【薬学部】基礎実習プログラム☆科学的思考力と実践力を養う

福山大学薬学部では、薬剤師に求められる科学的な思考力を養うため、さらに薬学部の幅広い知識と技能を修得するために、1年後期から4年前期に「基礎実習」を行います。その後、4年後期の「事前学習」で多様な薬剤師業務を学修し、5年次には医療現場で5ヶ月間の「病院・薬局実務実習」を行います。

■ 1年後期:実習Ⅰ(実験の基本的手技と容量分析)
■ 2年前期:実習Ⅱ(化学物質の合成・構造解析・定量/反応速度の解析/天然生物活性物質)
■ 2年後期:実習Ⅲ(生体成分および細菌の検出法/生薬・漢方製剤)
■ 3年前期:実習Ⅳ(薬物作用の解析/放射線同位元素の取り扱い/健康と環境関連指標の測定)
■ 4年前期:実習Ⅴ(製剤の調整/投与計画/医薬品情報の検索)
■ 4年後期:事前学習(計数・計量調剤/無菌製剤の調製/薬物治療モニタリング/医療コミュニケーション/フィジカルアセスメント)
■ 5年:病院・薬局実務実習

これらの実習のうち、2年後期に開講されている「実習Ⅲ」について、その様子を松岡浩史准教授が紹介します(五郎丸が投稿します)。

 


実習Ⅲは、以下のとおり、生化学微生物学遺伝子工学漢方生薬 の4つの分野から構成されており、1~2年次の講義により学修してきた知識について、それらの統合的な理解と定着を促すために行われています。

 

① 生化学分野の実習 では、主に、生化学研究室 の教員と先輩学生たちが担当しています。
生体のタンパク質や酵素の分類、構造、性質に関する基本的知識を修得し、タンパク質や酵素を取り扱うための基本的技能を身につけることを、目的としています。

酵素の性質について理解を深めるために、アルカリホスファターゼの活性測定を行っています。試薬を正確に計量することに加えて、反応時間を秒単位で正確に管理する必要があるため、学生はペアになったメンバーと協力しあって実験する必要があります。

酵素反応が起こると生成物(p-ニトロフェノール)によって反応溶液が黄色く着色します。どれくらい生成物ができたのかを調べるために、吸光度計を使って測定しているところです。測定した後は、酵素活性を求めるためにたくさんの計算をして、反応速度と基質濃度の関係を視覚化できるラインウィーバー ⁼ バークプロットを作成します。

 


② 微生物学分野の実習 では、主に、分子免疫生物学研究室 の教員と先輩学生たちが担当しています。微生物の分類、構造、生活史に関する基本的知識を修得し、微生物を取り扱うための基本的技能を身につけることを、目的としています。

微生物の取り扱いに必要な滅菌や培養などの基本的な手技を学んでいます。代表的な細菌の分離培養や皮膚常在菌の培養を行い、グラム染色法などでの染色性の差異や形の特徴を観察しています。それにより、何の細菌なのかの同定を試みます。

各種の細菌を用いて染色性の違いや形態を顕微鏡で観察し、模写します。紫色や赤色に染まる細菌、球状や棒状の細菌など、普段の生活では見ることのできないミクロな世界に、学生さん達が興奮する場面です。

 


③ 遺伝子工学分野の実習 では、主に、病態生理・ゲノム機能学研究室 の教員と先輩学生たちが担当しています。遺伝子組換え技術やその倫理・安全性に関する基本的知識を修得し、遺伝子工学実験のための基本的技能を身につけることを、目的としています。

大腸菌の形質転換体を用いて遺伝子組換えの有無を確認するために、特定の遺伝子領域DNAを増幅するPCR法を行っています。これには、1mLの1000分の1スケールである1μL(マイクロリットル)という、とても微量な計量が求められます。

PCR法で増幅されたDNAをアガロースゲル電気泳動法により確認しています。その電気泳動の結果は、様々な研究機器が完備されている 未来創造館(薬学研究棟) で撮影します。

PCR法で増幅したDNAについて、その塩基配列の類似性を調べるホモロジー検索によって、この実習で用いた組換え遺伝子が促進型緑色蛍光タンパク質(Enhanced Green Fluorescent Protein)をコードしていることを特定します。そして、その組換え遺伝子を大腸菌内で発現誘導させています。この遺伝子組換え技術の応用により、1980年代に世界初の遺伝子組換え医薬品として、糖尿病の血糖コントロールに用いられるヒトインスリン製剤が登場しました。

 


④ 漢方生薬分野の実習 では、主に、漢方薬物解析学研究室 の教員と先輩学生たちが担当しています。現代医療で使用される生薬・漢方薬について理解するために、代表的な生薬の基原、性状、含有成分、品質評価、臨床応用及び漢方医学の考え方、代表的な漢方処方の適用についての基本的知識と技能を修得することを、目的としています。

漢方薬を構成する生薬1つひとつの味やにおいを確認しながら、漢方薬の煎じ薬を調製しています。できあがった煎じ薬を実際に試飲することで漢方薬の味を体感し、将来の服薬指導に活かします。

がん化学療法を実施中の患者さんや小児の患者さんは、漢方薬の剤形や特徴的な味やにおいにより服用が困難な場合があります。それらを改善できる調剤的工夫を学んでいます。

漢方薬は内服するものが多いですが、軟膏剤も存在しています。この実習では、火傷などに有効である紫雲膏(しうんこう)を調製しています。

 


このような「基礎実習」を経て、科学的な思考力や総合的な知識を修得し、4年後期の「事前学習」や5年次の「病院・薬局実務実習」につなげ、薬のスペシャリストである薬剤師を目指します。

さらに、薬学部卒業後の進学先には 大学院薬学研究科 博士課程 があります。ここでは、医療に貢献できる高度な知識と技能、および高い研究能力を有する臨床薬剤師・研究者の養成を目指しています。

 

また、社会とつながる、キャンパスを飛び出す学びも活発に行われています(共同研究活動)。福山大学の研究力について、社会連携センターのホームページをご覧ください。 福山大学 | 社会連携センター 

 

受験生へ向けた『薬学部教員からのメッセージ!』を公開しています。

 

学長から一言:薬学部の各学年で開講される実習系の授業のうち、2年後期に開講されている「実習Ⅲ」の内容は、生化学、微生物学、遺伝子工学、漢方生薬の4つの分野から構成されるのですね。実際の授業の様子を写した写真からは、将来の薬剤師を目指して、みんな一生懸命に取り組んでいる様子が伝わってきます。