【☆学長短信☆】No.134 大学生はアイデンティティ統合のまっただ中
アイデンティティという言葉は、半世紀以上前に提起された心理学用語ですが、現代では、青年期に発達するものとして、また精神的健康を維持増進する上で重要な個人的属性として、一般社会にも広く受け入れられた概念となっているように思われます。
最近、12歳から25歳までの1万4千人あまりを対象に、アイデンティティが混乱から統合に向かうプロセスを調べた調査研究を読みました。混乱状態とは、自らが求める価値、規範、信念を探している状態であり(この状態が、モラトリアム)、統合とは探求の結果見出した価値、規範、信念に積極的に関わっている状態であると考えられます。調査結果の示すところによると、12歳から25歳までアイデンティティ統合の強さはほとんど変化せず、他方アイデンティティ混乱は、12歳から20歳まで上昇し、以降25歳まで余りかわらないようでした(18歳以上はほぼ大学生。ただし24歳以上は有職者が7割)。また、人生満足感はアイデンティティの統合と正の相関、アイデンティティの混乱と負の相関でした。
このような結果から、私たちが教育を行い、研究活動や地域連携活動を指導したり共に行ったりしている学生達は、現代においてもモラトリアム期間にあって、いまだアイデンティティの混乱に直面しており、人生満足度は相対的に低い時期にいると思われます。さらに卒業後に有職者となっても、簡単にはアイデンティティの混乱の終息には至らないようです。
新型コロナウイルス感染症とのかなり長い付き合いを余儀なくされている、青年期まっただ中の学生達は、このようにアイデンティティ混乱終息への(言い換えればより厚みのあるアイデンティティ統合に向かっての)発達途上者であることを、私たち教職員はよく理解し、教育においても、就活支援においても、そして学生生活全般に対しても、コロナ禍に妥協することなく、忍耐強い指導と温かい支援を忘れないようにしましょう。
参考文献:
畑野快ほか著『青年期・成人期初期におけるアイデンティティの発達傾向と人生満足感の関連:大規模横断調査に基づく検討』発達心理学研究 2020年 第31巻 第1号 pp.26-36.
楽しいお知らせです。
(1)かねてより、大学に一台あると、思わぬ学生や教職員が、思わぬ一面を見せてくれるのではないかと、密かに「あったらいいなあ」と思っていたストリートピアノですが、大学会館のロビーに入りました!お楽しみください!
詳細は、学長室ブログで。
https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/38301/
学生の活躍です。
(2)心理学科の発達心理学研究室の学生は、学校法人福山大学社会連携推進センター2階にある子育てステーションにて、地域に開かれた子育て支援活動を行っています。活動資金も自分達で外部の助成金を獲得するようにしており、今年度も「一般財団法人 義倉」および「(公財)ひろしまこども夢財団」に申請し、審査の結果いずれの助成金も認められたとのことです。おめでとうございます。
詳細は学長室ブログで。
https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/38759/
教員の活躍です。
(3)第一回未病栄養シンポジウムで「疾患モデルの発症関連遺伝子の解析、モデルの栄養改善や食育、体育など教育によって、未病を実現するためこれまで大きく研究の進展に貢献された研究者」の一人として、薬学部の病態生理・ゲノム機能学研究室の道原明宏教授が選ばれました。おめでとうございます。
詳細は学長室ブログで。
https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/38050/