【☆学長短信☆】No.139 ワーク・ライフ・バランス
新型コロナウイルス感染症が身近な話題になるようになってから、1年あまり経ちました。第三波はなかなか収束せず、誰もが感染のリスクを負い、人々の生活は多方面にわたり、大きな影響をうけ続けています。外出自粛、休校や遠隔授業、休業や在宅勤務等は、家庭生活にも変化をもたらしています。顔を合わせている時間の長くなった家族ですが、・・・家族が助け合い、会話を楽しみ、夫婦関係や親子関係が深まる、というようには、必ずしもならないようです(たとえば、令和2年のドメスティックバイオレンス相談件数は過去最多、自殺は11年ぶりに増加で、女性と子供で顕著)。
新型コロナウイルス感染症の拡大になる前から、「勤勉であることは最大の美徳」「仕事が一番」から脱却し、「やりがいを感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、豊かな家庭生活や地域活動を」という考え方、すなわち「ワーク」と「ライフ」のバランスを取ってどちらからも充実感が得られる生活にしようとの世の中の動きは強くなっており、内閣府の政策としても働き方改革が進められ、本学でも規程等の整備がなされました。
ワークとライフのバランスを取るのがなかなか難しい時期の一つは、幼い子どものいる時期でしょう。特に働く女性にとってはそうです。しかし少し子どもが大きくなった後はどうでしょう。40~70代以上の中・高年者のワーク・ライフ(特にファミリーライフ)のバランスについて、2000人あまりを対象にして調査した研究があります。この研究のユニークなところは、
- 「仕事で時間がふさがり、家庭での責任が十分に果たせずにいる」というような[仕事→家庭 葛藤]
- 「家事のために、仕事でやりたいと思うことをやれずにいる」というような[家庭→仕事 葛藤]
というワークとファミリーライフ間の葛藤だけでなく、
- 「仕事での経験が、家庭での問題解決に役立つ」というような[仕事→家庭 促進]
- 「家庭で受ける愛情や尊敬のおかげで、仕事の時にも自信が持てる」というような[家庭→仕事 促進]
も調査している点です。
この調査結果の示すところによれば、[仕事→家庭 葛藤]は、40代、50代の男性で高く、[家庭→仕事 葛藤]は、40代、50代、60代の女性で高いということで、これは予想通りでしょう。
ユニークな促進効果の方の結果ですが、注目すべきは、[仕事→家庭 促進]も[家庭→仕事 促進]も、男性では年齢差がほとんどないのに対し、女性は40代から70代へ少しずつ上昇していることです。また、男女とも、葛藤の得点よりも促進の方がかなり高いこと、特に[家庭→仕事 促進]の得点が高いことは、注目に値すると思います。仕事と家庭を両立させることは大変ですが、得られるものも大きく、とりわけ女性にとっては、年齢と共にメリットが大きくなるようです。今苦労の真最中の女性の教職員の皆さん、後からボーナスが出てくるかもしれません。
参考文献:
富田真紀子ほか著『中高年者に適用可能なワーク・ファミリー・バランス尺度の構成』心理学研究 2019年 第89巻 第6号 pp.591-601.
山田陽子著『働く人のための感情資本論』青土社 2019年
2021.1.12.朝日新聞「本社世論調査 コロナ下の生活どうですか」;2021.1.13.産経新聞「DV相談、最多13万件超 2年度 コロナ外出自粛 影響」; 2021.1.23中国新聞「自殺増加 2万919人に 20年 目立つ女性・子供」
松田文子著『時間研究者の時間管理術』心理学ワールド 2012年 58号 pp.5-8.
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2017/10/58-5-8.pdf
この小論は、コロナウイルス感染症の拡大を受けて、今年度初めに日本心理学会がHP上に作成した「心理学ワールド & 心理学ミュージアム 新型コロナウイルス感染症関連記事およびコンテンツ」の「ステイホーム」欄に再掲されました。(このようなよみがえり方をして、びっくりです)
https://psych.or.jp/special/covid19/pw_pm_covid19/
学生による多彩なすばらしい活躍です。
(1)大学院修士課程建築学専攻2年生の河田陽依菜さんが一級建築士の二次試験「設計製図の試験」に合格しました。7月にすでに一次試験「学科の試験」に合格しているので、あと2年間の実務経験を積めば一級建築士という快挙です。おめでとうございます。
詳細は、学長室ブログで。
https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/44472/
(2)中国新聞のキャンパスリポーターとして活躍している薬学部薬学科4年生の道原あやなさんが、中国新聞キャンパスリポーター賞の優秀賞に選ばれました。3年連続の入賞です。おめでとうございます。
(3)機械システム工学科4年生の下田 和幸くん、若木 公志くん、山内 陽登くんが、一般社団法人 日本機械設計工業会が実施する機械設計技術者試験に合格しました。おめでとうございます。
詳細は学長室ブログで。
https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/44640/
(4)経済学部では、ビジネス能力検定の受験を推奨していますが、今年度も3級に149名、2級に97名の学生が挑戦し、それぞれ127名、67名が合格しました。このコロナ禍の下、受験指導もままならない中で、学生も担当教員もよく頑張りました(昨年度より受験生数は10名減ったものの、合格率は約10%アップ!)
詳細は学長室ブログで。