「因島のアカネズミは森の維持と果樹園被害の抑制に関わる」のプレスリリースについて
因島椋浦町(尾道市)に生息するアカネズミ(Apodemus speciosus)を対象に、糞中に含まれる生物のDNA情報を、PCRと次世代シークエンス技術を用いて明らかにし、アカネズミが森と里山生態系の中でどのような生態的な役割を持つのかを調査しました(次世代シークエンサーMiSeqは本学未来創造館設置)。分析の結果、アカネズミは春にブナ科のコナラ属の植物を多く食べていることが明らかになりました。このことは、食糧が不足する冬に備えて秋に貯めたドングリを食べていることを示唆し、アカネズミが椋浦町の森の中でドングリの分散に関与することを示唆します。さらに、コナラ属の植物に被害をもたらすマイマイガを多く食べることが明らかとなり、森林害虫を抑制する役割も示唆されました。一方で、近くで栽培されている果樹と思われるミカン属の植物も少量ではありますが検出されました。このことは果樹栽培農家にとっては良い結果ではありませんが、さらに糞の中の無脊椎動物の分析をしてみると、ミカン属の植物を食べる以上に、果樹に被害を与える虫(蛾やカメムシ)を多く食べていることが明らかになりました。以上の結果から、アカネズミが森の持続可能性と果樹園被害の抑制という人と自然との共生を考えるうえで重要な生態的役割を持つことが明らかになりました。本研究は、福山大学が掲げる研究ブランディングプロジェクト「瀬戸内の里山・里海学」の基幹となる研究で、文部科学省私立大学研究ブランディング事業「瀬戸内海 しまなみ沿岸生態系に眠る多面的機能の解明と産業支援・教育」にサポートを受けました。研究論文は2021年10月2日にポーランドの哺乳類学雑誌Mammal Research (online版)に掲載されました。オープンアクセス論文として、どなたでも無料でアクセスが可能です。本研究の紹介動画(10分程度)は以下のYoutubeでご視聴いただけます(https://youtu.be/hq_dt6CgA0I)。
Sato JJ, Ohtsuki Y, Nishiura N, Mouri K. (2021) DNA metabarcoding dietary analyses of the wood mouse Apodemus speciosus on Innoshima Island, Japan, and implications for primer choice. Mammal Research DOI: 10.1007/s13364-021-00601-7.
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