人間文化学部

Faculty of Human Culture and Sciences

【人間文化学科】江戸後期・福山発祥SDGsの地域運営に迫る 文化フォーラム2024「「福山義倉」とその成立背景」4回シリーズ

【人間文化学科】江戸後期・福山発祥SDGsの地域運営に迫る 文化フォーラム2024「「福山義倉」とその成立背景」4回シリーズ

9月21日(土)から11月16日(土)の4回にわたり、福山大学社会連携推進センターにおいて 文化フォーラム2024「「福山義倉」とその成立背景」が開催されます。今回は、その内容を青木がお伝えします(投稿はFUKUDAI Magメンバーの古内)。

 

 


「福山義倉」は、1804年(文化元年)に設立され、現在も福山市民の様々な活動を支援する事業を行っています。その背景には、どのような地域の文化があったのでしょうか。

義倉」とは、「飢饉に備えるための貯穀。また、それを納めた倉。」のこと(日本大百科全書)で、中国で始まり、日本では特に江戸時代に朱子学の教育を通じて普及し、各藩で「備考貯蓄」(飢饉や災害に備えて米穀や金銭を蓄えること)として実施され、「常平倉、社倉とともに三倉」と称されていました。

「福山義倉」は、江戸後期から現代まで続く民間発祥の「互助システム」として、全国的にも希少な事例です。

備後圏域経済・文化研究センター文化部門においては、「福山義倉」を取り上げて、その成立背景を探求し、福山藩内の地域運営の独自性解明を目指しています。

 今年度の文化フォーラムは、本研究の主題に関する専門的知見を持つ外部講師3名と本学人間文化学科教員1名による4回の講演会を開催し、「福山義倉」の独自性に迫り、持続可能な地域のあり方を現代に提示します。

江戸後期は、地震、天候不順による飢饉が頻発し、各藩の財政は窮乏化するとともに、一揆が多発するなどその運営は危機にありました。その対策の一つとして導入されたのが「義倉」「社倉」の制度でした。それらの中でも、「福山義倉」は地域の危機に対する「救荒」のためだけでなく、教育文化の振興にも力を発揮し、明治以降もその働きは継続しました。

今年度の文化フォーラムでは、そのような制度がなぜ成立したのか、その成立の文化的背景にはどのような地域的特性があったのか、これらについての解明と現代的な意義を追求します。

※本研究は、三菱財団人文科学研究助成に採択された研究※と連動しています。

文化フォーラム2024の内容は、この研究※と関連し、下記シンポジウムに、集約されます。

※「福山義倉の文化的ネットワークとその継承―菅茶山と井伏鱒二を軸に」(研究代表者・青木美保、2023年~2024年)のシンポジウムは、11月30日、社会連携推進センター9Fで開催。

本研究は、福山大学ブランド研究「瀬戸内の里山・里海学」として始まり、2021年度センター創設記念シンポジウム「危機への対応―備後地域の過去と未来」から発展したものです。

 

第1回は、「福山義倉」の元となったとされている「社倉私議」について、中井竹山研究で知られる清水光明氏から講義を受けます。「社倉私議」を考案した大坂の学問所・懐徳堂の学主・中井竹山(1730~1804)は、寛政の改革を主導した老中・松平定信に献策するとともに、朱子学を官学とする教育改革において重要な役割を果たした人物です。菅茶山(1748~1827)の廉塾もそういう時代の流れの中で開かれました。第2回は、「福府義倉」(当初の名称)の運営の独自性について、経済学的観点からこれまで研究を続けてこられた平下義記氏からこれまでの研究成果について講義を受けます。

第3回・4回は、「福府義倉」成立の文化的ネットワークとなる朱子学教育について取り上げます。第3回は、菅茶山の、廉塾での教学や民衆教化の在り方から、中国思想の研究者・本学清水洋子准教授が、茶山の対社会の思想に光を当てます。第4回は、中国文学の研究者・平成大学教授・市瀬信子教授が当時の朱子学教育の在り方を、当時の教材となった書物から考察します。「孔子家語(こうしけご)」は、孔子についての説話を集めた書物で、日本で大変読まれたようです。福山大学に寄託された資料「備前邑久岩佐家旧蔵書」に書き込みのある『孔子家語』があり、同時代の異本も資料としながら、この地域でこの書物がどのように読まれたかを考察します。

地域の貴重な文化ですので、ぜひ多くの方に知って頂き、これからの地域運営に活かしていければと思います。ご来場をお待ちしております。

 

学長から一言:人間文化学科が本学での日頃の学問研究の成果を広く社会に還元する催しである「文化フォーラム」では、4回シリーズで今年も地域の興味深い歴史・文化遺産について語られます。それぞれのテーマに精通した専門家による語りは、きっと遠い昔の豊かな文化に私達を誘ってくれることでしょう。

この記事をシェアする

トップへ戻る