
【人間文化学科】方言研究会「Fuku Dialect」の活動報告!
人間文化学科では、2024年度から地域のことば(方言)に関する研究を進めています。今回はその成果について、岩崎がご報告いたします。(投稿はFUKUDAI Magメンバーの古内)。
福山大学の学生はどれくらい方言を使うのか?
まず、福山大学の学生が「広島県の方言」をどのくらい使用しているのかを調査しました。アンケートでは、全国の方言を集めた『都道府県別 全国方言辞典』(佐藤亮一編 2009年 三省堂)や『出身地(いなか)がわかる!気づかない方言』(篠崎晃一+毎日新聞社 2008年 毎日新聞社)に掲載されている86語を対象としました。
各方言について、以下の5段階で評価しました。
●「使用する」……4pt
●「過去に使用した」……3pt
●「聞いたことがある」……2pt
●「知らない」……1pt
●「分からない」……0pt
92名の学生にアンケートを実施することができました。その結果、使用頻度が高い方言には「つまらん(だめだ、つまらない)」や「たいぎー(疲れた、面倒な)」「めげる(壊れる、だめになる)」などが挙がりました。逆に、「知らない」という回答が多かったのは、「はちまん(お転婆娘)」「へこさか(逆さま)」「まつぼり(へそくり)」などでした。
ここで、福山大学の学生が「使う/使った」・「聞いたことがある」と答えた方言ベスト5を発表します。
1位 つまらん(だめだ、つまらない) 平均2.98点
例文:おとーさんのおってんときに言わにゃーつまらん
(訳:お父さんのいらっしゃるときに言わなくては駄目だ)
2位 たいぎー(疲れた) 平均2.89点
例文:お風呂入るんたいぎー
(訳:お風呂に入るの面倒くさいー)
3位 めげる(壊れる、だめになる) 平均2.76点
例文:ていねいにせんと、めげるでー
(訳:丁寧にしないと壊れるよ)
4位 よーる(言っている) 平均2.63点
例文:何よーるん
(訳:何を言っているの)
5位 はぶてる(腹を立てる) 平均2.57点
例文:そがーなことで、はぶてちゃーみっともなー
(訳:そんなことで、腹を立ててはみっともない)
「つまらん」は「面白くない」という意味では西日本で広く使いますが、例文にあるような「駄目だ」という意味で使用する地域は限定されるようです。
また、大学生には知られていないことばも、地域の方言資料を見ると載っていたりするので、いつ頃から姿を消していったのか、興味深いです。学生のなかには、家に帰ってから「この方言、知ってる?」と尋ねてから、さらに授業で結果をフィードバックしてくれる方もいて、とてもありがたかったです。
地域の方言資料と学生たちの学び
調査の過程で、福山市山野町で刊行されている『やまの続編 ほろびゆくわがまほろばのことのは』(以下『やまの続編』)を知りました。実際に山野町を訪問し、編纂者の方々からお話を伺いながら、備後地域の方言について理解を深めました。
その後、学生たちと「Fuku Dialect」という方言研究会を結成し、「備後の方言に親しむためのツール」を考案しました。話し合いの結果、
●クロスワードパズル
●歴史クイズ
を含むパンフレットを制作しました。
地域との連携と今後の展望
完成した方言パンフレットは、山野民俗資料保存会の方々にも見ていただき、以下のような興味深い意見をいただきました。
●クロスワードパズルに「ヤオイ(やわらかい)」「コラエル(許す)」「トラゲル(片付ける)」を
入れることができる。
●「へちゃがす」とは言うが、「へっちゃがす」は言わない。
●「ものもらい」は「めぼいと」ではなく「めべーとー」と言う。(クロスワードパズルでも「めべーとー」を採用していますが、鞆の浦の方言集には「めぼいと」が挙がっています)
他にも、「山野の方言は、神辺や岡山では笑われることがあった」という地域ならではのエピソードを紹介していただきました。また、「大学生に山野の方言だけを使った劇を作って披露してほしい」「海外からの実習生向けに方言集を作るのも面白い」という提案もありました。
『やまの続編』の編集委員長・世良基正さんが「方言は文化だから大事にしよう」とおっしゃった言葉が印象的でした。
今後も、備後地域やその周辺のことばを調査し、学生や地域の方々と共有していきたいと思います。
【付記】
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)(課題番号22K00535)および福山大学教育振興助成の支援を受けています。
学長から一言:人間文化学部の岩崎真梨子准教授が進める方言研究。本学赴任前に青森県南部の方言を対象に展開していた研究の舞台を備後に移して、すでに新たな拡がりが見えています。学生諸君や地域の方々も巻き込んで、従来の研究とはひと味もふた味も違って斬新な方言研究の深化を大いに期待しています。