【税務会計学科】進化しつづける地元企業との連携授業「地域調査」
地元企業とのコラボ連携授業である税務会計学科の「地域調査」の実施状況について、同授業を担当する張楓教授から報告が届きましたので、学科のブログ委員の関下が投稿します。
「地域調査」は、備後地域の経済・社会の過去・現在・未来に関する課題や疑問点を、学生自身による学外での訪問調査により解決することを目的とするアクティブ・ラーニングです。学生を主体とする演習形式のなかで、事前学習や訪問調査、発表、討論を実施することにより、地域への関心を高めるとともに、専門科目への橋渡し科目としても期待されています。
この授業の実施に関しては、(株)ププレひまわりと(株)エブリイホーミイホールディングスという地元小売企業の2社が、相互協力による地域課題解決を目的として福山大学との間で締結した「協働事業協定」に基づき、地域調査を踏まえた本連携授業に参画しています。本連携授業の狙いは、受講生が講義を通じて地域経済を支える地元企業に対する理解をより深め、高付加価値商品・サービスの提案力を身に付けるとともに、能動的学習能力の向上を図ることにあります。
エブリイ社内報
連携授業「地域調査」が2017年度からスタートしたことをふまえると、2023年度は「模索期」(2017~19年度)、「受難期」(2020~22年度)を経て、「飛躍期」に差し掛かっているのではないかと授業の担当者として強く感じています。「模索期」には、連携企業側、つまり(株)ププレひまわり及び(株)エブリイホーミイホールディングスと福山大学側が新しい取り組みを始めるに当たり、さまざまな不安や迷いを抱えながら、学生の問題関心などを的確かつ迅速にとらえ、連携企画を改善していく時期でした。「受難期」は2020年から始まる新型コロナウイルス感染症の拡大のために、上記の「模索期」に構築してきた連携方法の根本的な転換を余儀なくされる時期でした。これまで学長室ブログでも報告しているように、新型コロナウイルス感染症の被害が危惧される中でも、一回も連携授業を止めることなく、学生の意欲的な学び及びスムーズなグループワーキングを確保することを目指して、ププレひまわり社とエブリイ社の協力を得て感染拡大を防止しながら、オンライン形式でも大いに学べる企画や内容を練り上げ、その実施に際して若干戸惑う学生への指導体制も工夫してきました。ポストコロナの2023年度は、以下の活動にみられるように、まさに連携授業の第三段階にあたる「飛躍期」の始まりの年であるともいえるでしょう。
まず、エブリイ社との前期連携授業では、「①業務商品について、②PB商品について、③地域とスポーツの取組、④地元の飲食店さんとの取組、という4つのグループに分かれて、エブリイ社の各種の取組を調べ、学生の皆さんが同社の担当者だったら今後どのように発展させたらよいか、アイディア(イベント企画など)を考えてください!」という具体的課題が学生(31名)に与えられていました。学生は6つのグループに分かれて、具体的な提案に向けてグループワーキングを行いました。グループワーキングでは、エブリイ社の新入社員3名(1名は経済学部税務会計学科卒業生)によるサポートのもとで進められ、最終プレゼンは、エブリイ本社で行われました。
大学でのグループワーキングや見学の様子
2023年7月にエブリイ本社でのプレゼント
学生のプレゼンの様子はエブリイ社の社内報でも報道
受講生から充実した学びを得た声が届いていますので、いくつか、ご紹介します。
・「この講義を通して、ひとつのことに対してみんなで協力することの大切さを学ぶことができた。個人個人でやると自分の意見には限界があるため、偏りがちになってしまうが、みんなで意見を共有することによって新しい発見や学びとなるため、そのように感じた。またグループで意見共有をした際、学年の壁を感じないで、思ったことを相手に伝えることができたため、そこが印象に残った。」
・「グループで作り上げていく必要がある授業ではあるが、グループのみんなと一緒に協力していくことも大事だけど、自分1人でアイデアを考えたり、仕事を分担して自分の仕事を自分でやり切っていくことも大事だと学びました。」
