【海洋生物科学科】マリンバイオセンター水族館の干支展示~研究所生まれのクロウミウマ~
因島キャンパスにあるマリンバイオセンター水族館は、現在大水槽の改修工事が進められていますが、恒例の干支展示を行いました。今年は十二支の中でも唯一架空の生き物とされる「辰」にちなんで、「竜の落とし子(タツノオトシゴ)」の仲間のクロウミウマを紹介しました。海洋生物科学科アクアリウム科学研究室の水上講師からレポートが届きましたので、同学科学長室ブログ委員の阪本がお知らせします。
タツノオトシゴの仲間~クロウミウマ~
クロウミウマはインド洋や太平洋に生息し、国内では伊豆諸島以西の太平洋沿岸から沖縄県にかけて分布しており、温暖で穏やか海域を好みます。「意外!!」との声を多く聞きますが、鰓呼吸をしながら鰭を使って泳ぎ回るれっきとした魚類で、成長すると17㎝ほどになります。冬場の水温が低下する瀬戸内海には生息しません。
タツノオトシゴの仲間は、その特徴的な体形やゆったりと泳ぐ愛らしい姿が観賞用として人気があり、水族館でもよく展示されています。また、漢方薬の原材料として多く商取引されており、自然界での資源量が減少しています。このことから、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約(CITES)により国際的な商取引にも規制がかけられている種類です。そのため、因島キャンパスでは研究用水槽を設置して、卒業研究の一環で4年生の学生と共に本種の繁殖研究に取り組んでいます。
今回展示したのは、約1年前に研究所内で産まれ、学生たちが大切に育ててきた体長約8㎝のオス5個体とメス2個体の計7個体です。すでに成熟しているので赤ちゃんを産む能力は備わっていますが、まだまだ育ち盛りの若魚です。
オスが出産する魚
「赤ちゃんを産む」と書きましたが、タツノオトシゴの仲間は卵ではなく、親の体の中で親と同じ形になるまで育った「稚魚」として海中に産み出されます。しかも、出産するのはオスの役割です。不思議に思われる方も多いと思いますので話を整理すると、卵を産むのはメスですが、オスのお腹には育児嚢(いくじのう)とよばれる特殊な袋があります。メスはオスと向かい合って、直接この袋の中に卵を産み付けるのです。オスの育児嚢の中で、卵はオスの体からも栄養分を受け取りながら徐々に魚の形へと発生を続けます。クロウミウマでは約2週間の妊娠期間を経て、多い時には500を超える兄弟姉妹たちが一斉に海中へと産み出されます。その光景はまさに神秘的です!
兄弟姉妹たちが出張展示に
2024年1月1日(月)~1月29日(月)の間、島根県出雲市にある「島根県立宍道湖自然館ゴビウス」では、マリンバイオセンター水族館で展示されているクロウミウマの兄弟姉妹たちが、「ゴビウス干支水族館2024~辰~」と題したお正月展示の場でデビューを果たしました。
卒業生が活躍中!!
島根県立宍道湖自然館ゴビウスには、令和3年3月に海洋生物科学科アクアリウム科学研究室を卒業した「原いつき」さんが勤務しており、「在学中に自身も研究に関わったクロウミウマをゴビウス干支水族館でぜひ展示したい」との相談があり、学内でも協議の上で実現に至りました。期間中は同じヨウジウオ科で紅白の横じま模様がおめでたい「オイランヨウジ」と同居していたようです。約1か月間、原さんの愛情を受けながら出張展示されていたクロウミウマたちは、無事にお勤めを終えて因島にもうすぐ帰ってくる予定です。
マリンバイオセンター水族館は、大水槽の改修工事のため2024年1月27日(土)から2月12日(月)の間は完全閉館していますが、2月13日からは大水槽を除く他の水槽の一般公開を再開します。クロウミウマたちは、企画展示のお勤めを終えて一旦バックヤードの研究用水槽に戻されますが、学生スタッフ一同、みなさまにお会いするのを楽しみにしていますので、マリンバイオセンター水族館へぜひお越しください!!
学長から一言:今年の干支の辰にちなみ、姿が竜を想像させる「タツノオトシゴ」。因島キャンパスの大水槽が改修工事中の附属水族館での展示に先立ち、海洋生物科学科卒業生の勤務先という御縁で出雲市の宍道湖自然館ゴビウスで一般公開。因島でのお目見えが楽しみです。