【生物科学科】「ネズミの食性」についての総説を発表!
6500種ほどいる哺乳類の中で半分弱(約45%)を占めるのはネズミの仲間たちです。世界中の様々な生態系の中で大切な役割を担っていると思われているものの、何を食べているのかはよくわかっていません。なぜなら夜行性で直接食事を観察することが難しいうえ(そもそも昼でも難しい)、さらに小さな体から排泄されるウンチがとっても小さいからです。そんな課題がDNAに基づく手法により解決されつつあります。書きにくいですが、ブログ委員として、自分の総説を紹介させてください(生物科学科 佐藤)。
ウンチの中は生きものだらけ
米粒程度のネズミのウンチ。顕微鏡で見ても生物の痕跡を探るのは至難の業です。しかし、ウンチは食べた動物や植物、そして消化管内にいる微生物などの生き物で満ち溢れています。生き物であればDNAを持つので、ウンチの中に存在する生き物をDNAを使って検出できれば、食性がわかります。このような手法のことをDNAメタバーコーディング法と呼びます。この手法を使って、世界中でネズミの仲間(齧歯類)の食性が調べられており、わたしたちもアカネズミ、ヒメネズミ、ハタネズミ、ニホンヤマネなどを対象に5本の論文を世に送り出してきました。この総説では、自身の論文を含めて、世界で研究されているDNAを使った齧歯類の食性解明に関する29件の論文をまとめ、齧歯類の食性解明における現状と、糞中DNAを分析する手法の手順と注意点、そしてこれからの課題について述べました。
総説の詳細:
Sato JJ (2025) Diets of rodents revealed through DNA metabarcoding. Mammal Study 50 (1): 3-25
https://doi.org/10.3106/ms2024-0018:オンライン版は2024年12月6日に公開されました(オープンアクセス、無料で読めます)
たかがネズミではない
プレスリリースをしてから、FMおのみち様と経済リポート様にネズミのウンチの話を取り上げていただきました。また、この総説は生物学系の雑誌のプラットホームであるBioOneにおける、Top and Trending Research(動物学分野)で注目すべき論文としてピックアップされました。普段あまり見聞きしない夜行性の小さなネズミたちではありますが、生態系の中では、森の維持や農業害虫の駆除(ネズミは駆除とは思っていない)など、私たちの社会とも関わる大切な役割を持っています。生態系における小さなネズミの大きな働きについて考えてみてください。生物科学科では3年生でDNAの分析技術を学びます。こんな学びの内容に興味をお持ちの高校生の皆さん、福山大学生物科学科はいつでも門戸を大きく開いて、皆さんを歓迎したいと思います。なお、大きな哺乳類の成果が知りたい方はこちら!(サルの繁殖、サルのハグ)
学長から一言:小さな生き物から大きな生き物まで幅広く学べる生物科学科は、「いきものがかり」を自認する人たちにはたまらない魅力でしょう。子どもの頃のように夢中で自分の研究対象をおいかける教員や学生の皆さんを見ていて、そう思います。ネズミは研究成果を次々と世に問う佐藤淳教授におまかせ。高校生の皆さんなど、若い世代の人たちがもっと多く、この仲間に加わってもらいたいものです。