【生物科学科(生物工学科から令和6年4月名称変更)】田島・横島でのアカネズミの調査

いったい瀬戸内海の島のネズミはどこからやって来たのだろう?そんな疑問を持ち続けて20年。昨年、ようやく一つのヒントを得ることができました。2万年ほど前、それは最近の氷河期の中で最も寒い時期でした。当時、地球規模で海水面が大きく低下したため、瀬戸内海には海はありませんでした。研究結果によると、その時すでにアカネズミは現在の島に相当する場所におり、その後、古代河川と海面上昇によって、分断・隔離されることで、島に残されたことが示唆されました。島の生き物の進化を学ぶことは島の歴史を探るうえでもとっても有益です。生物工学科 動物学研究室の4年生が、アカネズミの採集を目的に、田島と横島の調査に行きましたので、同学科 佐藤がその調査風景を簡単に紹介したいと思います。

美しい海を見ながら

沖縄県の伊平屋島の風景も素晴らしかったですが、瀬戸内海の景観の美しさも負けてはいません。8月29日~30日に、田島と横島にアカネズミのサンプリングに行きました。福山大学から車で30分ほどの行きやすい場所にあります。良く晴れた日でしたので、とっても気持ちのよいフィールド調査でした。

 

森の中に入り

さて、私たちの調査地は海ではなく森です。8月末なのでとっても暑かったのですが、森の中ではダニなどに噛まれないように、植物でかぶれないように、ケガをしないように長袖長ズボンで作業をします。アカネズミを誘因するオートミール(燕麦)と、生け捕りするための水分となるブドウ一粒をワナの中に入れて、5 m間隔で10個のワナを4列仕掛けました。田島の森に40個、横島の森に40個のワナを仕掛けたことになります。アカネズミは夜行性ですので、翌朝、回収に行きました。さぁアカネズミはいるでしょうか?

ネズミと出会う

80分の1!!!80個仕掛けたワナのうち田島の一つのワナにアカネズミがいました。元気にしており一安心。とっても貴重なサンプルでしたが、この個体のDNAを調べることで、田島とこれまで調べてきた島々との関係性がわかってくると考えています。耳の組織を少しだけもらい、捕獲したアカネズミは森に放しました。元気に森に戻っていきましたよ。現在、4年生が卒業研究で分析を進めています。どんな結果になるでしょう。楽しみです。

生物多様性を学ぶ重要性はますます大きくなっています。しかし、遺伝的な違いが生じる原因、生物種が分化する要因など生物多様性が生じる原因については謎が多いです。島のネズミたちは、島と島との間でどのような遺伝的な違いを生じさせるのかという点で、生物多様性とは何かを理解するのに大きなヒントを与えてくれます。瀬戸内海の島々という地域の特徴を使って、世界があっと驚く研究ができるのではないかと信じて研究を進めています。生物科学科(生物工学科から令和6年4月名称変更)ではこうした生物の進化も学ぶことができます。

 

学長から一言:瀬戸内の島々に生息するアカネズミのDNA分析を通じて、その移動や進化を2万年前まで遡って明らかにする生物科学科の研究は、夢が果てしなく広がります。真夏の暑さも何のその、ダニや虫にかまれないようにしっかりと衣服で身を包んで森の中を駆けずり回る様子が目に浮かびます。研究に取り組んでいる皆さんを夢中にさせる何かがあるのでしょう。