【心理学科】ソフィア大学Silvia Nikolaeva教授の滞在報告
学生も教員も、ソフィア大学との関係で国際交流の素晴らしさを味わった1週間から1カ月と少し経ちました。6月5日(月)に、EU(欧州連合)のエラスムス・プラス・プログラムにより、協定大学であるソフィア大学からSilvia Nikolaeva(シルビア・ニコラエヴァ)教授が本学にお越しになったことは、すでにこちらで報告しましたが、実は滞在の全貌はまだご報告できておりませんでした。
その後のニコラエヴァ教授の滞在について、その詳細をようやくまとめましたので、受入教員かつ学長室ブログメンバーの大杉(心理学科)がご報告させていただきます(英語の簡易訳も含め長文のブログとなります)。
It has been a while since we enjoyed the cultural exchange between Prof. Nikolaeva and the students at Fukuyama University! We have already reported her arrival from Sofia University via the Erasmus+ Program, but I haven’t written about the details of her stay, so without further ado, I’m ready to report! (I’m Akemi Osugi, associate prof. at the department of psychology and receiving researcher.)
ニコラエヴァ教授のご専門は社会教育学ですが、実はこの滞在に合わせ、実に多岐に渡る様々な講義をご準備くださいました。6月5日(月)から9日(金)までの充実の1週間を写真や受講生の感想とともに振り返ります。
Even though her expertise lies in pedagogy, she prepared a series of wonderful lectures for us! An overview of the lectures with pictures and the students’ brief impressions are written below.
6月6日(火) 21 世紀における大学と学生の特徴(教養ゼミ)
滞在最初の講義は、新入生を対象とした教養ゼミで行われました。「大学で学ぶ」ということがどういうことか、大学がどのように学生の成長を促すかについて、まさに新入生の学びを深く考えるテーマでした。ソフィア大学の具体的な取り組みは、学生のみならず教員にもとても刺激的で、受講した皆が多くの学びを得るものでした。
The first lecture, titled “The 21st century universities and their students at a glanced.” showcased a few examples from Sofia University and we gained new insight on teaching methodologies in the university.
学生からは、以下のような感想が寄せられました。
「一番記憶に残ったのは「日本とブルガリアという2つの国は結構似ているところがある」とおっしゃっていたことです。また、講義を通じて、とても教育への熱意があることが伝わりました。大学の外でも社会に貢献したり、自分の為になるような行動や言動を続けたりすることが将来の役に立つことだとよくわかりました。そのような人物になれるように頑張っていきたいと思いました。」(心理学科1年)
「はじめの方に話されていた「なぜ大学に行くのか」というスライドがとても印象に残りました。私自身、「周囲の人が大学に行くし」とか「大卒の方がいいかな」とか、かなり安直な考えで大学に入りました。しかし、シルビア先生の講義で、新しい人々に出会ったり独立したりと、大学に行くことにこんなにも人生にプラスな面があるんだと思いました。」(心理学科1年)
The students’ impressions are as follows:
“I felt her passion for education through the whole lecture, and I thought I want to be a person who can make use of various experiences in the university and contribute to our society.”
“I immediately realized that studying at university has lots of advantages.”
<海外で学ぶことについて、学生からの質問にも丁寧に答えていただきました。>
6月7日(水) ブルガリアにおける多様性の問題(ジェンダーの心理学)
「多様性」という言葉が使われるようになって久しいですが、ブルガリアには地理的、歴史的観点等から日本以上の「多様性」が存在しているそうです。島国である日本人が普段あまり感じることのない点を改めて知ることは、とても大事だなと改めて感じた講義です。
The next lecture was titled “Diversity issues in Bulgaria: transformative developments in European context.”. Due to the Japanese people’s secluded islander way of life, I realized that we have been unaware of the global “varieties” of “diversity”.
学生の感想は、以下の通りです。
「日本と違ってブルガリアはEUに所属しているため、日本にはない集団組織からの制約や抑圧に従わねばならないのは大変だと思います。他国から自国への人の移動が多い国ほど、多様性が重要になってくると感じました。1つの曲をそれぞれの国の人が自分たちの国の曲だと認識しているお話は、EU加盟国ならではだと思いました。ヨーロッパでは同性婚が早期から認められているイメージが強かったので、ブルガリア国内での性差別問題が意外でした。」(心理学科1年)
「今は主に性の多様性について学んでいますが、世界では国際問題や文化など多くの多様性の問題があることを知りました。自分として何ができるか、社会がどのように変わっていくべきかをしっかり考えていく必要があると感じました。ジェンダーについても、国や地域、文化によってとらえ方や考え方が異なるので、自分の考えを持ちながらも、他者を否定せず、色んな考え方を知っていきたいと思います。」(海洋生物学科1年)
Students’ impressions are follows:
“The story about “whose song is this” was symbolic, and it showed me that diversity issues are more widespread in those countries.”
