【心理学科】学部生が中国四国心理学会で研究成果を発表!
研究者の集まる学会は、学部生にとって参加するだけでもなかなかハードルが高いものですが、今年度はなんと6名もの学部生が発表を行いました。その様子について、心理学科の濱本有希助手からの報告をお届けします(投稿は学長室ブログメンバーの大杉です)。
心理学科の濱本です。
11月18日(土)と19日(日)に、中国四国心理学会第49回大会が愛媛大学教育学部で開催されました。この学会は、中国四国地方の心理学の進歩と普及を目的として設立された地域心理学会です。中国四国心理学会は、大学院生だけではなく学部生も研究発表ができます。今年度は心理学科の6名の学部生がポスター発表を行いましたので、本日はその様子をご報告いたします。
石井 荘さん(医療心理学研究室3年・鳥取県立智頭農林高校出身)は、「大学生におけるスピーチ場面の不安に対するPMRの効果」というタイトルで発表しました。石井さんは、スピーチにより高まった不安が漸進的筋弛緩法(Progressive Muscle Relaxation: PMR)を用いることで、軽減するかどうかについて検討しました。スピーチ課題は、参加者の皆さんにもハードルが高く、参加者の募集にとても苦労したそうですが、石井さんの熱意が伝わり、たくさんの人に協力してもらって何とか発表にまとめることができたようです。
<石井さんが発表をする様子>
中山義朗さん(医療心理学研究室3年・並木学院福山高等学校出身)は、「いじめられ経験が精神的健康に与える影響」というタイトルで発表しました。中山さんは、環境の変化のある大学1年生を対象とした調査を行い、高等学校でいじめを受けた経験の有無が抑うつ気分や不安といった大学生の精神的な健康に与える影響について検討しました。その結果、いじめられ経験の有無と大学生のストレスとの関係を明らかにすることができました。今後は、もう少し詳しく、どのような経験がどのようなストレスと関連していくのか深堀していく予定だそうです。
<中山さんが発表をする様子>
久原璃子さん(認知心理学研究室4年・佐賀県立白石高校出身)は、「日本語版Physical Appearance Perfectionism Scaleの作成―妥当性と信頼性の検討―」というタイトルで発表しました。昨年に引き続き、「容姿に対する完全主義」を測定するPAPSという尺度の翻訳、そしてその翻訳した尺度項目の妥当性と信頼性を検討していました。前日までしっかり練習をした成果をばっちり発揮して、とてもスムーズに説明ができており、先生たちに褒められて嬉しそうにしていました。久原さんは、外部の大学院に進学が決まっていて、進学後には自身が作成した尺度を用いてボディイメージの不満足感との関連を明らかにしていくそうです。
<久原さんが発表をする様子>
辻 鼓二郎さん(認知心理学研究室3年・愛媛県立今治南高校出身)は、「職場のパワーハラスメントに対する認識と自己愛の関係」というタイトルで発表しました。辻さんは、自己愛傾向の強い人は、パワハラに対する認識が甘く、パワハラを容認しやすいのではないかと予測し、研究を行っていました。しかし、予想とは異なり、自己愛傾向が高い人はパワハラに対する認識が厳しいという結果が得られたようです。発表では、反対の結果が得られた要因についても議論していました。本番1分前まで緊張しており、会場内を徘徊していたようですが、議論が進むにつれて緊張もほぐれ、とても楽しそうに発表ができていました。
<辻さんが発表をする様子>
桒原 華さん(捜査心理学研究室3年・岡山県立倉敷古城池高校出身)は、「自律系指標を用いた隠匿情報検査における符号化時の覚醒の効果―IAPS画像を用いた検討―」というタイトルで発表しました。桒原さんは、符号化時の覚醒が、自律系指標を用いたポリグラフ検査にどのような影響を及ぼすのかについて検討しました。いずれの群においても盗んだ品物の検出は可能だったことから、犯行時の覚醒がポリグラフ検査の検出においては必須の要因ではないことが明らかになりました。はじめての生理指標の測定で、さらには自律系指標4つ(皮膚電気活動、脈波、呼吸、心拍)の同時測定はとても大変だったと想像しますが、最後までしっかりやり遂げて、素晴らしいです。
<桒原さんが発表をする様子>
中原晴菜さん(2年生・福山暁の星女子高校出身)は、「エピソード的未来思考はポリグラフ検査に影響するか」というタイトルで発表しました。エピソード的未来思考とは、将来起こるかもしれない出来事を鮮明に想像することを指します。エピソード的未来思考を行うと、自分をコントロールする能力が向上することが分かっています。中原さんは、ポリグラフ検査の直前にエピソード的未来思考を行うことで、盗んだ品物に関する記憶の検出が困難になることを明らかにしました。学部2年生から学会発表に挑むと聞き驚きましたが、中原さんは1年生の時から様々な学会に参加し、学会の雰囲気を少しわかっていたこともあり、すっかり落ち着いて説明することができました(実際は、とても緊張していたそうです)。
<中原さんが発表をする様子>
6名とも他大学の教員や大学院生との議論を通じ、たくさんの助言をもらえたそうです。初めての学会発表ということで、皆非常に緊張した表情をしていましたが、何度か説明を繰り返すうちに緊張もほぐれ、とても上手に発表することができました。6名の研究の今後の進展に期待しています!
<発表を終えて笑顔の学生。指導教員と記念撮影です。>
これに続いて、学会で研究発表を行う後輩が増えるといいなと思いました。最後に集合写真を撮影しました。
<集合写真>
今回の学会では、学部生だけでなく、6名の大学院生も発表していました。大学院生の発表タイトルと写真は以下の通りです。
- 永井柚衣さん(臨床心理学研究室M2)「対面とオンラインにおける対人不安についての検討」
- 谷口佳音さん(健康心理学研究室M1)「大学生の時間管理と時間コントロール感,心理的ストレス反応との関連の検討」
- 細谷朱莉さん(捜査心理学研究室M2)「眼球運動と自律神経系指標を用いた隠匿情報検査における刺激の逐次移動提示の効果」
- 岩野麗歌さん(障害心理学研究室M1)「大学生の病気の子どもに対するボランティア参加意欲に関連する要因の検討―病気の知識や経験,病気や病気の子どものイメージ―」
- 吉原可恋さん(障害心理学研究室M2)「幼児版マターナル・アタッチメント(MA)尺度作成と信頼性・妥当性の検討―定型発達児と神経発達症傾向児を持つ母親の比較―」
- 田中咲妃さん(発達心理学研究室M1)「両面価値的性差別主義が男女の食事勘定額に及ぼす影響について」
<大学院生が発表する様子>
学生のうちから学会発表を経験しておくことは、とても大切なことだと思います。今回発表した学生の後に続き、今後も学会で研究発表を行う後輩が増えることを期待しています!
学会前のバタバタが懐かしく思い起こされます。それぞれポスターの作成、印刷や練習、そして発表に至るまで、真剣に取り組んでいる姿がとても印象的でした。6名の学部生や大学院生が協力し合えたこともよかったと思います。
学部生、院生ともに、学会発表の旅費助成制度(福山大学学術研究助成)を活用できたことも大いに助けになりました。今後も多くの学生がよりよい研究活動に邁進できるよう、教員一同で支えていけたらと思います。
学長から一言:学会発表は研究を志す人が自分を鍛えるまたとない機会。中国四国心理学会で実に多くの学部生、院生が発表しましたね。心理学科の勢いを感じます。テーマは実に多彩。いずれも人の心の動きを科学的に解明してみせる貴重な内容。大学として旅費の補助ができたことも良かった。この調子でますます頑張ろう!