人間文化学部

Faculty of Human Culture and Sciences

【心理学科】高校生を対象とした暴力防止授業の実施

【心理学科】高校生を対象とした暴力防止授業の実施

先日、学生を中心として、高校生を対象とした暴力防止授業が開催されました。今回の記事では、その模様を赤澤教授からお伝えさせていただきます(投稿はFUKUDAI Magのメンバーの向井です)。

 


2024年7月17日(水)の午後に、心理学科の発達心理学研究室所属の3年生6名が、「暴力防止授業-アクティブ・バイスタンダーを目指そう」を福山市立福山高等学校の6年生194名を対象として実施しました。この授業も今年で6年目になります。

<高校の先生方と暴力防止授業メンバー>

心理学科の赤澤です。発達心理学研究室所属の3年生は、過去6年間、福山市立福山高等学校等の高校生を対象として、「デートDV予防授業」や「暴力防止授業」を実施してきました。2024年度は「暴力防止授業」を実施し、「アクティブ・バイスタンダー(active bystander)」について取り上げています。バイスタンダーとは、ただ暴力を傍観している「傍観者」という意味です。しかし、アクティブ・バイスタンダーとは、暴力を防止するために、暴力に介入していく「介入者」という意味です。自身が被害者・加害者にならないだけでなく、被害者を援助し、加害者の暴力を止めることができるようなアプローチについて、授業では説明しました。

授業は大きく3部構成となっており、第1部の「暴力の境界(バウンダリー)」について、補助資料への穴埋めなどを指示しながら、柴田 愛丸さん(愛媛県立 今治南高等学校出身)が、暴力の境界と種類について説明しました。第2部の「暴力を防ぐために-他者視点」では、暴力の境界を考えるワークを行い、「暴力かどうか判断するのは自分ではなく、その行為を相手がどう感じるか」というような「他者視点」を持つことが、暴力の予防において重要であると、伊藤 美海さん(福山市立 福山高等学校出身)が説明しました。伊藤さんは福山高等学校の卒業生でもありました。最後の第3部「暴力を防ぐために-アクティブ・バイスタンダー(介入者)を目指そう」では、暴力の被害者や加害者から実際に相談を受けた時の対応法について佐藤 結香さん(広島県立 明王台高等学校出身)が説明し、高校生と大学生で被害者と相談者役のロールプレイも行いました。

<柴田さん、伊藤さん、佐藤さんの授業説明の様子>

以下は授業を行った3名の感想です。

・柴田 愛丸さん
「高校での暴力防止授業は、数年前までは自分が聞く立場でした。自分が授業を行う立場に変わり、普段の大学での発表とは雰囲気が異なり緊張しました。ロールプレイの部分が不安だったのですが、自分から話しかけることで高校生側が思ったよりも良いリアクションを返してくれて嬉しかったし、胸を撫でおろしました。今回の経験を通して、人前で話すことに対して少し慣れることができました。高校で授業発表をするという貴重な体験を今後の発表や就職活動にも役立てていきたいです。」

・伊藤 美海さん
「私は暴力を防ぐために大切な他者視点についての説明を担当しました。内容をしっかり聞き取って貰えるようゆっくりはっきりと話すことを心掛けつつ、時間配分や気軽に挙手をしてもらうためにはどうしたらいいのかを考えながら授業を行いました。途中で高校生に意見を尋ねる場面がありましたが、突然指名したにも関わらず、どの生徒さんも授業内容を踏まえて自分の考えをしっかりと発表できていて素晴らしいと思いました。私も福山市立福山高等学校出身で3年前にこの暴力防止授業を受けました。当時はコロナ感染症の流行でオンライン授業でしたが、授業を受けた側から3年後に授業をする側になるとは全く予想していなかったのでとても貴重な経験だったと思います。」

佐藤 結香さん
「高校生に授業をして、高校生の皆さんが、私たちの話をよく聞いてくれていたなと思いました。また、高校生に授業をすることによって,どのように伝えればいいのかということを考え、伝える際は、どこがみんなに覚えてほしいポイントなのかを考えながら工夫して授業を行うことが出来ました。私が担当したところではロールプレイングもあったのですが、高校生はちゃんと質問に答えてくれて、ポイントを押さえて発表してくれていて、しっかり授業を聞いてくれているということが伝わってきて、やりがいを感じました。」

      <高校生と大学生とのロールプレイング場面>

 また、授業を受けた側の高校生が以下のような感想を書いてくれましたので、紹介します。授業内容や方法、また、大学生が行う授業について嬉しいコメントが沢山ありました。

「自分が今まで思っていた、『距離近いの、きついなー』とか、『勝手に物使われるの嫌だなー』という気持ちが、『境界線』ということばで表すことができるのを知って、普通だったんだ、と気が楽になりました。」
「具体的な例などを用いて、分かりやすく暴力について知ることができた。自分が思っていたより、多くのことが暴力としてあり、びっくりした。自分が無意識にやっているかもしれないから、相手の立場に立って考えることを心がけていきたいと思う。」

「普段の授業では教えてもらうことのない内容を知ることができてとてもためになりました。今日学んだことを活かして物事を他者視点で考えたいと思います。」

「ロールプレイングを用いたアクティブ・バイスタンダーの実演が分かりやすく、おもしろかったです。暴力の境界は人それぞれなので、そこについて考えていきたいと思いました。」

授業の最後に生徒からの謝辞がありましたが、授業で学んだ内容をしっかり理解し、自身の言葉で伝えてくれました。暴力防止授業の実施だけでなく、様々な面でサポートいただいている福山市立福山高等学校の脇谷靖伸校長先生を始めとし、今回の授業を企画してくださった保健部主任の和佐田知子先生に心よりお礼申し上げます。

 


多くの人が参加した暴力防止授業。授業を担当した大学生にとっても、授業を聞いた高校生にとっても、今後の参考にためになる一日になったのではないかと思います。心理学科では今後もこのような活動を随時行っていきます。

 

学長から一言:心理学科発達心理学研究室の教員と学生の皆さんが、福山市立福山高等学校等の高校生を対象に実施してきた啓蒙活動も今年で6年目。今回のテーマは、暴力を防止するために、暴力に積極的に介入していく必要性についてとのこと。高校生の皆さんのコメントからは、大学での日頃の専門的な学びを活かした十分な準備を踏まえて、被害者を援助し、加害者の暴力を止めるための示唆に富む授業や説明ができたことが窺えます。

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