【図書館】書く力=読む力?「注文の多い図書館」へようこそ
本学では、初年次教育の一つとして「読書推進システム」を実施しているのをご存じですか?本システムは、オンライン学修システム「セレッソ」にて「福山大学附属図書館読書推進システム」というコースを開設し、初年次教育科目・日本語表現法1の授業内で実施しています。
今回は、今年度の人間文化学科1年生に向けた授業内で、2週に渡って実施された本システムのガイダンスの様子を、附属図書館の喜多村がご報告します(投稿は学長室ブログメンバーの大谷)。
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“書く力”を鍛えるための“読む力”??
2022年度の不読率(1カ月に1度も本を読まなかった子どもの割合)は中学生で18.6%、高校生で51.1%(全国学校図書館協議会調べ)と高く、子どもの活字離れが国家的な問題となりつつあります。このことは、大学における専門教育の隠れた課題である「書く」能力の育成において、読書の習慣が少ない現代の学生のための「読む」能力の育成と、読書の習慣化という取り組みに繋がっていると言えるでしょう。
上手なアウトプットのためには、上手なインプットが必要。つまりは、“書く力”を鍛えるためには“読む力”を鍛えなければならない、という考えのもと、青木教授(人間文化学科)と竹盛准教授(大学教育センター)によって、2017年に本システム「注文の多い図書館」は作成されました。また、本システムの実施により、読書率の向上だけではなく、図書館の利用活性化も目的としています。
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とにかく注文の多い図書館(の猫)
「注文の多い図書館」は、宮沢賢治の小説『注文の多い料理店』をオマージュしています。物語と同様に、図書館の猫から出される様々な注文(質問)に答える形で本を読み進めていくと、「読書をすすめる上での“ポイント”を意識し、身に着けることができる=アウトプットをする際に意識すべきポイントが解る」というものになっています。
本システムのメインとなる、読む力を鍛えるためのコース「2 読書技能修得コース<本を読む>」では、「お困りごと(問題提起)」「仲間(問題解決の筋道)」「邪魔する人(問題解決をはばむもの)」という三つのキーワード(=質問)に則って本を読みすすめていきます。 これらのキーワードは、小説などの物語だけではなく、評論、エッセイ、学術研究書など、あらゆる本(資料)に当てはめることができます。
こうしてインプットした本の内容を、質問に答える形でキーワード毎に小出しにアウトプットし、それらの回答を繋げていくと、読んだ本の内容の要約・紹介となり、書評が完成する流れになっています。
6月20日、人間文化学科の1年生に向けて、青木教授が担当の「日本語表現法1」の授業内で、システムの概要と目的、実施方法についてのガイダンスが行われました。教室での説明の後、図書館へ移動し実際に本を選ぶところから「注文の多い図書館」への参加がスタートしました。
図書館の利用ガイダンスを受けて以来、久し振りに図書館へ来たという学生も、楽し気に選書しています。
こうして選ばれた本について、学生が其々にキーワードに沿って読み進めていくことになります。
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成果物としての『新入生にすすめる50冊の本』
6月27日の授業内では、青木教授より昨年度のシステム参加学生の優秀作品を一部紹介しつつ、なぜその書評が優れているか、というポイント解説の後に、喜多村が実際に『野生パンダ科学的探究』(魏輔文著、科学出版社東京、2022年)という本を読んでシステムに参加してみた「模擬回答の説明」と「ポイント解説」を行いました。
第2コースの各質問への回答は、第3コースの回答としてつなぎ合わせる言葉(赤文字部分)が必要となるので、一度ワード等テキストアプリに下書きを残しておきます。
「注文の多い図書館」の参加にあたって、3つのキーワード(お困りごと/仲間/邪魔する人)を文中から探し出そうとすると、小説・ノンフィクションなどの作品を選びがちですが、前述の通り『野生パンダ科学的探究』のような学術研究書にも、この3つのキーワードを当てはめることができます。これらのキーワードを意識することにより、本文中のポイント(書評の要点となる箇所)を読み取ることができます。
「注文の多い図書館」へ参加した学生により執筆された書評は、図書館運営委員の採点の後、評価の高い作品を『新入生にすすめる50冊の本』という小冊子に掲載しています。この冊子は、在学生・教職員から、新入生へ向けて読んでほしい本を紹介するために毎年発行されている、書評冊子となっています。図書館のHPからオンラインでもご覧いただけます。
青木教授によって採り上げられた例のように、昨年度の1年生も未来の後輩へ向けて、様々な本を紹介してくれました。今回ガイダンスを受けた学生さんの執筆書評も、来年の『新入生にすすめる50冊の本』へ掲載されることでしょう。
例年、システム参加学生以外からも原稿の募集を行っていますので、本ブログの読者の皆様にもぜひご執筆・ご応募いただければと思います。
「課題のために読まなければならない本があるけれど、限られた時間で要点となる部分を探すのが大変だ。」「要点となる箇所を読みたいのに、どこに注目すればいいかわからない。」などなど、本を読むことに慣れていない方、本システムを用いて、読書をすすめてみてはいかがでしょうか。
学長から一言:書かれた内容を正しく理解したり、他人様に分かり易く自分の考えを文章で表現するのは、多くの人にとって、いくつになっても修行が必要でしょう。読む力と書く力を伸ばすために、日本語表現法の授業と結びつけた本学独自の「読書推進システム」を通じた学びが図書館を舞台に繰り広げられているのですね。目に見える成果が上がることを期待しています。