【生物工学科】海を思うネズミ
生物工学科では因島で森の生態系調査を行っています。4年生は卒業研究として、森のネズミが何を食べているのかという食物連鎖の研究と、その森にどのような昆虫や植物がいるのかという生物多様性の研究を、ともにDNAの分析に基づいて進めています。ネズミが食べているものは季節によって変わることが予想されますので、毎月調査を行っています。このような調査により、森の生態系で、ネズミが果たす役割を明らかにすることができます。
7月も終わりに近づき、とても暑くなってきましたが、ネズミは変わらず元気に生きていました。椋浦町の森も緑でいっぱいになりました(すぐ下が7月27日の写真で、さらに下が今年3月5日の写真)。森の深緑と海の青、何とも言えない島の存在感が絶景を作り出しています。
いつも通りトラップを仕掛ける4年生。ネズミの気持ちになってトラップを仕掛けます。毎回同じ場所に60台のトラップを仕掛けています。
下の写真がトラップです。いかがですか?トラップの中に入ってみたくなりましたか?ネズミの気持ちになってみると、トラップの入り口も家の玄関の入り口くらいのサイズで、落ち葉もとっても大きなサイズであることが分かります。そして小さな昆虫にとっては、そんなネズミも恐竜のように大きく感じるのかもしれません。私たちの知らない世界がそこにはあります。それを明らかにしたいのです。
今月も出会うことができました。アカネズミです。4頭捕獲し、サンプルの採取後、4頭とも元気に森に帰っていきました。人間よりもず~っと前から日本で暮らしてきたアカネズミ、人間とやらがやってきてからというもの、森の木陰から人間の生活を見てきました。人間の活動が森の生態系にどのような影響を与えるのか?アカネズミの活動が人間の生活にどのような影響を与えるのか?アカネズミが食べているものを分析することで、そんなことを明らかにしたいと卒業研究生は考えています。
生物工学科では、フィールド調査、生き物の扱い方、サンプルの採取の仕方、生き物の分類、DNA実験、バイオインフォマティクス、そして関連する法律など、リアルな生き物の調査のための技術を学ぶことができます。50年後、人類が自然とうまく付き合いながら生きていくのに必要なことは、このような学びを通して生態系をリアルに感じた経験を持つ皆さんが社会で活躍することでしょう。そんな学びをお手伝いします。
最後に、タイトルの説明です。上の写真で椋浦町の森は主に落葉樹であることが分かります。これら落葉樹の落ち葉は森の中で腐植土を形成します。それが雨で海まで流れて、海の生き物たちの栄養分となれば、森と海がつながっているということになります。さて、その落葉樹を構成するブナ科の植物の作るドングリをアカネズミが食べていることが分かっています。冬に備え、秋にため込んだドングリは全て食べられるわけではなく、一部は芽を出し、新しいブナ科の木に成長します。つまり、アカネズミはブナ科の植物の世代交代に役に立っています。ということは、毎年落ち葉を提供する森の維持に役立つアカネズミは、海の豊かさにも関わっているのではないでしょうか?検証が必要です。海を思うネズミ。
本研究は福山大学研究ブランディング事業の一環です。生物工学科の多様な研究はこちら。