【心理学科】日本心理学会第88回in熊本大会報告
心理学科の赤澤です。2024年9月6日~8日に熊本城ホールにて日本心理学会第88回大会が開催されました。発達心理学研究室の院生2名とともに参加発表し、そのうちの1名が学術大会優秀発表賞を受賞いたしましたので報告いたします。
<学会会場入口にて撮影>
坂本望月さん(人間科学研究科修士課程2年生・広島三育学院高等学校出身)は、昨年度に続き2回目の発表となりました。修士論文で取り組んでいる「未就学児をもつ父親の家事および育児の参加促進要因について」の研究結果を発表しました。近年、「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業観に対する否定的な意見が増え、父親を対象とした育児支援制度も整えられてきていますが、我が国における父親の家事・育児への参加は、今一つ進んでいない現状があります。坂本さんの修士論文では、その背景にはどのような要因があるのかについて様々な理論から検討しています。
田中咲妃さん(人間科学研究科修士課程2年生・広島県立三原高等学校出身)は、昨年度は中四国心理学会で発表し、全国レベルの学会発表は今回が初めてでした。同じく修士論文で取り組んでいる「女性の管理職への昇進意欲に影響を与える要因」について発表しました。ジェンダー・ギャップ指数における日本の総合順位は、146か国中118位であり、特に経済における順位が低くなっています。経済の評価には、管理職の男女比の評価も含まれており、日本は146か国中130位でした。田中さんの修士論文では、女性の昇進意欲の促進要因について組織レベル、対人レベル(上司との関係性)、個人レベル(自己効力感など)から検討しています。
二人の修士論文のテーマは異なりますが、社会的問題としては表裏一体の部分があると思います。そのため、院ゼミのディスカッションでは相互の発表が刺激となり、切磋琢磨できた面が大きく、非常に役立ったところがあります。
<坂本さんの発表ポスター>
<田中さんの発表ポスター>
また、大変喜ばしいことに、田中さんの発表は、審査の結果、公益社団法人日本心理学会学術大会優秀発表賞を受賞することが出来ました。日本心理学会のHPによれば、例年、学会の発表件数は約1,200件で、参加者数3,000名となっております。昨年度の日本心理学会第87回大会(2023年9月15日―17日)で行われた一般研究発表における優秀発表賞は28件でした。恐らく2024年度も同様の人数が授賞したと思われますが、非常に狭き門であるといえます。
<学会からの授賞通知>
以下、二人の大学院生のコメントです。
・坂本望月さん
「昨年度、神戸国際会議場で日本心理学会大会に参加したときには非常に緊張しており、他の発表を見る余裕がありませんでした。しかし、今年は2回目ということで、余裕ができ他の研究者の発表も聞くことができ、充実した学会参加となりました。今回の発表では、私の発表に対して、興味を持ってくださる方が想像以上に多かったことに驚きました。そのなかで多くの先生方からさまざまな意見をもらったことで、より自分の研究について深く学べたと思います。ご指導いただいた赤澤先生、同研究室の田中さんには感謝申し上げます」
・田中咲妃さん
「学会が開催された3日間では多くの研究発表されていたため、受賞のご連絡をいただいた時はとても驚きましたが、とても嬉しかったです。日本心理学会大会への参加は今年が初めてでした。全国規模で大きな学会であることや、論文や書籍でお名前を拝見したことがある先生も参加されており、とても緊張しましたが、多くの先生方と楽しく意見交流ができ、非常に有意義な学会参加となりました。ご指導いただいた赤澤先生、同研究室の坂本さんには感謝申し上げます。」
発表後は、他大学の先生も交えた懇親会で、二人とも少し緊張はしていましたが、熊本名物の馬刺しと辛子レンコンを美味しそうに食べていました。他大学の先生との交流も二人にとって良い刺激になったと思います。
坂本さんも、田中さんも修士論文の執筆だけでなく、この2年間で450時間の実習を行い、いよいよ今年度は公認心理師取得のための国家試験を受験します。指導教員としては、修了後の二人の活躍が更に楽しみです。最後に、二人の学会出張には、福山大学から研究助成金が一部出ております。大学が大学院生の研究を後押していただけることについて、とても有り難く、感謝しています。
学長からの一言:日本心理学会の大会で自身の修論の内容に基づく発表をした院生の坂本望月さんと田中咲妃さん、お疲れ様でした。全国大会で発表することだけでも十分に素晴らしいのに、田中さんは学会から学術大会優秀発表賞を授与されるという誇らしい成果まで挙げました。おめでとう! 次の目標である公認心理師資格を目指して更なる頑張りに期待しています。