【薬学部】地域と連携した薬剤師研修会を開催
2025年1月10日(金)、尾道薬剤師会と連携した薬剤師研修会を開催しました。このことについて、杉原教授が報告します(投稿は五郎丸です)。
「広島びんごフィジカルアセスメント研究会」は、本学薬学部教員と地域薬局や病院勤務の薬剤師の有志から成る研究会で、地域貢献や研究活動を行っています。コロナ禍の期間は活動を控えましたが、毎年日本薬剤師研修センター認定の集合研修を開催しており、今年度も本学34号館の学習支援室を会場として開催しました。Webによる参加形式は好評で会場参加よりも人気が高く、日常業務に携わりながら研鑽を積む上でWebによる研修は利便性のよい学修手段であることを改めて認識しました。
講師 尾道市立市民病院 博士(薬学) 岡田昌浩氏
研修会場の様子
今回は、本学卒業生で2022年3月に本学において博士(薬学)を取得した尾道市立市民病院の岡田昌浩先生による研修会でした。岡田先生が学位取得後、新たに取り組んでいる研究内容の紹介で、「ダニ媒介感染症における薬剤師の関わり」というテーマでの講演でした。
ダニ媒介感染症の中で日本紅斑熱の発症は西日本に多く、広島県は発症数の多い県の一つです。さらに、広島県の中でも福山市や尾道市などの備後地域は特に多いことが知られています。
広島県内の日本紅斑熱患者推定感染地域と発生状況(2013~2023年)
広島県HPより転載
日本紅斑熱は、リケッチアの一種類であるリケッチアジャポニカ(Rickettsia japonica)と呼ばれる細菌による感染症で、この病原体を持ったマダニに咬まれることで感染します。特にマダニの活動期である5~10月はマダニの刺咬から身を守ることが大切で、野山に入る場合は皮膚を露出させない衣服を着用し、ダニ忌避剤を使用すること、マダニは皮膚を深く刺咬することから、皮膚に付着したマダニを除去する場合は、感染を防ぐためにつぶさず頭部をピンセットで除去する必要があること等の感染予防の重要性について学修しました。また、日本紅斑熱は数日の潜伏期後に頭痛や発熱、倦怠感を伴って発症しますが、他の疾患と間違われやすいことがしばしば起きるそうです。医療機関での治療は、第一選択薬としてテトラサイクリン系の抗菌薬の早期の投与が重要であるため、医療従事者はマダニの活動期は日本紅斑熱を念頭においた治療への対応が必要であるとの内容でした。
マダニによる刺咬は毎年増加傾向にあり、日本紅斑熱の発症は新聞でも取り上げられています。質疑応答では、身近なところで起きたマダニによる刺咬の事例を含めて多くの質問が寄せられました。
Web参加への配信を行っている尾道薬剤師会の山田真弘氏
この度の研修会では福山市薬剤師会や因島薬剤師会など近隣の薬剤師会に大変お世話になりました。特に、尾道薬剤師会の山田真弘先生がWebでの研修が可能となるように視聴環境を整えてくださいました。ご協力くださいました地域の薬剤師会の皆様に御礼申し上げます。
広島びんごフィジカルアセスメント研究会 代表
薬学部 教授 杉原成美
学長から一言:薬学部が地域の薬剤師の有志の皆様と連携して実施している研究会「広島びんごフィジカルアセスメント研究会」の直近の催しで取り上げられたのは、ダニが媒介する感染症とその対応策。とくにマダニが媒介する日本紅斑熱が西日本、広島県で多く見られることを初めて知りました。講師を務めて下さった尾道市立市民病院の岡田昌浩博士に感謝したいと思います。