【生物科学科】野生のいきものを学ぶ実習(生物多様性実習)前半

福山大学キャンパス内外は豊かな自然であふれています。現在は「ネイチャーポジティブ」という言葉が世界のキーワードになっており、生物多様性とその保全に関する知識と技術を修得することが必須の時代がやってきました。生物科学科では、この豊かな自然を利用して、身の回りの生物の存在と、遺伝子レベルでの生物多様性を学ぶ実習を行っています。今年度からは新任の石塚講師も加わり、実習内容の幅が広がりました。生物多様性実習(3年次対象)の前半が終わりましたので、担当の佐藤が報告します。

 

まずは歩いていろんな生き物と出会おう

最初の週は昆虫を中心とした動物と植物探しから始まりました。大学生にもなって虫取り?と思われるかもしれませんが、こちらはいたってまじめです。この実習では、身の回りの生物を知ること、そしてその遺伝子の分析手法を身につけることを目標としています。最初の2週間で、大学の外の田んぼや畑の周辺から歩き始め、竹林、池の周辺と歩き、昆虫や植物、カエルやヘビなどの脊椎動物、イノシシの痕跡などをみつけることができました。実習日は毎日5000歩程度は歩いたでしょう。

アプリを使って生物種を同定

採取した昆虫と植物は、アプリBiomeを使って種を同定しました。このアプリでは、AIの機能を使って、写真から生物種の同定をすることができます。身の回りにいる生物を知ることは大変重要なことです。スマホを見ながら写真からすぐに種同定できるなんて、すごいですよね。ちなみに、アプリBiomeを開発した株式会社バイオーム (Biome Inc.)の代表取締役の藤木庄五郎先生には、3年生の後期にあるバイオ経済企業論で講師をしていただいています。

石塚講師とイノシシ調査

着任したばかりの石塚講師ですが、早速、自動撮影カメラを使ったイノシシの調査に関する実習を行いました。生物科学科のある17号館から歩いて1分の場所には森があり、その中を歩くと、イノシシの堀跡や野生動物の歩いた痕跡が多く見られます。ほとんどの哺乳類は夜行性ですので、実習を行う昼には見ることができません。そこで、自動撮影カメラの出番となります。今回は、福山大学東側の森と、サッカー場奥の竹林という環境の違いにより、イノシシの出現に差があるかどうかを調べました。

自動撮影カメラで野生動物を“観察”

自動撮影カメラには赤外線を感知するセンサーが内蔵されており、カメラの前を熱を持ったものが通るとそこから発せられる赤外線を感知し、動画や静止画を撮ることができます。今回は30秒間の動画を撮影しました。カメラを設置して5日間待ち、その後、カメラからSDカードを取り出し、自分のPCで、イノシシほか、野生動物が撮影されているかどうかを調べます。一つ一つ動画を確認して、動物がいるかいないかを確かめる時には、わくわくしますね。「いた!」という声が実験室に響きました。結果、どの班もイノシシを撮影することに成功したようです。大学周辺にはイノシシが多いようですので、暗くなってからキャンパス周辺を歩くときには、注意しましょうね。中にはイタチ科のニホンアナグマ(下の3枚目の写真)を撮影できた班もありました。アナグマも毎年キャンパス内に姿を見せる動物です。

心地よい春の風を感じながら、外を歩くことから始まった2024年度。少し疲れたかな?ゴールデンウィークを挟み、次は、サンプリングした昆虫とアカネズミを対象とした遺伝分析技術の習得です。そのことについては、また次のブログで紹介しましょう。お楽しみに。福山大学 生物科学科で、豊かな自然の下、生物多様性を学んでみませんか?

 

学長から一言:豊かな自然に恵まれた本学キャンパスは、生物科学科の生物多様性実習のフィールドとして持って来いの場所。童心に返って(?)、さまざまな虫や動物を観察したり採集したりする学生諸君の楽しげな声が聞こえてきそうです。他方、身近なところとは言っても、思わぬ大発見があるかも知れません。大人の眼でしっかり見つめて下さい。