【海洋生物科学科】福山大学と高校、相互の交流〜高校生たちの「未来へつなぐSDGsの活動」発表会の開催〜
福山大学では研究活動の一環として各種学会運営に協力しています。学会の活動の中には高校生への啓蒙活動を採り入れる場合があります。今回は、本学の海洋生物科学科が日本水産学会中国・四国支部に協力し、高校生の環境意識を高め、いわゆるSDGsへの理解を深める活動を実施しました。その様子について、有瀧教授から報告が届きましたので、学科の学長室ブログメンバーの阪本が投稿します。
海洋生物科学科は2022、2023年度に日本水産学会中国・四国支部の事務局を担当しています。昨年11月に、支部の研究発表会を開催した際、複数の高校から「夏休みであればもっと参加しやすい」、「大学の施設でやっていただけると生徒にとっていい体験になる」とのご意見をいただきました。日本水産学会中国・四国支部とも協議した結果、2023年度は試行的に高校生の成果発表会を切り離し、8月21日に本学の未来創造館で、22日には因島キャンパスで模擬講義及び施設見学を開催しました。
高校生たちのSDGs活動
近年における、全世界規模の気候変動や社会・経済的な諸問題に対処するため、2030年までのSustainable Development Goals:SDGsが国連総会で採択されたのは2015年のことでした。SDGsは17のゴールと169のターゲットで構成されていますが、高校でもSDGsの担い手を育成するべく、持続可能な開発のための教育 Education for Sustainable Development: ESDの実践・普及を促進するとともに、さまざまな機会を作ってESDの深化を図っておられます。今回、我々は高校生の成果発表会を開催するにあたってこのESD活動に関連させ、SDGsの17のゴールのうち14「海の豊かさを守ろう」と15「陸の豊かさを守ろう」を中心に 、“高校生たちの「未来へつなぐSDGsの活動」発表会”を企画し参加者を募集しました。
その結果、広島県のみならず兵庫県、徳島県、京都府の7つの高校から口頭発表4題、ポスター発表5題、合計9題の申し込みがありました。
内容は昆虫や魚類などをターゲットにした生物多様性の保護・保全や、アサリ、イカ、ナマズを対象とした水産有用生物の増殖並びに関連する新規技術の開発、海洋ゴミの問題から養蜂までと多岐にわたり、興味深いものばかりでした。発表会は8月21日、会場は福山大学の新たなシンボルともなっている未来創造館の2F大講義室で、午前中に口頭発表、午後にコミュニケーションホワイエでポスター発表を実施しました。参加者は発表する生徒さんと引率の先生方に加え、聴衆として福山大学の教職員、学生合わせ60名を超える盛会となりました。午前、午後ともに発表者間はもちろん、聴衆を交えた質疑応答が活発に行われ、発表者の生徒さんたちも緊張しながらもしっかり受け答えされておられました。
さて、今回の全発表の中から、海洋生物科学科の水産学会会員が選考員となり、口頭発表とポスター発表からそれぞれ1題ずつ最優秀発表を選び、前者には福山大学から学長賞を、後者には水産学会から中国・四国支部長賞を授与することになっておりました。ただ、選考過程で各発表の評価が拮抗しており、この2題だけでは勿体無いという意見が出たため、急遽、福山大学から奨励賞を追加することになりました。最終的に学長賞には尾道高等学校の「広島県尾道市向島沿岸部におけるアサリの母貝場形成に向けた調査研究」が、中国・四国支部長賞には京都府立海洋高等学校の「小さな敵を探せ!」が選出され、そのほかの7題には奨励賞が授与されました。
大学と高校との交流
未来創造館での成果発表会の終了後は、舞台を因島キャンパスに移して第2ラウンドの始まりです。まず、その夜は5校の参加者36名が集い、BBQの宴で交流を深めました。
因島キャンパスで模擬講義と施設見学
翌日は、因島キャンパスが誇る3つのフィールド【海産魚類の飼育施設・瀬戸内海・マリンバイオセンター水族館】を理解していただくため、午前中は養殖技術開発を実施しているシロギスが産んだ卵の観察とキャンパス前に広がる瀬戸内海に生息する水産生物の生態、水族館の展示・教育に関わる模擬講義をそれぞれの分野の担当教員が対応しました。午後は午前中の座学の内容を実際に体験していただくべく、シロギスやオニオコゼ、キジハタの仔稚魚飼育を行っている施設、因島大橋を望むキャンパスの前の浜、マイリンバイオセンター水族館を学生たちが中心となって案内しました。
こうして2日間にわたる福山大学と高校との相互の交流、成果発表会と因島キャンパスの体験ツアーは大きなトラブルもなく、無事終了しました。参加された高校生や引率の教員の方々からは、「発表会は緊張しましたが、大変良い経験になりました」とか、「福山大学がどんなところで、どのような研究・教育を実施されているのがよくわかりました」とか、「他校の生徒、教員が交流できる機会は少ないので大変よかったです」という意見と感想をいただきました。一方、受け入れた我々も高校生たちの活動のレベルの高さ、解析結果の新規性など、目を見張るような成果ばかりで、大いに刺激を受けた時間でした。
手前味噌かもしれませんが、福山大学の施設、教育・研究活動の魅力は社会へまだ十分に伝わっていないような気がします。継続的にこのような企画を実施し、我々が持っている特徴を広く地域や関係機関に知っていただきたいと考えております。
学長から一言:海洋生物科学科が日本水産学会中国・四国支部とのコラボで実施し、近隣の高校のみならず、遠く兵庫県、徳島県、京都府からの参加も含めて7つの高校の生徒さん達による研究発表会と本学の因島キャンパスを舞台に繰り広げられた各種の体験を伴う合宿式のツアーが成功裏に終わったようです。研究発表会の表彰式で出会った高校生の皆さんの真剣さが印象的でした。