【プレスリリース】瀬戸内海の島々の森に住むネズミは果樹園被害を抑制する

瀬戸内海の島々の森に住むアカネズミを対象に、糞中の動植物をDNA分析により同定し、食性を明らかにしました。その結果、ブナ科やバラ科の植物、そしてヤガ科の蛾が、分析したほぼすべての島のアカネズミから検出され、本種が森林の更新や果樹園被害の抑制に関与する可能性が示唆されました。本研究成果は2019年8月29日に日本哺乳類学会英文誌Mammal Study(オンライン版)に掲載されました。

 

瀬戸内海の島々の森に住むアカネズミ(齧歯目ネズミ科アカネズミ属:日本固有種)の糞を対象に、次世代シークエンサーを用いたDNAメタバーコーディング分析を行うことで、糞中の動植物を同定し、本種の食性を明らかにしました。分析の結果、ほぼすべての島から検出されたのは、ブナ科とバラ科の植物とヤガ科の蛾でした。ブナ科の木が作るドングリを食べるという本種の特徴は日本各地で知られており、瀬戸内の島々でも同様の結果が得られました。アカネズミは食べるものが少ない冬季に備えて秋にドングリをため込む習性があります。そのドングリは全てが食べられるわけではなく、一部は芽を出し新しいブナ科の木となります。つまり、アカネズミは島の森林生態系の維持にとって種子散布という重要な役割を果たしていることを意味します。また、果樹園の多い瀬戸内の島々でヤガ科(果実吸蛾類を多く含む)の蛾を食べていることは特別な意味を持ちます。つまり、アカネズミには果樹園被害の抑制効果があることを示唆します。農家にとってネズミとは害獣のイメージが強い動物ですが、森のネズミであるアカネズミはむしろ益をもたらすネズミである可能性が示唆されました。本研究成果は、自然共生社会の形成を目指す「福山大学ブランディング推進のための研究プロジェクト:瀬戸内の里山・里海学」の成果の一部になります。

Sato JJ, Kyogoku D, Komura T, Maeda K, Inamori C, Yamaguchi Y, and Isagi Y (2019) Potentials and pitfalls of the DNA metabarcoding analyses for the dietary study of the large Japanese wood mouse Apodemus speciosus on Seto Inland Sea islands. Mammal Study 44(4): 1-11 https://doi.org/10.3106/ms2018-0067 福山大学、京都大学との共同研究

 


☆本件に関するお問合せ先☆

【担当者】佐藤 淳(生物工学科、グリーンサイエンス研究センター)

【電話番号】084-936-2112(内線4624) 【FAX】084-936-2023

【E-mail】jsato@fukuyama-u.ac.jp

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