【建築学科】国宝明王院の見学に行きました!(日本建築史)
みなさん、こんにちは! 建築学科では、2年生が学修する「日本建築史」(担当:佐藤圭一教授)という科目があります。日頃は座学を中心とした授業が行われていますが、キャンパスを飛び出して、バスに乗って建物を見学に行くこともあります。今回は地元が誇る国宝・明王院の見学に訪れた様子を、FUKUDAI Magの学科委員であり、引率補助した大畑がお伝えします。
明王院は、福山市草戸町にあります。馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんが、実は明王院は福山城とも関係の深いお寺です。福山藩の初代藩主であった水野勝成公が庇護した、福山藩の祈願寺でした。
バスに乗って到着すると、早速珍しい建物があり、授業を担当している佐藤教授が説明をしていました。「十王堂」という文字の上にある組物(くみもの:軒を支えるために小さな木材を組んだもの)が柱の上にない禅宗様のスタイルになっています。
広島県の重要文化財である「山門」をくぐると、目の前には国宝である「本堂」があります。こちらの本堂は2021年に建立700年を迎えており、今年(2024年)は33年に一度の御開帳が行われる特別な年でもあります。(御開帳とは、ご本尊十一面観音さまにお目にかかれる貴重な機会のことです。)
明王院の本堂について、説明をしてくださったのは徳岡伝統建築研究所の徳岡秋雄さんです。徳岡さんは宮大工であり、かつ一級建築士資格をもつという職人さんです。この日は本堂内部の特徴を中心に丁寧にご説明くださいました。学生たちは真剣に説明を聞いて、メモを取っていました。
特に興味深かったのが、外陣の天井の造りについてのお話でした。和様と天竺様(大仏様)、唐様(禅宗様)が組み合わさった「折衷様」という様式が使われている建物で、明王院本堂は現存しているものとして最古級のもので、尾道の浄土寺本堂と並んで最高傑作の1つです。下の写真の中に、それが凝縮されていて、古建築マニアにはたまらないそうです。なかでも輪垂木天井は、この後300年を経ないと日本建築に登場しない、当時最先端の技術とデザインが使われています。そんなにも貴重な建物が大学の近くにあるというのは、建築を学ぶにはとても恵まれた場所であると実感しました。
続いては、普段は入ることのできない県指定重要文化財の書院と庫裡を見学しました。こちらの説明をしてくださったのは“明王院を愛する会”の高橋加造さんです。高橋さんは福山城にも造詣の深い方であり、明王院との関係や歴史的なお話をしてくださいました。
縁側からは花が咲いたお庭と本殿や五重塔を眺めることができます。障子の奥は和室になっており、ここからは福山城を見ることができます。(当時は高いビルに囲まれておらず、一目で福山城を見つけられたと想像されます。)
書院の中をぐるりと回って、庫裡、護摩堂まで見学させていただき、学生たちはどこの部分に着目してレポートを書こうかと思案しているようでした。明王院には国宝である本堂と五重塔をはじめとして、県や市指定の重要文化財の建物もいくつもあります。
今回、明王院の見学会に同行させていただき、興味深いお話をたくさん聞くことができました。11月1~4日の御開帳に合わせて、また訪れたいと思っています。
日本建築史に登場する建築を身近に体験できて、贅沢な時間を過ごせました。徳岡さん、明王院を愛する会の皆さん、ありがとうございました。
※本記事で使用した写真はいずれも掲載許諾をいただいております。この場をお借りして感謝申し上げます。
学長から一言:建築学科の授業「日本建築史」の一環で訪れた福山にある国宝・明王院は、建築学を専攻する人にとってたいへん貴重な宝物に溢れた場所のようです。わが国の寺社建築の妙に通じた古の匠たちの技に圧倒されたことでしょう。古の知恵や技術を現代建築にどう活かしていくか、ここからが皆さんの腕の見せ所です。