【海洋生物科学科】福山大学と高校生の「お魚教室」〜「食べて美味しい!知って水産業のサポーターに!!」びんごの高校生集まれ!!身近なSDGsの実践〜
先日、この学長室ブログで “福山大学と高校、相互の交流〜高校生たちの「未来へつなぐSDGsの活動」発表会の開催〜” を紹介しました。今回はその第2弾で、8月の毎土曜日に内海生物資源研究所(因島キャンパス)で4回開催したシロギスがモデルの “食べて美味しい!知って水産業のサポーターに!!」びんごの高校生集まれ!!身近なSDGsの実践〜(長いので「お魚教室」とします)” の様子を海洋生物科学科の有瀧が紹介します。(投稿は海洋生物科学科学長室ブログメンバーの阪本)
水産業に「想いを寄せる」
皆さん、近年日本の水産業は大変な状態にあることは、ご存知のことかと思います。ただ具体的に何がどう大変なのか、しっかり把握されておられる方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。スーパーに行けば、鮮魚コーナーで何不自由なく買い物ができる生活を過ごす中、疲弊している水産業に想いを寄せることは難しいと思われます。実はこの「想いを寄せること」が今の水産業にはとても大事なことだと考えています。まずは、日本の未来を背負って立つ高校生に海や魚介類、水産の現状に関心を持ち、リスクを認識した上で応援し、支えていくサポーターになっていただきたい。そんな思いで今回の企画を立案し、因島キャンパスを舞台として、夏休みの土曜日に合計4回、お魚教室を開催しました。
この舞台の主役は、福山大学で養殖の技術開発と実証化に取り組んでいる「シロギス」です。なお、この催しはシロギス養殖やその商品化で連携いただいている廻鮮寿司しまなみ((株)アペックスインターナショナル)さんとの共催で実施しました。
第1回目(8/5):卵〜ふ化まで シロギスはどうやってシロギスになるのかな?
皆さんご存知のマダイ、ヒラメ、クロマグロなど多くの海産魚類は姿形やサイズは様々ですが、概ね1mm弱の浮く卵をたくさん産み放ちます。シロギスは0.6mmと少し小さいものの、これらの魚と同様に浮上卵を6〜9月の約120日の間ほぼ毎日数万粒を産出します。日没に産み出された卵は概ね翌日の午後には孵化しますが、目は見えず、口も未完成であるため、しばらくはお母さんからもらった「お弁当=卵黄」を元に発育・成長していくことになります。参加者には実際に養殖している水槽から卵を採卵し、顕微鏡で卵の観察してもらいました。初めて見るシロギスの卵の小ささ、でもよく見れば「命の不思議」に満ち満ちた様子にみんな大感激!
第2回目(8/12):仔魚と餌 シロギスは何を食べて大きくなるのだろう?
生まれて初めて餌を食べ始めるころ、シロギスはわずか2mm程度の極小サイズ。こんな小さな仔魚をちゃんと育てるには、ワムシという動物プランクトンの供給が必須です。与えるワムシはもちろん、因島キャンパスで培養しています。今回は現場に出て、ワムシの培養体験。そのあとはワムシという動物を詳細に観察しました。しきりにくるくる回りながら動いています。この動くことが餌としては極めて重要。魚の赤ちゃんは動くものしか食べません。それと、ワムシを食べない魚を人間が育てることはできません。ニホンウナギが飼育できないのは、このワムシを食べないから・・・って知っていました?
第3回目(8/19):仔魚から稚魚へ(変態について) シロギスの身体はどのように変わっていくのだろう?
オタマジャクシがカエルに、芋虫が蝶々に姿を変えることを「変態」と言います。彼らは変態によって生活圏を変化させます。魚も仔魚が発育・成長することにより稚魚へと変態し、住処や生活を大きく変化させます。左右が非対称に変化するカレイやヒラメの仲間や、柳の葉っぱのような特殊な外形から細長く、透明なシラスになっていくニホンウナギが有名ですが、シロギスの姿形も1、2週目の弱々しい仔魚から3週目には親と同じように整い始め、稚魚へと変態していきます。シロギスがシロギスになっていく過程を確認しました。
第4回目(8/26):いつまでもお魚が食べられるようにするには? なぜ放流をするのですか?
皆さん、日本の漁獲量がピーク時の40%にまで落ち込んでいるのをご存知ですか? 漁業者の約半分が60歳以上になっていることや、水産物の摂取量が60%まで落ち込んでいることはどうですか? 水産業は「獲れない、獲りにいけない、獲っても食べてもらえない」の三重苦に苦しんでいます。お魚教室の最終回は、参加者が採卵し、育ててきたシロギスの稚魚を放流し、養殖されたシロギスを食べてみることで、日本の水産業を今後どう支えていくべきなのか、できることは何か、少し考える時間を持ってもらうことにしました。大きく、生活を変える必要はないはずです。ちょっとだけでいいです、水産業の現状を認知し、想いを寄せていただけると嬉しいです。
このように僅か4回のお魚教室でしたが、述べ39名の方々に参加していただきました。生徒の皆さんからは「今まで知らなかった水産の現状を知ることができました。自分たちの未来を考え、できることをやっていこうと思います」、「シロギスの一生の一端を知ることができ、それらが目の前の海でずっと繰り返され、私たちの元に食品として届いていることを実感できました」、「美味しい魚をずっと食べ続けていくこと、またそれを自分だけでなく、その先に繋げるにはどうすればいいのか、考えさせられました」など、素晴らしいコメントが届きました。「やってよかった!」今しみじみとこの想いを噛み締めています。次年度以降も継続できたらいいなぁ、と強く思っています。皆さんまたね!!
*第4回の様子をTSS(テレビ新広島)さんに取材・放送してもらいました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/19366f11b8219052df57f2bd7310697ab4fbbac0
学長から一言:本学の内海生物資源研究所が企画・運営した高校生対象の「お魚教室」は大成功! わが国の水産業が直面する難題を解決するには、まず若者にしっかりとした意識を持ってもらうことが大切というのが発想の原点。本学の大切な研究成果であるシロギス「びんごの姫」も大活躍だったようです。地道な努力で、水産業の明るい未来を切り拓いて下さい。期待しています!