【心理学科】心理実習、学外でも頑張っています!

福山大学心理学科の授業の中には、実際に病院などに行き現場を体験する授業があります。今回の記事ではその様子を中野美奈准教授が報告いたします(投稿は向井です)。

 


心理学科の中野です。

心理学科で4年次の「心理実習」を履修している実習生は、毎週の講義とは別に学外実習に参加し、講義と合わせて80時間の実習を積み上げていきます。今年度は11名の学部実習生が、保健・医療分野、教育分野、産業分野における学外の現場で貴重な学びを得ています。

10月11日(金)には、保健・医療分野の実習先である医療法人仁康会小泉病院での見学実習が実施されました。

小泉病院は三原市小泉町にある精神科医療の専門病院です。広島県の精神科救急医療施設、地域連携拠点機能病院、依存症専門医療機関指定施設、東部ひきこもり相談支援センターといった様々な役割を担っています。精神科急性期治療病棟、精神科一般病棟、精神科療養病棟、精神・身体合併症病棟、認知症治療病棟といった複数の病棟を有するとても大きな病院です。

実習ではオリエンテーションの後、まず院内の見学が行われました。

<とても広くてキレイな病院です!>

急性期治療病棟、慢性期治療病棟、認知症治療病棟、外来、デイケア、共同住居といった施設を、2グループに分かれて実際に見学させていただきました。

実習生のほとんどは、精神科の専門病院に来るのも、ましてや病棟を見るのも初めての体験でした。院内見学の後は、実習指導者の高橋耕介先生をはじめ、4名の心理職の先生方がそれぞれ専門分野の講義をしてくださいました。そのうちの1名は、福山大学を昨年度卒業し、小泉病院に就職した粟根大貴さんです。嬉しい再会でした!

小泉病院には心理検査やカウンセリングの他、児童青年期外来、アルコール依存外来、ギャンブル依存外来、もの忘れ外来等の専門外来があります。入院治療では、統合失調症心理教育、アルコール依存治療プログラム、ソーシャル・スキルズ・トレーニング(SST)なども行われています。心理専門職が他職種と協力してどのように活動しているのか、具体的に学ぶことができました。

<真剣に心理職の仕事についての講義を受けています>

もの忘れ外来の講義では、実習生の桒原さんが患者さん役となって、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)という認知症検査のロールプレイも体験しました。

<認知症検査を受ける体験も初めてです!>

以下、小泉病院実習についての実習生の感想を紹介します。

千葉 優希さん(心理学科4年・島根県立吉賀高等学校出身)

「小泉病院での実習では、病院の見学や心理士の方が精神科医療での業務などについての講義をしてくださいました。病院の見学では、病棟や外来の子どもが利用する待合室、心理検査室などを見ながら、実際に心理職の方が行っている行動観察や、検査などの業務についてもお話を聞くことができました。講義では、設置されている病院が少ない思春期専門外来や依存症外来などについてのお話を初めて聞くことができたので、とても勉強になりました。そして、患者さん一人ひとりの人生の背景や生活状況を考えながら、その人のニーズに合った治療や支援の方法を心理士だけでなく、多職種の方とも連携して支援していくことの重要性をより感じました。今回の実習で授業だけでは分からなかったことも学ぶことができたので、これからの学びに活かしながら公認心理師の資格取得のために励んでいきたいです。」

 

桒原 華さん(心理学科4年・岡山県立倉敷古城池高等学校出身)

「小泉病院では、知能検査の種類の紹介や長谷川式認知症スケールの実施の仕方だけでなく、入院後の全体的プログラムの説明などをご講義いただき大変勉強になりました。また実際に病棟内を見学させていただき、大学の授業だけではわからなかった、患者さんへの声掛けや、実際に使用されている心理室での説明など見学でしか得られない大切なことを学ぶことができました。特に認知症治療病棟では、高齢の患者さんに対しどのように認知症検査を行うのか、行う上での工夫を知ることができ大変勉強になりました。声の大きさだけでなく、話すスピードや、検査を始める際の声かけの工夫など、患者さん一人ひとりの状態に合わせた、検査での柔軟な対応が心理師にはとても大切であることを改めて学ぶことができました。実習で得た学びを、将来に活かしていきたいと思います。」

 

中山義朗さん(心理学科4年・並木学院福山高等学校出身)

「小泉病院での実習では、心理職の業務と児童思春期外来について詳しく学びました。心理職の仕事は、心理検査が約5割、カウンセリングが約3割であることを知りました。カウンセリングでは、日常生活に関する助言が中心となるため、コミュニケーションが難しい患者さんにも対応できる点が重要だと感じました。また、児童思春期外来では、発達的問題、不登校やいじめなど、0〜18歳の子どもたちが抱える問題に多職種で取り組んでいることが分かりました。初めて訪問した精神科病院では、施錠が徹底されており、患者さんの脱走や自傷・他害を防ぐ仕組みがあることに驚きました。特に、高齢の患者さんが多く、身体疾患との併発によって支援が困難なケースも多いことが印象に残りました。また、敷地内に多くの関連施設があることで、患者さんが安心して生活できる工夫がされていることにも驚きました。全体を通して、心理職の役割の多様性と、医療機関との連携の重要性を強く実感する実習となりました。」

今回の実習を通じて、実習生たちは精神科医療の現場を実際に目の当たりにし、学びを深めることができました。心理職の多様な役割や医療現場での多職種連携の重要性についての理解が一層深まったことでしょう。今後の学びに向けて、実習生が今回の実習で得た知識をさらに発展させ、公認心理師としての目標に向かって一歩ずつ成長していくことを期待します。小泉病院の皆様に心から感謝申し上げます。

 

学長から一言:心理学科4年次の授業「心理実習」では、学内の講義の他に、保健・医療、教育、産業といった各分野の学外諸施設における80時間の実習が必須なのですね。普段は知ることが難しいそれぞれの現場の実態、とくに心理学をバックグランドとする専門職の方々の活躍ぶりに触れる貴重な機会。地元関係機関のご協力の賜物です。今回の実習でお世話になった小泉病院の皆様に私からも御礼を申し上げます。