【グリーンサイエンス研究センター】なぜクマは出没するのか?

なぜクマは出没するのか?昨今、全国で社会問題となっている「クマの出没」について理解するために、東京農工大学の小池伸介教授を講師としてお招きし、第50回のグリーンサイエンスセミナーを開催しました(12/18)。グリーンサイエンス研究センター長の佐藤生物科学科)が報告します。

 

堅果の豊凶と誘因餌

素晴らしい講演でした。20年以上、森で調査を続け、ツキノワグマの基礎生態を明らかにして来られた小池伸介教授の言葉には説得力がありました。なぜ、クマは人の生活域に現れるようになったのか、という疑問に対し、ブナ科の植物の堅果(ドングリ)の豊凶がクマの行動を変化させ、堅果が少ない年に行動範囲が大きくなること、そして、最後には人家の周辺にあるカキの木やゴミなど、クマを誘因する餌の有無が、人とクマとの接触の原因になっていることがよくわかりました。クマとうまく共に生きていくためには、こうした基礎生態学的な知見が大変重要であることを改めて理解することができました。

活発な議論

本セミナーには75名が参加し、本学の教員と学生をはじめ(全学部)、他大学、市役所、動物園、新聞社、民間企業と多方面からお集まりいただきました。質疑応答でもそれら多方面からのそれぞれの現状に合わせた質問があり、大変活発な議論が展開されました。やはり、ここ数年の社会問題であることもあり、質問も多く、小池教授には長い時間、質問にご対応いただきました。

明瞭な回答

メディアでも引っ張りだこの小池教授。どの質問への回答も明瞭でわかりやすいものでした。私たちが交通事故にあわないように注意することと同じように、まずはクマに出会わないようにするために準備することが大切で、そのためにはクマの生態をよく知る必要があるとのことでした。また、もし、注意の末にクマに出会ってしまった場合、クマもパニックになっているはずなので、それ以上、パニックにさせないこと、そして、クマを見失わないように、背を向けないことなど「してはいけないこと」についてアドバイスがありました。一研究者としても第一線の研究者と触れることができ、大いに刺激を受けました。小池教授の素晴らしい講演と適切な質問へのご回答に感謝申し上げます。ありがとうございました。

グリーンサイエンス研究センターは、グリーンサイエンストーク(2024年トーク①トーク②トーク③)や今回のようなグリーンサイエンスセミナー、そして研究プロジェクトの成果報告会等を開催することで、学内の研究力を向上させることを目的としてします。さらに、学外に向けては、本センターは、自然と共生する社会の形成を目指し、生物圏を総合的に科学する研究拠点としての機能を持ちます。今後も種々のイベントを開催予定ですので、楽しみにしていてください。次回、1/22(水)に開催される第51回グリーンサイエンスセミナーでお会いしましょう(下のチラシを参照)。

 

学長から一言:グリーンサイエンス研究センター主催セミナーの今回の招聘講演者は東京農工大学の小池伸介教授。学内外から多数の参加があり、最近かなり深刻な問題になっているクマの市街地への出没を含めて、その生態に関するお話を傾聴したとのこと。野生動物との共生にも、生物科学科が進める動物生態学の専門的研究が重要な意味をもつようです。