【心理学科】今年度の「捜査心理学」の特別講義!
今年度からコース制が始まった福山大学心理学科。司法・犯罪心理学が学べる大学は近年増えてきましたが、教員の実務経験に基づく実践的な「捜査心理学」が学べる大学は多くはありません。そんな「捜査心理学」講義について、心理学科の学長室ブログメンバー兼同科目の授業担当である大杉が、今年度の様子を報告します。
「捜査心理学」は、犯罪捜査に活かされる様々な心理学的手法について正しく理解し、さらにワークで実際に体験することで、それらを深く、じっくり学ぶことができる授業です。仮想事件に対し、犯罪者プロファイリング、ポリグラフ検査(隠匿情報検査)、取調べ等の手法をどのように使っていくかを実践するワークは、「難しいけど楽しい!」と学生から好評です。
今年で4年目となるこの授業では、複数回、現場の第一線で活躍されている現役警察官・警察職員の方々による特別講義があることも大きな魅力の1つです。これまでには、特別講師として地元福山西警察署の当時の刑事課長をお招きしたり、広島県警察本部からプロファイリング担当者をお招きしたりした他、現役警察官・現役科捜研の女として活躍する卒業生や修了生による講義が行われたりしました。
今年度も、2回の特別講義が開催されました。1回目は現役警察官である卒業生3名による特別講義、2回目は福山西警察署の刑事課長による特別講義でした。
1.現役警察官の卒業生による特別講義
今年度は、私(大杉)が本学に着任し捜査心理学研究室(大杉ゼミ)を開設した2019年に1期生として在籍していた斎藤翔太さんを中心に、同じく同級生で犯罪心理学研究室(平ゼミ)に在籍していた増原直枝さんと工藤孝明さんも加わった、現役若手警察官3名による特別講義が実現しました。
岡山県警察で勤める増原直枝さんは、警察官に憧れを持ったきっかけである警察犬の話題や、交番勤務や留置管理勤務等における仕事内容やその思いを、わかりやすく話してくれました。「警察は好かれる仕事ではないかもしれないけど、この仕事だからこそ地域の安全、治安を守れていると思っているから、何も苦ではない。」と笑顔で語る増原さんの様子は、多くの受講生が感銘を受けたようです。
島根県警察で勤める斎藤翔太さんは、警察学校や現場仕事で出会った様々な経験や困難を、ユーモアを交えて伝えてくれました。学生の頃から変わらぬ人柄が存分に伝わるスライドも披露してくれ、「警察官のお堅いイメージが変わった。」という受講生が多かったようです。また、「大学で学んだことも経験したことも、どんなことも無駄にならない。」という力強い言葉は、多くの受講生の胸に響いていました。
山口県警察で勤める工藤孝明さんは、地域部や交通部に関する話題を中心に、警察における様々な部署の仕事について、詳細に説明してくれました。その多岐にわたる仕事内容に、「見えないところで警察が支えてくれているのだと実感した。」という感想がたくさんありました。最初は警察の仕事に興味を持っていなかったが、大学での学びや様々な経験を通じて結果的に警察官となった、という経緯に興味を持つ学生も多数いて、特に進路に悩む学生には為になる話だったようです。
それぞれの講義の後には、対談形式の質疑応答時間を設けました。もともと兵庫県警察にいた私(大杉)の進行のもと、それぞれの体験談をじっくり語ってもらいました。
受講生の中には、将来警察関係の職に就きたいと考えている学生も多くいます。現場の生の声が聴けるとあって、多くの質問がありました。その一つ一つに、時に悩みつつ、時に笑いを交えつつ、真摯に応えてくれた特別講師の皆さんでした。
最後にサプライズで増原さんと工藤さんの指導教員であった平伸二教授が登場し、それぞれの学生時代の秘話(!?)が伝えられて照れる姿もありました。3名とも、在学時代から様々な活動を共にし、私にとっても思い出深い仲間です。
授業後も、警察関係職を目指す後輩のために、多くの時間を割いてくれました。斎藤さん、増原さん、工藤さん、本当にありがとうございました。また、特別講師としての母校訪問を快く承認してくださった各県警の皆さんにも、改めて御礼申し上げます。