“I want to know deeply not only gender issues but also diversity issues. Then I will be able to accept others with my own opinion.“
<全学の教養科目であり、多くの学部学科の学生が聴講しました。>
6月7日(水) 留学の魅力と課題とは(GCC)
普段から国際交流をまさに実践しているGrobal Communication Club (GCC) において、国際化の利点や留学生の持つ課題についての講義が行われました。実際に多くの留学生の心理相談を受けたご経験のあるLucia Largo Almoguera講師もオンラインで参加してくださり、「留学生あるある」をどう前向きに解決していくかについて、有意義なディスカッションがなされました。
Later in the day, we had one more lecture, titled “Student mobility programs as social chance and challenge”, conducted by two lecturers – Prof. Silvia Nikolaeva and one of her colleagues, Lucia Largo Almoguera. We discussed how we should deal with our problems regarding student mobility and shared our experiences living abroad.
日本人学生も留学生も、様々な思いや経験を語り合い、大いに盛り上がりました。感想は以下の通りです。
「留学についてのアドバイスをもらいました。留学の参考にしたいです。」(国際経済学科2年)
「長期留学でのカルチャーショックの内容がとても興味深かったです。」(税務会計学科2年)
「私は留学したいです。留学した際にこの講義で学んだことを活かせたらいいなと思います。」(生命栄養科学科2年)
「海外生活に関する4段階のグラフを見たり、他のみんなが自分の海外生活の経験を話しているのを聞いたりして、私の心にとても響きました。」(メディア・映像学科3年・留学生)
Japanese and foreign students alike enjoyed this lecture! Some of their impressions are as follows:
“I got advice about studying abroad. I want to make use of this when I study abroad.“
“I was really interested in hearing about the culture shock when people study abroad for a long time.“
“I would like to study abroad. I hope I can make use of my knowledge I learned in this lecture when I study abroad.“
“Seeing this graph about the 4 stages of life in a foreign country and hearing everyone else sharing their own experience living abroad really resonated with mine.“
<GCCにおける講義後の集合写真。留学生も日本人学生も、皆笑顔です。>
6月8日(木) ブルガリアにおける捜査心理学の動向と特徴(捜査心理学課題実習)
受入教員である私大杉のゼミ(捜査心理学研究室)で開かれたブルガリアの捜査心理学に関する特別講義も、実に濃密な2コマでした。犯罪心理学に関連する他の2つのゼミ(犯罪心理学研究室と矯正心理学研究室)とも合同で、久しぶりの大所帯でのゼミ開催です。
The first Thursday lecture was held as a joint seminar among Investigative psychology lab, Criminal psychology lab and Corrective psychology lab, and titled “Trends and features of Bulgarian investigative psychology (2013-2023).”
ゼミらしく自己紹介や自分の関心のある研究の話題から始まり、「心理職として働く上で何が最も重要か」を考えるワークや「ブルガリアの夜を1人で歩けるか」について多面的に考えるワークなどが実施されました。ニコラエヴァ教授と学生たちとのインタラクションも多く、終始賑やかで楽しい時間でした。
We had a lot of interactions through brief self-introduction, some group work and had a lot of fun.
もちろん、ブルガリアの治安や、文化的背景、捜査心理学の現状を学ぶこともでき、学生は目を輝かせながら聴いていました。学生からは、以下のような感想が届いています。
Students’ impressions are follows:
「ブルガリアの犯罪情勢や文化、心理学に至るまで、ブルガリアについて多くを知ることができて、とても興味深い経験となりました。特にワークでは、自分なりに深く考えることができ、重要な視点を得ることができたと思います。シルビア先生がおっしゃっていた「成長したければ、勉強を続けて、頑張り続けなければならない」というお言葉を忘れないで、これからの人生で成長し続けられるよう頑張ります!」(捜査心理学研究室4年)
「ブルガリアでどんなことが起きているのか、普段知ることができないことを知ることができたことは、とても良い経験でした。私はデートDVに興味がありますが、ブルガリアでもデートDVが大きな問題の1つとして挙げられていることを知り、日本だけではなく他の国の現状にもきちんと目を向けて考えてみようと改めて思いました。お忙しい中私たちのために素晴らしい講義を準備してくださり、ありがとうございました。」(捜査心理学研究室3年)
“I was able to think deeply about what is the most important when we work as psychologist, through her work. Prof. Nikolaeva told us that learning is really important through our life, and I want to remember this and keep trying as this word.“
“It was a very fruitful experience to know what I haven’t known about Bulgaria. I’m interested in the psychology behind dating violence, and I decided to look over the world situation related to this.“
<3つの研究室の合同ゼミにおける特別講義後の集合写真>
6月8日(木) ブルガリアにおけるスクールカウンセリングのパラダイムと実践(教育相談)
教員を目指す学生たちが受講する講義において、ブルガリアの学校におけるスクールカウンセリングのパラダイムや主な課題、インクルーシブ教育等について、広く学びました。教員や、学内外の専門家がチームとしてサポートすることの重要性を知り、多くの学生は深く頷いていました。
The final lecture was titled “Educational counseling paradigms and practices in Bulgarian schools”, especially useful for students who want to become teachers. They learned about the problems and prospects of educational counseling and the importance of inclusive education.
