不思議な細胞のリソソーム
免疫生物学研究室では細胞小器官の1つであるリソソームの膜糖タンパク質の局在化機構と機能を細胞生物学および分子生物学的な手法を用いて、解明しています。
生物を構成する基本単位である細胞には生体膜で囲まれた細胞小器官が存在します。高等学校の生物の教科書にも記載されている「核」、「ミトコンドリア」、「ゴルジ体」、「葉緑体」が代表的な細胞小器官です。細胞小器官には特定の機能が割り振られています。例えば、ミトコンドリアは細胞が生きていくために必要なエネルギー(ATP)を作り出す化学反応が集中しています。リソソーム(lysosome)も細胞小器官であり、DeDuveらによって発見されました。「lyso=加水分解 some=体」の意味があり、日本語ではリソソームは「水解小体」とよばれます。リソソームの中には多数の酸性加水分解酵素が含まれ、タンパク質、多糖類、核酸などの生体高分子をそれぞれの最小のパーツにまで分解します。一方で、リソソームは何でも分解するわけではなく、相手を厳密に認識しています。その認識には袋に相当するリソソーム膜の成分が重要となっています。
免疫においてリソソームは重要な役割を果たしています。白血球の一種である好中球やマクロファージは外来の微生物(細菌やウイルス)を食作用によって殺します。この際、リソソームの酸性加水分解酵素は微生物のタンパク質や多糖類の分解を行っています。また、樹状細胞やマクロファージはリンパ球に敵の情報を知らせる「抗原提示」という過程にもリソソームは深く関係しています。
当研究室ではリソソームの袋に相当するリソソーム膜に多量に含まれる糖タンパク質(lysosome-associated membrane protein: LAMP, lysosomal integral membrane protein: LIMP)の機能、リソソームへの局在化機構の研究を行っています。