【海洋生物科学科】令和5年度日本水産学会中国・四国支部例会を開催しました
大学は教育・研究機関として存在しており、その中には各種学会の運営に関わることも含まれています。生命工学部海洋生物科学は令和4・5年度に日本水産学会中国・四国支部の事務局を担当しています。この度、令和5年度の支部例会(研究発表会&ミニシンポジウム)を企画し、多くの学生たちが発表や運営に関わってくれました。そのレポートが海洋生物科学科の有瀧教授から届きましたので、学長室ブログ委員の阪本がお知らせします。
日本水産学会中国・四国支部例会
昨年は、オンラインで支部の研究発表会並びにシンポジウムを企画しました。また、この夏にはシロギスのお魚教室や、高校生たちの「未来へつなぐSDGsの活動」発表会を開催しました。この度、令和5年度の支部例会(研究発表会&ミニシンポジウム)を企画し、多くの学生たちが発表や運営に関わってくれましたので紹介します。
支部例会は、12月16・17日に福山駅北口にある学校法人福山大学社会連携推進センターで開催しました。16日は口頭発表とポスター発表による研究発表会、17日は「瀬戸内海の “いま” ~里海の藻場と干潟~ 」というタイトルでミニシンポジウムを実施しました。
企画は今夏から着手しましたが、当初よりコロナ禍からの脱却と再スタートを踏まえ、対面で行うことを決めました。昨年の例会(オンライン)は延べで約130名の参加がありました。ただ、通常対面での開催はオンラインより参加者が少なくなるため「まあ、半分くらいの60〜70名を考えとけばいいよね」と話しておりましたが、これが嬉しい誤算となりました。結果的には研究発表会(16日)において12機関96名、ミニシンポジウム(17日)において22機関101名の合計197名にご参加頂く“大盛会”となりました。
海洋生物科学科の学生も研究発表
16日の研究発表会は午後からの開催で、口頭発表が18題、ポスター発表が20題エントリーされました。発表内容は海洋生物の増養殖や生態関係が多いものの、魚病、魚介毒、基礎生産、マイクロプラスチックや味覚評価に関わる研究もあり多岐にわたりました。何よりも嬉しかったのは、口頭発表で3名、ポスター発表で8名もの海洋生物科学科4年生が自分たちの取り組んでいる卒業研究の成果を発表してくれたことです。卒業研究発表会(12月25・26日に実施予定)の追い込みも重なり大変だったでしょうし、生まれて初めての学会発表ですからものすごく緊張したと思います。でも・・・スライドやポスターを前に自分達の研究内容をアピールし、質疑に応答する学生たちはキラキラと輝いて、とても頼もしい印象を受けました。
企画シンポジウム「瀬戸内海の “いま” ~里海の藻場と干潟~ 」
17日のミニシンポジウムは各所から7名の専門家にご参集いただき、近年、著しく変化・変動している瀬戸内海の藻場や干潟について、最新の話題をわかりやすく説明してもらいました。
【講演題目/講演者】
- 沿岸域における干潟・藻場の機能と役割/一見和彦(香川大学)
- 山口県沿岸の藻場の現状と海藻利用/阿部真比古(水産大学校)
- 瀬戸内海中西部におけるガラモ場とその魚類相の現状/冨山 毅(広島大学)
- 気候変動による水温上昇が瀬戸内海の藻場や藻類養殖に与える影響/島袋寛盛(国立研究開発法人水産研究・教育機構)
- 瀬戸内海中央部における海藻相の変化について/山岸幸正(福山大学海洋生物科学科)
- 瀬戸内海の流れ藻に出現する葉上動物群集の特徴/金子健司(福山大学海洋生物科学科)
- 瀬戸内海中央部の魚類相と集団遺伝構造/阪本憲司(福山大学海洋生物科学科)
開催趣旨*******************************
瀬戸内海は大小700を超える島が存在するとともに、7,000 km を超える海岸線を持つことから、多くの藻場や干潟が存在する。これらの豊かな自然環境に人手が加わることで「里海」が形成され、「豊饒の海」とも呼ばれる瀬戸内海の高い生物生産性と生物 多様性が維持されてきた。 しかし、近年、地球温暖化や排水規制などの人為的要因等に よって、瀬戸内海を取り巻く環境は大きく変化している。「豊饒 の海」を未来へ受け継ぐために、我々に課せられたことは何なのか?それを明らかにするためには、過去と未来をつなぐ「いま」 の瀬戸内海の現状を知る必要がある。本シンポジウムでは、過去からの藻場や干潟の変化を把握し、「いま」を理解した上で、未来を見据えた「豊饒の海~瀬戸内海」の持続可能性を考えたい。
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切り口は、物理・化学的な環境の変遷、アサリの激減、磯焼け、藻場に住む魚類の動態、温暖化との関係、流れ藻やそれに随伴する魚介類の生態などなど、多岐に及びました。ただ一つ、その中核にあるのは地道な観察・観測を継続することによるモニタリングの重要性でした。“いま”を評価するためには、過去の状況の把握が欠かせません。「未来に亘ってどのような環境を目指すのか、指標は常に過去からのデータにあるはずだ」・・・これは7名の演者皆さん共通のコンセンサスだと感じました。またこの共通項があるため、今後大学や研究機関が瀬戸内海のネットワークを構築し、より良い「里海」を築き上げていくことができるのではないかという希望も垣間見ることができました。実り多き時間だったと思っています。
参加者のコメント
最後に、支部例会に参加した学生からのコメントを紹介します。
N村:私たちは栽培漁業や養殖などに関連した研究を実施していましたが、他の研究機関の方々は遺伝、環境なども検討されており、この地域でもさまざまな取り組みがなされていると感じました。さらに、発表の場では質問をいただくことで自分の研究を客観的に見ることができたので良い機会になったと感じました。シンポジウムでは、互いに意見交換することで瀬戸内の現状を共有し合えました。
M:今回初めて学会の場で自分の行った実験・観察について説明しました。研究発表会ということもあり、他校や他研究機関の取り組みについて知る機会でもありました。また、他の方の発表用スライドの完成度や質疑での受け答えなどいろいろと自分の至らないところを改めて感じました。全く新しい体験をして、とても良い時間を持てたと感じています。
T飼:水産学会に発表者として参加させていただき、研究室を代表して自分の研究を聞いてもらうことのできる貴重な経験となりました。当日は緊張から思うように言葉が出ない場面もありましたが、ご来場いただいた皆様に誠心誠意お伝え出来たかと思います。また他の参加者の方々の鋭い視点や考えに関心するとともに、勉強になる部分が数多くありました。
W木:学会に参加し、私はポスターセッションで発表を行いました。研究について説明させていただいた際に、目的を理解した上で様々な質問をしてくださり、発表者としても有意義な時間を過ごすことができました。時には鋭い質問もいただきましたので、今後の取りまとめに活かしていきたいと思います。
日本水産学会中国・四国支部例会での研究発表会ならびに企画シンポジウムにご参加下さった皆さまのご協力で、予想を超える大盛会となりました。改めて感謝申し上げます。
学長から一言:海洋生物科学科の積極的な学会活動への貢献、素晴らしい! 日本水産学会中国・四国支部の事務局として日常的に責務を果たすとともに、研究発表会&ミニシンポジウムを企画し運営し、学科所属の学生諸君が果敢に発表したことが何よりも喜ばしい。多くの学びがあったことが、それぞれの感想から窺えます。