【備後圏域経済・文化研究センター】本学所蔵「元亀2年連歌懐紙貼付屏風」成立背景と新発見・大友宗麟書状の関係に迫る

備後圏域経済・文化研究センター・文化部門行事2023のトピックスに関連して、今回はこの12月に実施される行事の概要と見どころを、センター長の青木美保教授(人間文化学科)よりお知らせします。(投稿は、学長室ブログメンバーの清水)

 


備後圏域経済・文化研究センター文化部門では、二つの行事「文化フォーラム」・「地域資料活用研修」を実施してまいりましたが、今年度は、「和歌・短歌・連歌・俳句」を共通テーマに取り上げて、日本の伝統文化と地域文化との関わりを明らかにします。

トピックスとして、地域資料活用研修で取り上げる本学所蔵「元亀2年連歌懐紙貼付屏風」についてお知らせいたします。屏風に貼り付けられたのは、元亀2(1571)年8月3日に京都で興行された連歌会の懐紙(おそらくは、当時の代表的連歌師・里村紹巴による清書)で、特筆されるのは、その百韻連歌の発句及び挙句直前の句の詠み手が「麟圭」であることです。麟圭は九州の大友宗麟配下の丹波家出身の僧で、筑後高良山の座主に任じられた人物でした(「麟圭」の「麟」は宗麟から一字を賜った偏諱(へんき))。しかも、宗麟が蹴鞠の指南を仰いだ京都・飛鳥井家の人物も、この連歌会に連衆として参加しています。

元亀2年連歌懐紙貼付屏風の初折の表

きわめてタイムリーなことですが、大友宗麟が能島村上家に宛てた同じ元亀2年2月22日の書状が発見されたことが、12月2日『中国新聞』朝刊で報道されました。このニュースは、本行事の講師お二人には僥倖というべき知らせでした。

本学所蔵「連歌懐紙貼付屏風」については今年度初めから調査研究が続けられていましたが、このニュースによって一挙に本資料の歴史的意義が明らかになってきました。書状は戦国時代元亀2年の、瀬戸内海を挟んだ都と地方の軍事的勢力関係の動態を生々しく教えますが、本屏風は、その後景にあった連歌会や蹴鞠伝授を介した都と地方との人的交流、また、そこでの政治的かつ文化的コミュニケーションの実態を生き生きと伝えているのです。

 

地域資料活用研修 「戦国時代の京都と地方の交流を読み解く」
1,日時 12月23日(土)14:00~15:30 
2,場所 福山大学社会連携推進センター301
3,講師 本学人間文化学科教授 竹村信治(日本中世文学専攻)
     福岡県立北筑高校教諭 黒岩 淳(連歌研究者)

なお、翌12月24日は、文化フォーラム第2回で、黒岩淳氏を講師に会場で実際に連歌を詠んでみるという参加型の連歌会を行います。どなたでも参加できます。575・77を、来場者で次々に繋いでいくもので、ゲーム感覚で楽しみましょう。

 

文化フォーラム第2回「連歌興行実践―句が繋がっていく魅力―」
 1,日時 12月24日14:00~16:00
 2,場所 福山大学社会連携推進センター301
 3,講師 福岡県立北筑高校教諭 黒岩 淳(連歌研究者)

また、文化フォーラム第1回は、2021年度に行った「地域と和歌」の第二弾、第3回は、「中世の福山の文学的背景―戦国時代の福山と足利義昭の周辺」、第4回は「英語で読む和歌と俳句」です。シリーズでお楽しみください。

 

学長から一言:元亀2(1571)年に催された連歌会にまつわる屏風が本学の所蔵品の中にあったこと、初耳でした。備後圏域経済・文化研究センター文化部門がその屏風をめぐる当時の文化や歴史に関する研究成果を近々開催の文化フォーラムで披露。あわせてフォーラム参加者が和歌を詠む企画もあるとのこと。暫し遠い昔にタイムスリップして中世の世界に浸り、風流を楽しんでみてはどうでしょう。