【生物科学科(生物工学科から令和6年4月名称変更)】9/9(土)オープンキャンパスは生化学!
9月9日(土)は福山大学オープンキャンパスです。生き物をあらゆる観点から学ぶ生物科学科(生物工学科から令和6年4月名称変更)では、化学に近い生物学をテーマに準備をしています。具体的には、果実やお酒の香り成分を分析し、その食品の香りの物質を化学的に明らかにする研究について紹介します。準備している内容についての情報が生物工学科の太田教授から届きましたので、同じく生物工学科の佐藤が紹介します。
食品の香り
食べ物をおいしいと思ったとき、味だけでなくその「香り」や「におい」の影響も大きいと思います。「香り」や「におい」の特徴のことを香気特性といって、食品の価値に大きく関わることが知られています。しかし、食品の香りは多種多様な香気成分が混ぜ合わさってできており複雑です。しかも、それぞれの化学物質は構造によって香りの特徴が異なるうえに、量によっても異なる香りを感じさせます。食品の中にある極微量の香気成分を明らかにするためには精密な化学分析が必要です。
化学分析
香気成分の分析にはガスクロマトグラフと質量分析が用いられています。クロマトグラフというのは、化学物質の混ざりものの中から化学的・物理的な性質を利用して目的とした化学物質を分離させる装置のことです。一方、質量分析とは、化学物質の質量(分子量)を測定し、さらに化学物質の構造を特定することで、その化学物質の種類を同定することができる装置です。さらに、その化学物質の量も知ることができます。
ワインの香り
ワインの香りは、詳しく見てみると、ブドウに由来する香り、酵母の醗酵に由来する香り、マロラクティック醗酵に由来する香り、熟成に由来する香りなどが渾然一体となったものですが、ブドウ品種ごとに特徴的な香りが存在しています。
ブドウの香気成分については数多くの種類が見出されています。たとえば、ピオーネや巨峰などのブドウでは、フルーティーな香りのエステル類が多いのに対して、オーロラブラックでは、それらに加えてグリーンな香りのアルデヒド類の割合が高いです。また、マスカット系では、リナロールやゲラニオールなどのモノテルペンアルコールが主要な香気成分ですが、マスカット系の中でも品種によりその組成は大きく異なります。ワイン醸造に用いられるマスカット・ベーリーAの特徴的な香りとして、2-フェニルエタノール(バラ様の香り)とフラネオール(カラメル様の香り)が認められており、マスカット・ベーリーAから醸造したワインにおいても、これらは特徴となる香りになっています。
果実の時期には、ブドウはこれらの化学物質を糖と結合させることで、気体にならない形で貯蔵しています。したがって、果実の段階ではこれらの化学物質の香りはしません。しかし、ワイン醸造中に糖との結合が切れることで、香気成分が気体として生じ、その結果、化学物質の香りが感じられることになります。生物が持つ面白い仕組みですね。
今回のオープンキャンパスでは、香りと化学構造との関係と香り成分の分析手法について、化学の視点で解説していきます。生物が好きだけど、化学も好きという皆さんはぜひ、9月9日(土)の生物工学科オープンキャンパスのイベントに来てください。
福山大学は、そのユニークな教育舞台と充実した機器設備を使って、化学物質から細胞、個体、種、生態系、生物多様性といった様々な角度から生き物を学べる大学です。興味のある皆さんは、生物科学科(生物工学科から令和6年4月名称変更)で学んでみませんか?
学長から一言:次回のオープンキャンパスの際に生物工学科で体験できる内容の予告は、私などにはちょっと専門的ですね。しかし、香りについて大事なことを教わったようで、今度いつかワインの香りについて蘊蓄を示すのに役立ちそうです。もっと詳しくは、是非とも高校生の皆さんに福大キャンパスで体験してもらいたいですね。