【税務会計学科】張楓教授、企業家研究フォーラム賞を受賞!
備後地域産業研究の第一人者である税務会計学科の張楓教授が、昨年に引き続き、著書で学会賞を受賞しました。このことついて、税務会計学科・関下が投稿します。
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張楓教授の著書『近現代日本の地方産業集積―木工から機械へ』(日本経済評論社、2021年)が、企業家研究フォーラムの2022年度第16回学会賞において、栄えある企業家研究フォーラム賞(著書の部)を受賞しました。昨年度の、同教授編著『備後福山の社会経済史―地域がつくる産業・産業がつくる地域』(日本経済評論社、2020年)が一般財団法人商工総合研究所が主催する第45回中小企業研究奨励賞を受賞したことに続き、2年連続受賞の快挙を成し遂げました。
今回の企業家研究フォーラム学会は、企業家や企業家活動(アントレプレナーシップ)を対象とする学会であり、同学会賞はこの分野において最も優れた学術的研究に与えられます。
張楓教授は、受賞作において、明治後期から現代に至るまでの100余年間における近現代日本地方産業集積のダイナミックな展開過程を、広島県東部の備後福山地区に展開する、木工産業(下駄と家具)と機械工業の歴史的産業連関性に着目して産業史・経営史的見地から実証的に明らかにしました。
学会賞の審査委員からは、同書が100年間にわたる近現代日本地方産業集積の展開のダイナミズム、また多様な産業の存続メカニズムを詳細に明らかにしたこと、およびそれが企業家研究の発展に大きく寄与する優れた業績であったことが、審査において高く評価されたとのコメントがありました。
受賞後のオンライン懇親会での張楓教授のスピーチ:
拙著は、戦前期、戦時期、また戦後高度経済成長期などというような特定の時期における特定の産業・企業に限定した従来の経営史・産業史の研究手法ではなくて、あえて戦前から戦後、さらに現代を射程に入れた1世紀という長期にわたる多様な地方産業・企業の通時的な考察に挑みました。それは、地方において歴史的に蓄積されてきている産業の多様性や構造的特質などを見出すには非常に有効であると考えたためです。それでも、新たな試みやチャレンジには常に不安や課題が付きまとうこととなります。振り返ってみますと、20年も前の大学院生時代に在来産業史研究に導かれて下駄研究をはじめ、また家具産業と出会っても、現実的には規模縮小し、斜陽産業化した産地や産地企業の近現代日本経済発展における歴史的位置づけと現代的意義に悩まされてきておりました。こうした悩みや不安は、その後、恐る恐る機械工業研究の世界に足を踏み入れてから、大きく解消されていったように感じました。したがいまして、拙著は、木工産業から機械工業へと変容する備後福山地区のモノづくりの百年史であると同時に、私が試行錯誤を繰り返してきた20年間の集大成でもあります。