【グリーンサイエンス研究センター】なぜアサリは減ったのか?

アサリはなぜ減ったのでしょうか? アサリを再び干潟へよびもどすためには、何が必要なのでしょうか? 今回、第51回グリーンサイエンスセミナー(1/22)に広島大学の冨山毅教授を講師としてお招きし、冨山教授の“これまで”の調査・研究の成果と、“いま”と“これから”の対策についてお話しいただきました。タイトルは「アサリを通して干潟生態系を考える」です。海洋生物科学科阪本が報告します。

 

アサリの現状とこれから

アサリは干潟に生息し、潮干狩りなどを通じてとてもなじみ深い二枚貝です。しかし、現在は国内の漁獲量が極めて少なくなり、海外からの輸入への依存も高まっています。その一方で、活きたまま輸入し、干潟へ放流することで、意図せずに外来生物を干潟へ放していることも問題となっています。

冨山教授の研究室では、アサリやその捕食者などについて研究を行っておられます。今回のセミナーでは、アサリとともに国内に持ち込まれた「干潟のブラックバス」ともよばれるサキグロタマツメタという巻貝について焦点が当てられました。この巻貝の侵入は、アサリが減少している要因の一つと考えられています。

アサリの生産地では、地元漁師さんたちの協力で、この巻貝の駆除を行っておられます。しかし、思うような成果に至っていません。この巻貝の生態や、アサリを取り巻く環境を理解することの重要性が示されました。

活発な質問と丁寧な回答

今回のセミナーには41名が参加し、本学学生(全学部)と教員、一般の方、新聞社が聴講しました。およそ70分間の講演のあと、50分間にわたり活発な議論が展開されました。とくに目立ったのは、学生たちの質問でした。日頃の授業等で学んでいることから発した質問、地域の方々と取り組んでいる里海再生プロジェクトでの経験を踏まえた“生きた”問い、出身地の海と瀬戸内海との比較に沿った素朴な疑問、などなど。次々と飛び出す学生たちからの質問に、冨山教授も大変よろこんで居られました。また、学生たちの真剣なまなざしに、私も心を打たれました。

瀬戸内海のアサリ

瀬戸内海の里海には、海の恵みといえる「幸」が幾つもあります。アサリもそのひとつです。かつて瀬戸内海の干潟では、潮干狩りの季節になると老若男女が所狭しと砂泥を掘り、皆が挙ってこの「海の幸」を探したものです。しかし、近年はその光景が“懐かしい”と思える状況になっています。

瀬戸内海の干潟でアサリを増やす取り組みなど、本種を取り巻く現状と課題が、冨山教授の講演で理解できました。アサリを増やすためにはどうずればよいのか、干潟生態系とアサリをどのようにして守っていくべきなのか、今回の講演で改めて考える機会を得ることができました。冨山教授の素晴らしい講演と適切な質問へのご回答に感謝申し上げます。ありがとうございました。

センター長(佐藤)から一言:これで本年度のグリーンサイエンストークとセミナーは終了になります(トーク①自著本の紹介②ワンヘルス③サルの生態、セミナー①クマの出没、②本ブログ)。また、来年度、第一線で活躍する研究者と議論を重ねて、福山大学の学生たちと一緒に研究を盛り上げていきたいと思います。来月には、令和6年度グリーンサイエンス研究センター成果報告会を企画しております。皆様ふるってご参加ください。

 

学長から一言:今年度、プレゼンスが急速に高まっているグリーンサイエンス研究センターが企画運営する各種講演や研究成果の報告は魅力に溢れています。それぞれのテーマに関心のある学生諸君や教職員の皆さんに知的刺激を大いに与えているようです。引き続き、ますます面白い企画を期待したいものです。