「口元のみえる透明マスクの着用が表情の知覚に及ぼす効果を検証」のプレスリリースについて
このことについて、下記のとおりプレスリリースを行いましたのでお知らせいたします。
記
研究成果のポイント
- 不織布マスク、透明マスク、およびマスク未着用顔の表情の読み取りやすさを比較。
- 不織布マスク着用顔は、マスク未着用顔とくらべて表情が読み取りづらい。
- 透明マスク着用顔は、マスク未着用の場合と同じくらい表情が読み取りやすい。
研究成果の概要
人間文化学部心理学科の宮崎由樹准教授は、北海道大学大学院文学研究院の河原純一郎教授ら、ユニ・チャーム株式会社の松長芳織氏らと共同で、口元のみえる透明なマスクの利用が表情の知覚に及ぼす影響を検証しました。
研究グループは、様々な表情を浮かべた不織布マスク着用顔、透明マスク着用顔、あるいは素顔(マスクなし) の画像を実験の参加者に提示し、どの表情を浮かべているかを判断させました。その結果、顔画像の性別に関係なく、素顔(マスクなし) の場合にくらべて、不織布マスク着用顔では、喜び表情や恐れ表情の読み取りが不正確になることが分かりました。ただし、こうした不正確さは透明マスク着用顔では認められませんでした。今回の結果は、対人コミュニケーション場面で表情を正確に伝えるために、透明マスクを利用することの有用性を示すものです。
なお、本研究成果は2022年6月15日公開のi-Perception誌にオンライン掲載されました。
背景
コロナ禍で、私たちは外出時にマスクを常用するようになりました。マスク着用は感染症の拡大防止に有効です。しかしその反面、マスクは、相手の表情を判断する際に重要な口元を覆い隠してしまいます。その結果、コミュニケーション時に相手の表情は読み取りづらくなってしまいます。こうしたマスク常用にともなう問題への対処として、口元のみえる透明なマスクの有用性を検証しました。
研究手法
529名の実験参加者(261名が女性顔の評価、 268名が男性顔の評価) に、不織布マスクを着用した「怒り」「嫌悪」「恐怖」「喜び」「無表情」「悲しみ」および「驚き」の7種類の表情を浮かべた4名のモデルの顔画像、透明マスクを着用したこれら7種類の表情を浮かべた4名のモデルの顔画像、あるいは素顔 (マスクなし )のこれら7種類の表情を浮かべた4名のモデルの顔画像を提示しました。参加者は、顔画像を1枚ずつ見て、その表情を7択 (怒り・嫌悪・恐怖・喜び・無表情・悲しみ・驚き) で判断しました。また、その判断の後に、顔画像の表情強度も1 (弱) 〜100(強)の範囲で評定しました。
マスクなし、不織布マスク、透明マスク顔の参考画像(左)。表情判断課題の正答率(右)。横軸は浮かべている表情。縦軸は正しく選択できたパーセンテージ。
研究成果
着用者の性別に関係なく、素顔(マスクなし) の場合にくらべて、不織布マスク着用顔の喜び・恐れ表情の読み取りが不正確になることが分かりました。また、不織布マスクを着用して喜んでいる顔は、「無表情」と誤認されうることも示されました。さらに、そうした顔の喜び強度は低く見られることも明らかになりました。加えて、こうした表情の読み取りの困難さや誤認および表情強度の低減は、透明マスク着用顔では認められませんでした。
研究費
本研究は、北海道大学、福山大学、ユニ・チャーム株式会社の三者共同研究として実施しました。
論文の情報
論文名: Effects of wearing a transparent face mask on perception of facial expressions
(透明マスクの着用が表情の知覚に及ぼす効果)
著者: 宮崎 由樹(福山大学)、鎌谷 美希(北海道大学)、須田 朋和(ユニ・チャーム株式会社)、若杉 慶(ユニ・チャーム株式会社)、松長 芳織(ユニ・チャーム株式会社)、河原純一郎(北海道大学)
雑誌名: i-Perception(知覚心理学の国際学術誌
DOI: 10.1177/20416695221105910
URL: https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/20416695221105910
☆本件に関するお問い合わせ先☆
【担当者】宮崎 由樹(福山大学人間文化学部心理学科)
【電話番号】084-936-2112(内線3413)
【E-mail】y38@fukuyama-u.ac.jp
【ホームページ】https://www.fukuyama-u.ac.jp/human/psychology/miyazaki-yuuki/