【心理学科】高校生を対象とした暴力防止授業の実施

【心理学科】高校生を対象とした暴力防止授業の実施

恋人との間であっても暴力の加害者にも被害者にもならないために、また、万が一暴力が起きても深刻化しないようにするために、大切なことがあります。

先月、心理学科の学生が高校生に対する暴力防止授業を行いました。その様子について、心理学科赤澤淳子教授からの報告をお届けします(投稿は学長室ブログメンバーの大杉です)。

 


心理学科の赤澤です。

2023年7月19日(水)の午後に、心理学科の発達心理学研究室所属の3年生7名が、「暴力防止授業-アクティブ・バイスタンダーを目指そう」と題した授業を、福山市立福山高等学校の6年生192名を対象として実施しました。この授業も今年で5年目になります。コロナの影響で2021年度はオンラインでの実施でしたが、今年度は昨年度に引き続き対面での実施となりました。

<2023年度の暴力防止授業メンバー>

発達心理学研究室所属の3年生は、2019年度より福山市立福山高等学校等の高校生を対象とした暴力防止授業を実施してきました。2019年度と2020年度は「デートDV予防授業」を実施し、被害者や加害者にならないための方策について、アクティブラーニングを導入し説明しました。

2021年度以降は、デートDVだけでなく、暴力全般を対象として、「アクティブ・バイスタンダー(active bystander)」について取り上げています。バイスタンダーとは、ただ暴力を傍観している「傍観者」という意味です。しかし、アクティブ・バイスタンダーとは、暴力を防止するために、暴力事案に介入していく「介入者」という意味です。自身が被害者・加害者にならないだけでなく、被害者を援助し、加害者の暴力を止めることができるようなアプローチについて、授業で説明しました。

<授業中の高校生の様子>

授業は大きく3部構成となっており、第1部の「暴力の境界(バウンダリー)」について、補助資料への穴埋めなどを指示しながら、学生の松下光希さんが、暴力の境界と種類について説明しました。暴力の種類に関しては、多種多様で暴力とは認識しづらい精神的暴力や、最近増加しているSNSを用いた暴力について丁寧に伝えました。

第2部の「暴力を防ぐために-他者視点」では、暴力の境界を考えるワークを行い、「暴力かどうか判断するのは自分ではなく、その行為を相手がどう感じるか」というような「他者視点」を持つことが、暴力の予防において重要であると、黒田莉帆さんが説明しました。

最後の第3部「暴力を防ぐために-アクティブ・バイスタンダー(介入者)を目指そう」では、暴力の被害者や加害者から実際に相談を受けた時の対応法について千葉優希さんが説明し、高校生と大学生で被害者と相談者役のロールプレイも行いました。

<松下さん、黒田さん、千葉さんの授業の様子>

<大学生と高校生でロールプレイをする様子>

以下は、参加した学生の感想です。

  • 松下光希さん(岡山県立玉島高等学校出身)

私は暴力の種類や暴力の境界線,境界線を越えてしまった時に行うべき行動について授業で説明を行いました。ワークシートを用いた授業だったので,穴埋め部分が書けているかなど高校生の様子を見たり,ゆっくり話したりすることを心掛けました。私は暴力の境界線について曖昧な認識をしていました。そのため,暴力の境界線をどのような行動で超えることになるのかなど高校生と一緒に学ぶことができたと思います。この授業を通して自分の境界線や相手の境界線を越えていないかなど考えることができました。今後の生活においても今回の授業で学んだことを活かしていきたいと思います。

  • 黒田莉帆さん(広島県立大門高等学校出身)

私は暴力を防ぐために大切な他者視点についての説明を担当しました。生徒さんに自分の考えをワークシートに記入してもらうところがあったので、全員が書けたタイミングをしっかり見て次に進むよう心掛けながら授業を行いました。今回の授業やその中で取り組んだロールプレイなどから私自身も暴力について様々な視点で学ぶことができました。また、授業後に生徒さんから授業を通して学んだことなど多くの感想を頂けたのでとても嬉しかったです。大勢の高校生の前で授業をするという貴重な経験をさせていただきました。

  • 佐藤優真さん(大分県立髙田高等学校出身)

私は、「こんな時あなたならどうする?」というロールプレイを高校生たちと行いました。みんなこの課題に真剣に取り組み、自分たちなりの答を精一杯出してくれました。何人か指名して答を聞いた生徒たちもおり、友達と何気ない会話をするように生徒たちに問いかけました。多少緊張しましたが、生徒たちの方が緊張も大きいだろうと思い不安にさせないよう意識しながらできたのではないかと思います。授業を聞いているだけではあまり心に留まりにくいので、今回このようなロールプレイをしたのは生徒にとっても我々にとってもいい経験になったと感じます。こうして前に出て何かを演じるというのはそうないことかもしれませんが、今回の経験を思い出し繋げられるようにしていきたと思います。

 

また、授業を受けた側の高校生が以下のような感想を書いてくれましたので、紹介します。授業内容や方法、また、大学生が行う授業について嬉しいコメントが沢山ありました。

「今日、改めて暴力の線引きが難しいことと同時に、自分自身の暴力の境界線を実感することができた。学んだことを生かしながら、関係性を築いていこうと思う。」

「暴力はいままで身体的な暴力しか知らなかったけど、他にも精神的、経済的暴力があることが分かった。また、自分と他人では嫌なことや暴力だと思うことも違うということが分かった。」

「ロールプレイを通して、他の人の意見をきくことが出来て良かった。」

「説明が丁寧で分かりやすく、スライドもきれいで分かりやすかった。」

授業の最後に生徒さんからの謝辞がありました。代表の生徒さんの挨拶から、皆さんが授業で学んだ内容をしっかり理解していることが分かり、大変嬉しかったです。

<高校生からの謝辞>

暴力防止授業の実施だけでなく、様々な面でサポートいただいている福山市立福山高等学校の髙田芳幸校長先生をはじめとし、今回の授業を企画してくださった保健部主任の和佐田知子先生、養護教諭の村上千賀子先生に心よりお礼申し上げます。

<村上先生、もふ君(羊)と記念撮影>


ロールプレイ等のアクティブラーニングを取り入れた充実の授業であった様子が伝わってきます。高校生のためのみならず、大学生自身の学びにもつながる、とても有意義な取り組みです。今後の展開にも期待しています!

 

学長から一言:発達心理学研究室の皆さん、これまでずっと続けている高校生を対象として、専門的に学んでいる心理学の知見を活用した暴力防止のための授業、お疲れ様でした。受講した高校生の皆さんからの反応から見て、ずいぶん効果的であったことが窺えます。逆に、授業の準備や実施を通じて、学生の皆さん自身が学んだことが多かったことでしょう。

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