【生物科学科・海洋生物科学科】生物の本2冊の出版を報告
福山大学生命工学部には生物多様性を学ぶことのできる学科が二つあります。海洋生物科学科と生物科学科です。この度、海洋生物科学科の泉貴人講師と生物科学科のわたくし佐藤淳が生物多様性に関する新しい本を出版しましたので、鈴木理事長と大塚学長に報告しました。生物科学科の佐藤がお伝えします。
なぜテンプライソギンチャクなのか?
著者による本の紹介(泉貴人):
この度の泉の新刊は『なぜテンプライソギンチャクなのか?』(晶文社)でございます!表紙とタイトルからして目を引くこの本は、イソギンチャクの分類学を生業とするこの泉の10年間のイソギンチャク研究、通称“イソギンチャク道”を面白おかしくまとめた、渾身のエッセイとなっております。
“分類学”…最近、この言葉をNHKの連続テレビ小説「らんまん」で聞いたことがある方も多いのでは?実は、それから100年以上たった令和の現代においても、分類学の研究者は健在というわけ。海に潜ってイソギンチャクの分類を研究し、日々新種を見つけ出しているまさに“現代の牧野富太郎”、それがこの泉というわけです!
本書は4章構成で、各章それぞれ学部生・修士課程・博士課程・そしてポスドクおよび現職時代のそれぞれの研究をまとめました。タイトルを飾った「テンプライソギンチャク」、北海道で80年ぶりに発見した「ホソイソギンチャク」、水族館との共同研究で新種になった「チュラウミカワリギンチャク」…我ながら、とんでもないイソギンチャクを次々と発見してきたんだな、と悦に入る、そんなエッセイとなりました。
何より、本書は全編通して、ぶっ飛んだ毒舌とギャグを織り交ぜ、生物学を知らない方でも面白く読めるように工夫してあります。それでいて、教科書として使えるような分類学の知識も盛り込み、誰も知らないようなイソギンチャクの図鑑もあり…と、超・欲張りセット!本書を読むだけで、皆さまは分類学の基礎が身に着くとともに、ディープなイソギンチャクの世界に引きずりこまれること、請け合いであります!特に、「研究業に進もう(研究者になろう)かな…?」と思っている若者や、その親御さんにおススメよ(笑)
本の詳細:
タイトル:なぜテンプライソギンチャクなのか?(晶文社)
著者:泉貴人
ページ数:298ページ
URL:https://www.shobunsha.co.jp/?p=8303
進化生物学
著者による本の紹介(佐藤淳):
生物科学科の佐藤の著書「進化生物学」を紹介します。わたしは本学に着任してから21年強が経ちました。私自身、学生としては3年間しか研究をしていないので、この本に収められた内容は、ほぼすべて福山大学の学生たちと進めてきた研究成果に基づくものになります。海の底に眠る古代河川が大きな影響を与えた瀬戸内海の島々のネズミの進化の話から、DNAに残された痕跡から日本の哺乳類の起源を探る研究、イタチやレッサーパンダの起源に迫る数千万年レベルの遠い昔に起きた進化の話、味を感じるための遺伝子におきた突然変異からアザラシやアシカの進化に新知見をもたらした発見、本学のDNAシークエンサーを使ったテクノロジーの解説、そして、なぜ現代社会で進化生物学を学ばなければならないのかを論じた議論を1冊にまとめました。
研究室配属前の学部生を対象に、できるだけわかりやすく、進化を解説した教科書になります。出版社からは、著者の人となりがわかる本にしてほしいと依頼がありましたので、思うがままに書かせていただきました(↑泉先生には負けますが)。自分の思いを本にするのはなんて素敵なことなのだと、これまでお世話になった皆さんへの感謝の気持ちを感じながら、執筆しました。学生の皆さんだけではなく、ぜひ、一般の皆さんにも読んでいただきたい本です。近日中に、もう少し詳しいブログを公開したいと考えています。皆さん、進化って面白いですよ。そして、生物多様性損失の時代に生きる私たちにとって、学ぶ必要ありです。
本の詳細:
タイトル:進化生物学(東京大学出版会)
著者:佐藤淳
ページ数:176ページ
URL:https://www.utp.or.jp/book/b10084325.html
報告
以上の本の出版について大塚学長と鈴木理事長に報告をしました。いつも応援していただいているので、本の報告ができ良かったです。本学で最先端の生物多様性の教育を受けることができることの証明にもなり、とても誇らしく感じております。本学の生物多様性の教育・研究をさらに発展させたいですね。
そんな生物多様性に興味のある高校生の皆さん、福山大学では7,8,9月とオープンキャンパスがありますので、ぜひお越しいただき、著者と話しましょう。海洋生物科学科では7月20日(土)に、「水族館で生物学」の内容で泉講師が登場します。生物科学科では8月18日(日)に「哺乳類の進化や生態」の内容で、わたくし佐藤が担当します。ぜひお越しください。
学長から一言:本学が誇る気鋭の生物学者二人の手になる単著が、5日差で相次ぎ刊行。書字方向や綴じ方など対照的な編集と装幀ながら、共に目を引く派手目の表紙。単著の上梓に要したであろう厖大な労苦や時間に比べれば、あまりに粗い読み方とは言え、今まで無縁であった知識を山のように得て、満足感一杯で読了しました。進化生物学(ネズミ)と分類学(イソギンチャク)、対象や分野は違えど、対象を縦横無尽に分析する共通性と、良き先達や仲間、分析技術の目覚ましい進歩にも支えられ、自身の研究に持っている矜持がひしひしと伝わってきます。両書とも各著者の研究者としての「来し方」が綴られていますが、これからの「行く末」への期待と関心が否応なく拡がります。