【☆学長短信☆】No.33「インターンシップ合同成果報告会を前にして」
明日、12月2日(土)に今年度のBINGO OPENインターンシップの合同成果報告会が社会連携推進センターで開催されます。本学のインターンシップは、2010年に始まり、その後、文科省からの助成も受け、中国地方の各大学とも連携する中で発展してきました。
大手の就職情報会社が今年8月に2025年3月に卒業見込みの全国の2,288名の学生・院生を対象に実施したアンケート調査によると、82.4%がこれまでに何らかのインターンシップ・仕事体験に参加した経験があるとのこと。しかし、その61.8%が半日か1日という限られた期間の研修です(https://career-research.mynavi.jp/reserch/20230913_58367/)。また、経団連と大学との協議会の取り決めで、今年の夏休み以降に実施されるインターンシップについては、考え方が変わることになりました。実施期間・内容等に係る特定の要件を満たしたタイプのみをインターンシップと呼び、インターンシップで取得した評価を含む学生の情報を、卒業・修了年次の6月1日以降は企業が採用のための選考に活かしてもよいというのです。インターンシップ参加者が一段と増えることが予想されます。
研修期間や形態から言えば、私たちのBINGO OPENインターンシップはいわゆる「1dayインターンシップ」とは異なります。他所では余り見られない合同企業説明会、事前研修、事後研修、学内発表、そしてオープンの呼称の理由でもある本学と近隣3大学(福山平成大学、尾道市立大学、福山市立大学)による合同成果報告会を開催しています。この一連の活動を通じて、学生諸君が自分の強み、足りないもの等を認識し、自分を客観的に見つめ直し、今後の大学生活や具体的な就職を念頭においたキャリア形成を考える上での貴重な学びの機会と位置づけています。
開始当初はわずか39名の学生が参加しただけで、研修にご協力いただいたり、実際に学生インターンを受入れて下さったりする企業も20数社でした。関連のデータを基に本学のインターンシップに係る実績を次のグラフに示してみました。ここに見られるように、その後は参加者が右肩上がりに増加し、2019年には272名を数えました。ところが、ここで立ちはだかったのがコロナ禍です。その影響で参加人数が激減しました。もう躊躇している余裕はなく、リモート以外にわれわれには選択の余地が無い、待ったなしの状況が生じました。一般論として、大学教育に遠隔の手法を採り入れる必要性は相当以前から叫ばれてきましたし、推進の努力もなされました。しかし、実際のところ一向に本格化しませんでした。ところが、コロナ禍がその状況を大きく変えました。結果として、まさしく逆境を逆手にとって、遠隔教育の手法を身に付けて利用し、受入れの企業各社にもご協力いただいてインターンシップを維持して来たのです。コロナ禍がかなり下火になった今年度の参加者は148名までに回復し、106社の企業や事業体が協力を表明され、実際に67社が学生を受入れて下さいました。
学生が研修に出かけている期間中には、教員が実際にそれらの職場を回り、研修の様子を観察し、プログラムの改善に役立てます。この視察に赴くのはキャリア形成委員会の委員の皆さんであり、今年の場合、手分けして67社すべてに赴きました。2、3箇所は普通で、中には7箇所も回った委員も見られます。委員の皆さんは本来の研究・教育業務で大忙しの中で、都合を付けて下さっているのであり、なかなか出来ることではありません。もちろん、通り一遍、行きっぱなしではなく、終了後にはきちんと視察報告書を作成しなくてはいけません。
私自身も受入れ各社にお礼を申し上げたく、また研修中の学生諸君の様子を見たくて、受入れ企業の現場を回って見る機会が数年前までありました。そこには普段の授業などで私が目にする表情とは違う学生諸君の姿があり、実践の中で成長していることを確信させるものでした。私が専門とする教育学には、長く使い続けられている格言と言うか、教育の原理・原則があります。「Learning by Doing」、つまり「何かを為すことによって学ぶ」ということです。古代から続いていた方法と考えられる、外側から既存の知識を伝えたり、詰め込んだりするだけの教育の在り方に対して、人間の内側からわき起こる成長力に注目すべきだという、19世紀末から20世紀の初めの頃に生まれた考え方です。そして、このインターンシップなどは、まさしく「Learning by Doing」の典型の一つだと思います。人間は実際に手足や身体を動かすことで、本当に身に付く知識を獲得したり、常に自らが自らに教える「自己教育」を行ったりするのだろうと思います。その意味で、もっともっと多くの学生諸君にインターンシップに参加してもらいたいと思います。
但し、野放図に参加者の数だけ増えればよいというものではありません。期間にしても、通常の学習とのバランスというものがあります。長ければ良いというものではないでしょう。事前、事後の研修にも手間暇がかかります。加えて、決められたスケジュールに沿ってきちんと事前研修に出席する学生ばかりではありません。無断欠席者も出てきます。この夏のある日、オープンキャンパスで出勤し、各学部・学科の活動を見て回っているとき、未来創造館の一角で授業らしきものが行われているのに出くわしました。てっきりオープンキャンパスの活動の一環かと思いました。しかし、聞けば、直前に実施されたインターンシップの事前研修を受けなかった人達に、各社に出かける前の心構えをはじめ、事前研修で行った内容を特別に伝えているとのこと。指導の担当者は休日返上です。「事前研修をしないままに行かせるわけにいきません。受入れてくださる会社に失礼ですから」という言葉に、このプログラムに当たっている人の真剣さ、責任感の大きさを感じ、頭が下がりました。本学のインターンシップはこうした情熱に支えられているのです。
さあ、今年の報告会では、インターンシップを経験した学生諸君からどんな話が語られ、受入れて下さった企業関係者からはどんな講評が述べられるでしょう。大いに楽しみです。