2.福山西警察署の刑事課長による特別講義
特別講義第2弾は、ここ福山大学を管内に持つ福山西警察署の森田聖治刑事課長による特別講義でした。「心」をテーマに、刑事課の仕事内容から警察のやりがいまで、受講生に熱く語りかけてくださいました。
厳しいイメージのある刑事課長という立場からは想像できないほど優しく丁寧な語り口調に、多くの受講生が惹き込まれました。日頃は授業で聞くばかりでどこか遠い存在だった捜査や心理学的な捜査手法について、その現場でのリアルをありありとお話ししてくださり、皆食い入るように聴き入っていました。
熱い「刑事魂」も真摯に伝えてくださり、さらに大学生へのメッセージもたくさん用意してくださいました。以下はほんの一部ですが、受講生からは多くの感動の声が上がりました。
- 「警官ではなく、警察官にならなければならない」「刑事の情熱・執念がなくなったら刑事を辞めた方がいい」といった重みのある言葉の数々を、本物の刑事課長の口から聞くことができて、日本の警察は本当にカッコいいなと思いました。
- 警察は最後の砦であるとし、誇りと使命感、責任を強く持って仕事をしているところは憧れです。被害者のため、遺族のためという熱い心を持たれていることがひしひしと伝わり、そんな美しい心を持った方が自分の住んでる地域を守ってくれていることを知って、安心しました。いただいたお言葉の通り、完璧じゃなくても前へ進んでいきます。
- チャレンジすること、あきらめない心を持つこと、というお話を聞いて、今ちょうど就職活動をはじめなければならない時期で怖気づいていた自分の心にとても響く言葉でした。勇気づけていただき、とても感謝しています。
- 「人の心を思いやれる人でないと警察官の仕事は通用しない」という言葉がとても印象に残りました。相手のことを常に考えられる人になりたいと思いました。正義や使命感、そして情熱を持った警察官を目指すことを心に決めました。
- 「今のあなたが残りの人生でいちばん若い」という言葉がとても心に残りました。私はいつも「どうせできないから」と言って挑戦することを諦めてしまいがちでしたが、この言葉を胸に今後はもう少し挑戦してみようかなと思いました。
- 警察官を目指しています。今も警察官になれるか、自分は向いているのか悩むことがありますが、「犯人を絶対に許さない」「犯人を絶対に捕まえる」という刑事の情熱・執念が本当にかっこよくて、自分もこのような強い気持ちを持った警察官になるんだと改めて思いました。
- 私はまだ自分がしたい職業を見つけることが出来ていません。3年の終わりに近づいてもまだ自分の興味のあることを探している段階ですが、講義の中でも焦らなくてよくて、自分の本当にしたいことを見つければいいという言葉が今の自分に1番響きました。「自分は自分、他人は他人、気にしなくていい。」という言葉を思い出して生活していきたいです。様々な観点から追求し諦めない心を育みたいと思います。
多くの学生が、将来について改めて考えるきっかけもくださったように思います。お忙しい中講義に来てくださった森田刑事課長、本当にありがとうございました。私たちの安全安心を支えてくださっている福山西警察署の皆様にも、改めて御礼申し上げます。
捜査心理学研究室では、来年2名の学生が警察官に、そして1名の学生が少年補導職員になる予定です。心理学は、警察官、警察職員の仕事に密接に関連します。今後も、授業やゼミ、ボランティア活動等、様々な経験を通じて、「熱い」人材育成に貢献できればと思います。
学長から一言:心理学科の「司法犯罪コース」は同専門に直結したキャリアの持ち主である専任教師陣に加え、現役警察官として活躍中の学科卒業生や福山西署の刑事課長など外部講師をお招きしての特別講義も実施して、その教育の充実ぶりが際立っています。今回の2回の特別講義は心理学の専門に関連する内容の他、「生き方」についても学ぶところが多かったようです。ご指導くださった講師の皆様に私からも御礼を申し上げます。