『「福山バラの酵母」が満を持して国際科学誌へ!』のプレスリリースについて
このことについて、下記のとおりプレスリリースを行いましたのでお知らせいたします。
記
2013年より、福山大学生命工学部生物工学科の分子生物学研究室(久冨泰資教授)は福山市および民間企業と協力して、地域活性化を主眼とした産学官連携事業「福山バラの酵母プロジェクト」を始めました。早いもので、もう8年の歳月が経ちました。この間、地域の方々や報道の方々のご支援のもとに、福山バラの酵母を用いた4つの発酵プロダクトを世に送り出すことができました。ホシノ薔薇酵母パン種(ホシノ天然酵母パン種社製)、備後ワイン(せらワイナリー社製)、生にごりPAクラフトビール(備後福山ブルーイングカレッジ社製)、清酒ローズマインド(天寶一社製)は、いずれも福山バラ酵母の一つであるリンカーン酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)が使われており、私たちが夢に描いた地域の宝となりつつあります。
さて、このたび、私たちは「福山バラの酵母」に関する研究を学術的にまとめ上げ、国際科学誌であるMycoscienceに論文発表することができました。内容は、福山市の園芸センターで栽培された45品種のバラの花から741株の野生出芽酵母を分離して、綿密な発酵試験を通して、パンやワインを作り出す能力を有する4株のバラ酵母を選別したというものです。また、これらのバラ酵母に関しては、DNAの解析をもとに学名を決めるとともに、染色体DNAの構成を明らかにし、発酵プロセスの詳細な様相も明示しました。特徴的なパンやワインを創出するこれらのバラ酵母は公的なバイオリソースセンターに寄託され、微生物特許とも言えるMTA(研究成果有体物提供契約法)に基づいて、商業利用する場合には権利者からライセンス許可を得ることが必須となっています。もし違法流出が疑われるような場合には、私たちが有する技術の一つ「電気泳動核型解析法」を用いることによって、株の特定を容易に行うこともできます。
このたびの学術論文を通して、「ばらのまち福山」から生まれた「福山バラの酵母」がさまざまな発酵食品の開発に世界へ羽ばたいていくことを願ってやみません。2025年に福山市で開催される世界バラ会議福山大会がその大きなきっかけとなることでしょう。
Taisuke Hisatomi & Kousuke Toyomura
Mycoscience, Vol. 62, No.6, pp. 382-389 (2021)
☆本件に関する問合せ先☆
【担当者】久冨泰資(生物工学科)
【電話番号】084-936-2111 【FAX】084-936-2023
【E-mail】hisatomi@fukuyama-u.ac.jp