【大学教育センター】第10回教育改革シンポジウム開催!!
近年、高等教育機関で学ぶ障害のある学生の人数は増加の一途にあり、福山大学でも様々な支援体制の整備を進めています。福山大学に在籍する全ての学生にとって、満足度の高いキャンパスライフを提供するためには、障害のある学生に対する理解を深め、彼らの学習/教育環境を整えていくことも必要不可欠です。そこで、9月14日(木)に、福山大学大学会館ホールにて「大学に求められる障害のある学生への支援 ―その組織的対応のあり方―」と題し、今年で10回目を迎える教育改革シンポジウムが開催されました。その様子を、大学教育センターのブログ委員である前田が紹介します。
今から2年前の令和3年6月には「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)の改正法が公布され、障害のある人に対する合理的配慮の提供を義務とする方向が示されました。令和6年4月からはそうした合理的配慮の提供が民間の事業者にとっても義務となります。この改正で、合理的配慮の提供が私立大学においても義務へと変更になります。今回の教育改革シンポジウムはそうした法令上の変更も視野に入れて開催されました。
開会に先立ち大塚豊学長より、この教育改革シンポジウムの歴史とテーマの変遷や、なぜ今「障害のある学生への支援」が求められているのか、また求められる支援をどのような体制・仕組みを以て提供していくのか、全教職員で学び考えることの大切さについて説明がありました。
第一部は、京都大学学生総合支援機構の村田淳准教授による基調講演です。村田准教授は障害学生支援部門(DRC)のチーフコーディネーター、高等教育アクセシビリティプラットフォーム(HEAP)のディレクターも務められています。
ご講演では、「障害」という言葉の定義から始まり、高等教育機関に求められる「合理的配慮」の捉え方や、事前的改善措置としてのユニバーサルデザインの重要性など、大学が本来あるべき姿(全ての学修者に対し、平等な学習機会を提供すること)の実現に向けて理解しておくべき点や、その実現には組織的に対応していく必要のあることを、わかりやすい事例を交えながらお話頂きました。
休憩をはさんで第二部では、本学の障害のある学生対応委員会の鶴田泰人委員長より同委員会の取り組みについての紹介がありました。
直後のパネルディスカッションでは、大学教育センター副センター長の今井航教授を進行役として、皮切りに経済学科の平田宏二教授から、次いで生命栄養科学科の西彰子准教授、海洋生物科学科の北口博隆教授から、そうした学生への各支援の事例が紹介され、それを通じて抱えることにもなった様々な問題点の指摘がありました。
福山大学は創設時からクラス担任制を採用しており、学生が学業や生活上のさまざまな悩みを気軽に相談できる支援体制を整えています。そうした担任制によるきめ細やかな学生支援体制が、障害のある学生に対しても有効に機能していると評価されました。
一方で、学生対応が属人的なものになってしまう、すなわちその教員任せになってしまうというようなリスクや、担任によって学生対応にバラツキが出てくる可能性など今後の本学における組織的対応の構築に向けて留意するべき点を、基調講演を頂いた村田准教授から指摘して頂きました。
今、大学は障害のある学生が増加していくことを想定した対策が求められています。不当な差別がもちろんあってはいけませんし、大学全体として障害のある学生に合理的配慮を提供していくことは、当然に行わなければならないことです。
村田准教授は、大学は本来、教育機関であることを強調されました。大きく捉えて私たちが教育の機会均等を実現し続けていくことの重要性を再認識する時間にもなりました。
このたびのシンポジウムを通じて得た学びを実践し、一人ひとりの個性を尊重した学習環境の提供に努めたいと思いました。
学長から一言:本学の教育改革シンポジウムは今回で導入から10回目の節目でした。その節目の年にふさわしく、今や大学教育が避けて通れない課題である「障害のある学生への対応」ついて真剣に考え議論する好機会になりました。とくに助けを求める意思表示があった場合、過度な負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な合理的配慮を提供するとは如何なる事かについての理解が深まりました。