学生からの感想は以下の通りです。
「ソフィア大学は教員養成大学として発足されたこともあり、「教育」をとても大切にしていると知りました。講義のなかで、生徒の持つ課題は対人コミュニケーションや学業上の問題等の様々であり、それぞれの課題に応じる必要があると改めて実感しました。将来教員となったら、教員の立場からカウンセラーと連携し、悩みを持つ生徒を助けていきたいと思います。」(人間文化学科3年)
「様々な人種がいて多様性のあるブルガリアにおいて、個人のサポートは経済や健康など統合的にアプローチしなければならないということが印象的でした。日本でも、教師やカウンセラー、保健医等を含め、もっとチームが強くなり子どもに対してより良いサポートを提供できるといいなと思いました。」(心理学科3年)
Students’ impressions are as follows:
“Because Sofia university started as a higher education institution for training schoolteachers, I felt they hold “education” in a really high esteem. I understand students have various problems, and we have to face with each problem respectively. I want to help students when I become a schoolteacher in the future. “
“Bulgaria has ethnic and cultural diversity, and I’m impressed by the fact that they need to have integrated approach from economic problem to health problem. I hope we can build a better inclusive system including teachers, counselors, doctors, and so on, in Japan.”
<学生も手を挙げたり質問したりと、インタラクティブな講義となりました。>
留学生の活躍
滞在を通して、同じくソフィア大学から留学生として本学に来てくれているMihail Ivanov(イバノブ・ミハイル)さんが、大活躍してくれました(これまでのミハイルさんの本学滞在の様子についてはこちらをご参照ください)。
Mihail Ivanov, exchange student from Sofia University, attended as an assistant interpreter on all these special lectures. His assistance helped many attendees understand the lectures on a deeper level.
<堪能な日本語を使って通訳の補助をしてくれたミハイルさん>
懇親会
また、滞在期間中に、大塚学長をはじめとした福山大学の教員とニコラエヴァ教授との懇親会も開催されました。ソフィア大学とのこれまでの交流を振り返りながら、これからの交流について具体案を話し合い、これからも強い協力関係が維持されることを確信し、嬉しく思いました。
学生の留学へのサポートや、研究における協力関係も含め、様々なトピックを語り合えたことは、実に貴重で有意義な時間でした。
During Prof. Nikolaeva’s stay, a reception for her was also held by President Otsuka and other faculty members of Fukuyama University. Looking back on past exchanges with Sofia University, we discussed concrete plans for future exchanges, and I’m glad that we confirm a strong cooperative relationship and it’ll be maintained in the future.
It was indeed a valuable and meaningful time for us to discuss various topics, including support for students studying abroad and cooperation in research.
<大塚学長、平副学長、伊丹副学長、人間文化学部日下部学部長、心理学科山崎学科長、Bisset教授も交えて、福山城をバックに。>
私(大杉)個人としても、ニコラエヴァ教授と過ごした1週間はかけがえのないものとなりました。手巻き寿司パーティーをしたり、家族や生活、文化の話をしたり。国際交流は、改めて素敵だな、良いものだなと、心から思いました。
I also enjoyed the time spent with her, and Prof. Nikolaeva’s visit became a great memory for me. We personally held a small party with hand-rolled sushi, and talked a lot about family, life, culture, and so on.
多くの学生も、大なり小なりそう感じてくれたに違いありません。次はどんな国際交流が生まれるか、今からワクワクします。学生の皆さん、新たな世界の扉を開くチャンスです。いかがですか?
Many students must have felt the same way, to a greater or lesser degree. I am excited to see what kind of international exchanges will be created next. Students, this is your chance to open the door to a new world. Why don’t you try it?
学長から一言:ブルガリアのソフィア大学からおいでなったシルビア・ニコラエヴァ教授と過ごした日々を思い出しています。もうひと月以上が経ったのですね。受入れの窓口になった心理学科ならびに受入れ責任者の大杉准教授にとって、連日の教授への対応はあれこれと気を遣うことばかりだったと思いますが、その分、収穫も多かったのでは。国際交流が益々進展することを願っています。