学部・学科・大学院
電気電子工学科

Department of Electrical and Electronic Engineering

介護・看護に貢献するスマートベッドシステム

介護・介護環境の向上を目指す福祉への新しい取り組み、「スマートベッドプロジェクト」。超音波技術を用いて特定の人だけ音声を伝え、複数マイクの信号処置で話者の口付近の音だけを選択的に増幅取得するプライベート音空間や、音の発生位置を特定する音響信号処理技術、音の発生位置の移動や周波数特性を用いた人の行動の推測、会話から患者の要求をくみ取る人工知能など多様な技術を適用して、スマートな介護・看護環境を作ります。

プロジェクトの背景

高齢化社会が深化していく中、介護・看護の高度化、介護士・看護師の負荷の削減が今後ますます重要となってきます。中でもベッドにおける介護・看護は負担の大きい部分であり、度重なるナースコールは看護師の負担の増加による過労の原因となっていると共に、発生する騒音が隣接するベッドの患者の安眠妨害や精神的負担にもなっています。また、認知症患者等が夜中にベッドより抜け出す徘徊行動は、先と同様に介護・看護者に精神的、肉体的負担になると共に患者の安全にも問題があり、事前の察知と行動抑制のためカメラ監視がされている例もありますが、プライバシーの確保に問題があります。我々は、このような課題を解決し、明日の福祉社会に貢献するため、音波を利用したベッドシステムを考案し、この実現のための取り組みを行っています。

スマートベッドシステム概要

提案するスマートベッドシステムは、患者の耳元でのみ可聴な音場制限スピーカと、特定位置から発する音のみを選択的に増幅する音源特定マイクを装着してプライベートな音空間を形成するスマートベッドと、患者の音声を認識し介護士や看護師に連絡するコンピュータ・通信システムで構成されます。ナースコールとして、患者の音声を音源特定マイクで選択的にピックアップ・増幅してコンピュータに伝送し、コンピュータは音場制限スピーカと音源特定マイクにより他の患者に迷惑をかけることなく対象患者と対話します。音場制限スピーカは耳元で音が発生するため、看護師が耳元で囁くような臨場感のあるコミュニケーションが可能であり、患者の安堵感の向上効果が期待できます。また、音声解析・認識により患者の要望や切迫度合を判断するシステムも検討しており、これにより患者の必要に応じた効率的な対処を行うことで看護師の負荷を低減し、看護師の過労やそれに伴うミスの発生を予防します。

研究風景

介護用のベッドを導入し、ベッド内での行動音の取得を行ったり、音場制限スピーカが実際にベッドで寝ている人にどのように感じられるかの評価を行ったりしてます。写真では足元のフットボードの上に音場制限スピーカ(パラメトリックスピーカ)が4個、ベッドのコーナーに音場特定マルチマイクロホンが設置されていいます。クリアすべき課題の沢山あるプロジェクトであり、代々の卒研生の努力で1歩ずつ実現に向けた歩みを続けています。