【生物工学科】島の森のネズミの今
春を感じる季節となりました。森のネズミたちも動きが活発になる季節です。今回、3年生の学生と因島の森にネズミの調査に行ってまいりましたので、少しだけ紹介させていただきたいと思います。
2月、3月は研究室に配属となった3年生が卒業研究を行う準備をする時期です。2月中旬から3月初旬にかけて因島 椋浦町近くの森で調査を行いました。
椋浦町では八朔やミカンの栽培がおこなわれており、その山側にアカネズミが住む森があります。人の生活圏のすぐ近くの森でアカネズミはどのような役割を果たしているのでしょうか?その疑問に答えるカギは「うんち」にあります。
研究室ではこれまでに瀬戸内海の島々のアカネズミが、それぞれの島で固有の進化を歩んできたことを明らかにしました(参考文献はこちら)。氷河期が終わり暖かくなったことで海水面が上昇し8000年前には現在の島の形になったと言われています。それだけの長い間、島に隔離されてきたアカネズミ。島の環境にどのように適応してきたのでしょう?昨年、ネズミのウンチに含まれる生物のDNAを調べることで、ネズミの“食”を分析する方法を編み出しました(参考文献はこちら)。福山大学に導入された次世代シークエンサーを使い糞の分析をすることで、森の生態系の一端を明らかにすることができます。最新のバイオテクノロジー(生物工学)で生態系を紐解きます。
話が長くなりました。さて、今回はネズミの調査です。学生たちは山の斜面に等間隔になるようにトラップを置いていきます。ネズミの気持ちを考え、ネズミならばどのような場所を行き来するのかを想像しながら、トラップを仕掛けます。
アカネズミはドングリが大好きなことが知られています。秋の間にため込んだドングリを食べながら冬を過ごすのです。今回のフィールドにもたくさんのドングリが落ちていました。ドングリを見てみると、虫に食われているものが多く、きっとアカネズミの口にもこの虫が入るんだろうなと想像します。ドングリだけ見ても森の中では様々な生物の間でやり取りが行われていることがわかります。
さて、翌朝早く、仕掛けたトラップを確認に行くと、ちゃんと中にはアカネズミがいました。間近に見る野生のネズミは愛らしくもたくましいものです。街には決して現れないアカネズミ。森の中でどんな役割を果たしているのでしょう。
サンプリングを行った後は捕獲場所でアカネズミを放します。勢いよく森に帰っていきました。また捕まるなよー。達者でな―。
森の中は謎だらけ。島の森の不思議を解明し、里とのつながりを考え、そして森の生態系が沿岸の生態系とどのような関わりを持つのかを突き止めたいと考えています。森は想像力を掻き立ててくれます。面白い研究材料の宝庫です。つつけば何かが現れる。