医療薬剤学では基礎から臨床研究まで、幅広く研究を行っています。臨床に関する研究では、輸液バッグ内での薬の安定性を調べたり、薬局・病院実務実習で疑問に思った疾患や治療についての調査研究を行っています。基礎研究では、様々な病気において病巣部が低酸素になることに着目し、組織の低酸素化が病態にどのような影響を与えるのかについて研究を行っています。これらの研究はすべて患者さんの治療につながることを目標としています。また、研究における思考手順は、薬剤師が薬物治療を考える思考手順と似通ったところがありますので、研究を通して薬剤師に応用できる考え方を身に着けてもらえたらと思っています。
学部・学科・大学院
医療薬剤学研究室
基礎と臨床がつながる
研究内容
1.点滴はいつまで安定?
食べることができない患者さんでは、「高カロリー輸液」という1日に必要な糖分、アミノ酸、脂質、ビタミンなどが混合されている点滴を使用します。その中には、お薬を混ぜることが多いのですが、混ぜたお薬はいつまで安定に存在するのかよくわかっていません。そこで、薬局と協力してお薬の安定性を調べています。お薬の安定性がわかれば、薬剤師さんが何日分の点滴を作ることができるのか、患者さんのお宅に何日分の点滴を届けることができるのかわかります。
2.糖尿病では脂肪が低酸素になる
肥満は、糖尿病、動脈硬化、高血圧等、多くの病気の要因となります。肥満糖尿病の発症には、脂肪が肥大化することにより機能異常を来すことが関係しています。最近の研究で、肥満により肥大化した脂肪が低酸素状態となっていることが明らかとなってきました。当研究室では、肥満に伴う脂肪の低酸素化が、脂肪の機能変化にどのように影響するかを研究しています。
3.もっといい治療法はないの?この治療はどのくらい効くの?
医療の現場では、さまざまな疑問が発生しています。もっといい薬物治療はないの?この薬物治療はどのくらい効果があるの?など、薬学部5年生は病院・薬局実習で多くの疑問を感じます。そこで、世界の臨床論文を集めてまとめ、疑問を解決する調査研究を行っています。例えば、ある抗がん剤の副作用を予防するとき、この予防薬はどの程度効果があるの?、何人に一人が予防できるの?、他の薬と比べて違いがあるの?、など臨床で感じた疑問を解決していきます。