・「私は講義の中で、プレゼンの際にどのようにすれば、相手に伝えたいことを伝えられるのかについて考えていました。プレゼン当日まで頑張ってベストを尽くし、満足のいくものができたのですが、他のグループの発表を見て、もっと改善することができると感じたことが印象に残りました。」
・「講義を通して大切だと思ったことは、主体的に考えるということです。それは、話し合いの場面で感じました。グループワークでは、人任せにするのではなく、自分の意見や考えを持って発言することが重要であると感じました。」
つぎに、後期におけるププレひまわり社との連携授業では、これまでと打って変わって斬新な課題「ベンチャーチャレンジプログラム」に対して学生に挑んでもらいました。具体的には、「事業の成り立ち(マーケティングや経営戦略、顧客の消費(購買行動)など)を自分が考案したビジネスモデルを提案しなさい」というものでした。
提案にあたって、具体的に「何を―事業内容(需要の検討)」、「誰に―ターゲット・対象者(顧客の課題解決)」、「いつ―営業時間」、「誰が―運営者(営業者)」、「どこで―展開エリア・場所」、「どうやって―販促・告知方法」など問題点を提案に組み込みながら、最終的に「どの位の売上を見込むか」また「利益はどうやってどの位だせそうか?」を打ち出すことは会社から具体的に求められています。かなり本気のビジネス提案となっています。実際、最優秀提案はププレひまわり社の2024年度新ビジネスコンテストにかけられることとなります。
提案にあたって、37名の受講生は8グループに分かれて活発なグループワーキングを行った結果、次の9つのビジネス企画が提案されるに至りました。①「バスお迎えサービス」、②「マッサージと整体」、③「健康を意識したドリンク販売」、④「ペットのトリミング」、⑤「洋服の販売」、⑥「スチームサウナ」、⑦「障碍者や高齢者への運動施設」、⑧「健康居酒屋の運営」、⑨「企業主導型保育園事業」。
ププレひまわり社との連携授業の様子
大学での最終プレゼンの様子
9つのグループによる提案のうち、最優秀賞のビジネス提案は「企業主導型保育園事業」でした。「提案内容」(お客様からニーズがある提案になっているか)をはじめ、「計画」(実現可能な事業計画になっているか)、「資料」(プレゼン資料はわかりやすく理解しやすいか)、「伝達力」(声の大きさ、話し方、スピードなどが適切であるか)に関して、いずれも高く評価されたためでした。
受賞式の様子(右側はププレひまわり社担当者の田頭佳代様)
ププレひまわり社の担当者田頭様から感謝のメッセージが届きました。
福山大学経済学部様との地域調査授業を開始し、7年目となりました。今年は、社内の「ベンチャーチャレンジプログラム」に沿って、「新しい事業」を考えてもらうという初の内容で、学生さんにとっては難しかったのだと思います。「事業」というのがピンと来なかったのか、テーマ作りで難航しました。市場のニーズを考えて新しい事業と、それを軌道に乗せる計画を立ててもらいました。
10月末にテーマと50%は完成している予定でしたが、結果、テーマさえも決まらないまま11月を迎える状況になり、暗雲が立ち込めましたが、終わりが近づくにつれ、9グループそれぞれの一体感が増し、ゴールに近づいていったような感覚がありました。途中で何度か厳しい言葉をかけながら、励ましていったことで気持ちが高くなっていったのだと思います。
短い期間での難しいテーマに対し、学生の皆様は本当によく頑張ってくれました。私たちも新しい発見があり、実りある活動だと感じていますので、是非また機会をいただけますと嬉しく思います。引き続き、宜しくお願い致します。
学長から一言:経済学部税務会計学科が地元の小売企業2社と連携協定を締結して本格的に展開してきた「地域調査」と題する演習もすでに7年目を迎えています。開始直後の試行錯誤をくぐり抜け、予想外のコロナ禍による大打撃も跳ね返して、着実に成果が上がってきていることが分かります。このような地域経済の実際と結びついた教育実践を支えて頂く(株)ププレひまわり及び(株)エブリイホーミイホールディングスの関係者の皆様に、私からも御礼を申し上げます。