【生物科学科】ニホンザルの研究論文を発表!

生物科学科からニホンザルの研究論文が国際誌に発表されました。DNAの情報を使ってニホンザルの社会構造の一端を明らかにした興味深い研究です。以下は、本年度生物科学科に着任した石塚真太郎講師からの報告です(生物科学科 佐藤)。

 


みなさんこんにちは。今年の4月に生物科学科に着任しました石塚です。野生動物学者である私は、生物科学科の生物多様性コースの教育・研究を充実させるべく、瀬戸内海に浮かぶ香川県小豆島で学生とともに野生のニホンザルの研究を進めています。今回は、今年の9月に出版された最新の研究成果をご紹介いたします。

出版された論文情報は以下の通りです。

Ishizuka et al. (2024) Paternity success for resident and non-resident males and their influences on paternal sibling cohorts in Japanese macaques (Macaca fuscata) on Shodoshima Island. PLOS ONE: https://doi.org/10.1371/journal.pone.0309056.

誰が子供を残しているのか?

ニホンザルは複数のオスとメスで群れを作って暮らします。本種の暮らしには明確な季節性があり、春は出産、秋は交尾の季節です。メスは秋になると一斉に発情し、さまざまなオスと交尾をします。時には群れの外からやってくる他所者オスと駆け落ち、人目ならぬ猿目のつかないところで交尾にいそしみます。このような「乱婚」型の社会では、子供の父親を観察から判別することはほぼ不可能です。そこで犯罪捜査でも用いられるようなDNA分析手法を用い、アカンボウの父親がどのオスであるかを調べました。本研究ではオスを「(群れ内の)優位オス」、「(群れ内の)劣位オス」、「群れ外オス」の3種類に区分し、どんなオスが子を残すことに成功しているか解析しました。

みなさんはどんなオスが子を残していたと思いますか?ニホンザルのような乱婚型の社会では、さまざまなオスが子を残すことが予想されます。今回の研究では34頭の子の父親を特定した結果、予想通り、すべてのカテゴリのオスが子を残していることがわかりました。一方で、興味深いことに、もっとも多くの子を残していたオスは群れ外オスでした。私たちが「ノッペリ」と名付けた群れ外オスは(上の写真)、少なくとも9頭の子を残しており、年によっては全体の半数にも至ることがありました。これまでに群れ外オスが子を残すことは知られていましたが、本研究は、特定の群れ外オスが独占的に多くの子を残すことを初めて示した点で価値があります。

今回の結果は、群れに所属することの意義を考えさせられます。こうしたことを突き詰めていくためには、何年もかけて地道にサルの観察調査を続けることが大切です。現在私は、生物科学科の学生たちとともに小豆島でサルの調査を始めています(上の写真)。毎年の調査が蓄積することで、将来面白いサルの生態が明らかになるでしょう。おサルの調査研究に興味を持った読者の方は、ぜひ福山大学生物科学科に遊びにきてください。

 

学長から一言:生物科学科にこの4月着任の石塚真太郎講師によるサルの生態に関する論文が早くも国際的に評価された嬉しいニュース。一夫一婦制をとり、「不倫」は御法度のわが日本社会と違って、サルの世界は自由気ままなようです。群れ外から闖入者の行動もDNA鑑定によって白日の下。これも種の存続や多くの子孫を残すために必要な摂理なのでしょう。詳細な調査や観察から次々と好論文が生まれるのを期待します。