【海洋生物科学科】日本人初の快挙!イソギンチャクに“科”を設立!
海洋生物科学科の泉貴人講師はこのたび、ヤツバカワリギンチャク上科というグループに関して、DNAの塩基配列を用いて徹底的に整理する研究の成果を発表しました。その過程で、新しい“科”と“属”を設立したのですが、日本人がイソギンチャクにおいて新しい科を設立したのは史上初だそうです。今回は、泉講師から最新のイソギンチャクの分類研究の報告に基づき、海洋生物科学科の学長室ブログメンバーである山岸が紹介します。
刺胞動物に属するイソギンチャクは、水族館でもよく展示されるような有名な生物である一方、新種が続々と発見されるグループです。泉講師は現在の日本におけるイソギンチャクの分類学研究分野のトップランナーの一人であり、昨年福山大学に赴任してからも様々なイソギンチャクの新種を発表してきました。そんな破竹の勢いの泉講師、今回は4種の新種のみならず、1つの“新属”、さらに1つの“新科”を発表しました。
“カワリギンチャク類”と呼ばれるイソギンチャクの仲間は、ヤツバカワリギンチャク上科に属するイソギンチャクの総称で、ヤツバカワリギンチャク科・カワリギンチャク科の2科が属しています。非常に鮮やかな蛍光色をしている種がいることで有名ですが、深海性の希少な種が多いため、未記載種(新種予備軍)が多く残されていました。
泉講師は、日本大学の藤井琢磨博士、千葉県立中央博物館分館海の博物館の柳研介博士、国立科学博物館の藤田敏彦博士とともに、各地の水族館の協力も得つつ、日本全国から50個体以上のカワリギンチャク類を収集して研究しました。その結果、以下のような非常に大きな発見がいくつも達成されました!
①色鮮やかな4種もの新種を発表しました。今回発見された新種には、その見た目の特徴からイチゴカワリギンチャク・リンゴカワリギンチャクという新たな和名がつけられ、さらに長らく学名が“無効”となっていたオオカワリギンチャク・アバタカワリギンチャクに関しても、有効な学名を新たに与えることで新種として記載しました(図1)。
②DNAの解析より、ヤツバカワリギンチャク科・カワリギンチャク科とも再編が必要であることが示されました。そこで、「ヨツバカワリギンチャク科」という新しい科を設立し、一部の種を移動するとともに、カワリギンチャク科の中にあるカワリギンチャク属を分割し、新属「カワリギンチャクモドキ属」を設立しました(図2)。
上記の発見により、日本のヤツバカワリギンチャク上科は3科・6属・11種の生息が確認され、世界の中でもとても高い多様性を持つことが示されました(図1)。
興味深い本研究について、泉講師がYouTubeチャンネルで自ら解説しています!
泉講師は「自身の大学院生時代からの研究が、1つの集大成を迎えることとなりました。その中で、自身の手で新科や新属、4種もの新種を発表し、日本におけるカワリギンチャク類の多様性を一挙に証明できたことに感無量です。そして何より、イソギンチャクで新しい“科”を設立したのは日本人初ということで、私に似合う快挙ですね!」と誇らしげでした。
学長から一言:新種の生物の発見も大変な業績ですが、個々の発見の積み上げの結果、生物の分類における「科」や「属」をあらたに確立するというのは並大抵のことではないでしょう。泉講師の日頃からの弛まぬ努力や研鑽の結果であり、心から慶びたいと思います。これからも引き続き「快挙」の報告を期待しています。