも本学会で抗菌作用に関する研究成果を発表しました(2)。これらの研究を通じて、2種混合液が脂漏性皮膚炎の予防や治療に役立つ可能性を示すことができ、非常にうれしく思っています。今後は、研究のさらなる発展を後輩に託し、実用化されることを願っています。

(1)Fundam. Toxicol. Sci., 11(5), 2024

(2)Fundam. Toxicol. Sci., 10(8), 2023

研究室メンバーに祝福される藤井さん

 

辻さんは「Dictyodendrin Bの全合成研究」という研究題目で発表しました。 

ディクチオデンドリン類は、2003年にFusetaniにより海綿動物Dictyodendrilla verongiformisから単離された天然物であり、これらはテロメラーゼ阻害作用などの強力な抗癌剤として機能するなど、新しいクスリとしての可能性を秘めていることから多くの研究者に注目されています。そこで、私はこれらの化合物の新しい合成ルートを開発する研究に挑戦しました。現在は、完成まであと一歩のところまで来ており、ここまでの研究成果を中国四国支部学術大会で発表しました。大変緊張しましたが口頭発表するという貴重な体験をすることができました。

日本薬学会中国四国支部学術大会会場にて、研究室メンバーとともに

 

最後に、みなで記念写真を撮りました!

受賞学生たちを囲んで、記念写真です。

 

福山大学薬学部には18研究室あり、基礎薬学分野、衛生薬学分野、医療薬学分野、薬学臨床分野から構成されています。学生は3年次後期から各研究室に配属され、研究室教員の指導のもとに課題研究に取り組んでいます。また、薬学部を卒業後は、福山大学大学院の薬学研究科博士課程に進学し、より専門性の高い研究に励む大学院生もいます。

研究室一覧:https://www.fukuyama-u.ac.jp/course/pharm/pharmacy/labo-list/

薬学研究科:https://www.fukuyama-u.ac.jp/course/grad/grad-pharm/

 

今回の受賞は、日頃の学生たちの研究努力が実った結果です。これからも吉報をもって学長室を訪れることができればと思います。今後も学生たちへの応援をよろしくお願いします。

 

学長から一言:日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会の中国四国支部の学術大会で行った日頃の研究成果の報告が、学生発表奨励賞を受賞するという誇らしい結果につながった薬学部および薬学研究科の皆さん、おめでとうございます! きっと所属ゼミでの厳しくかつ適切な指導と皆さん自身の頑張りが実を結んだものと思います。これからも皆さんに続く人たちが続々と現れるのを期待しています。