【生物工学科(生物科学科への名称変更 認可申請中)】アラスカで国際哺乳類学会議

【生物工学科(生物科学科への名称変更 認可申請中)】アラスカで国際哺乳類学会議

生物工学科は、2024年4月より生物科学科に名称変更します(文部科学省に認可申請中。一部内容を変更する場合があります)生物工学科では生物多様性の教育に力を入れており、生物の生態や進化について学ぶことができます。今回は、哺乳類の進化に関する研究を国際会議で発表してきましたので、生物工学科佐藤が報告します。

 

COVID19による渡航制限もなくなり、以前のように国際会議に参加できる機会が多くなってきました。7月14日(金)~20日(金)にかけて、アメリカ合衆国アラスカ州アンカレッジで第13回国際哺乳類学会議(13th International Mammalogical Congress: IMC13)が開催されました。4年に一度開催される国際会議ですが、前回の開催が2017年で、今回はCOVID19の影響で開催が2年延期され、6年ぶりの開催となりました。わたしが最後に参加したのは2013年のベルファストで開催された第11回会議ですので、今回は10年ぶりという久しぶりの会議への参加となりました。日本からは30名程度が参加し、世界各地から哺乳類学者が集結しました。

カナダのバンクーバーを経由し、アラスカに向かう途中、夏真っ盛りの今、山々には雪が解けずに残っているのを見て、アラスカらしい雰囲気を感じました。アンカレッジは最高気温でも20℃以下で、避暑というよりは少し肌寒く感じました。遠くに来たものです。さぁこれから会議です。

今回は「Small Carniovre Symposium(小さな食肉類のシンポジウム)」という企画があり、そのオーガナイザーのジェラルディン・ヴェロン博士にお招きいただき、食肉類の味覚遺伝子の進化と食性との関わりについて講演をしてきました。ヴェロン博士のお名前は学生の時から知っており、10年前にベルファストで初めてお目にかかりました。今回は10年ぶりの再会です。マングースの進化の研究で著名なフランスの哺乳類学者です。会議に先駆けてパーティがありましたので、そこでご挨拶しました。その下の写真は、チリのギレルモ・デリア博士との写真です。デリア博士はネズミの進化で著名な方です。日本哺乳類学会が発行する雑誌であるMammal Studyで編集委員をしていただいています。デリア博士とも10年ぶりの再会でした。久しぶりの再会もあり、楽しいパーティでした(私は翌日の発表に備えてノンアルコール)。

さて、シンポジウムです。この国際会議では、6か所の大きな部屋でシンポジウムやテクニカルセッション(通常の口頭発表)が開催されました。私たちのシンポジウムでは、50名程度が集まりました。午前と午後の2部からなるシンポジウムでした。まず、オーガナイザーのヴェロン博士から趣旨説明があり、その後、すぐに私の講演がありました。本当は教授っぽく余裕を持って講演をこなしたいところですが、会議前は、練習練習練習の毎日でした。3週間前から学生の来ない朝早くと、学生の帰った夜遅くに1~2回ずつ講演の練習をし続けました(数えること50回以上)。その結果、聞き手に上手く伝わったのではないかと思います。練習はうそをつきません。学生も教員も関係ありませんね。講演では、これまでのイヌ亜目食肉類の系統進化の研究をまとめて、以前の学長室ブログで紹介した味覚遺伝子の進化についての話と、糞中DNAに基づくニホンテンの食性分析についての話をしてきました。

下の写真はアンカレッジ博物館のクマです。私の講演後の気持ちを表しています。国際会議の最後には、アンカレッジ博物館でパーティをするという粋な企画がありました(クマの下の写真)。講演を終え、気楽な気持ちで他の研究発表をたくさん聞いてきました。ポスター発表では世界各地の若い研究者といろいろと話すことができたのが良い経験でした。ポスター会場では、コーヒーやスイーツ、そして夜はアルコールが提供され、打ち解けた中で会話をすることができるのが日本の学会とは少し異なるところです。

会場のDena’ina Civic and Convention Centerはアンカレッジのダウンタウンの中心部にありますが、建物からは白く美しい山々が見え、自然が近くにあることを感じることができました。10分ほど歩くと、海の近くまで行くこともでき、散歩をしながらこうした景色を楽しみました。白樺をみると故郷の北海道を思い出します。

無事に長く、そして内容の濃い国際会議を終えました。会議の合間には南アフリカの研究者との共同研究の議論もでき、今後につながる有意義な会議でした。帰りのテッド・スティーブンス・アンカレッジ国際空港では時間があったので、空港内をウロウロしましたが、ヒグマやホッキョクグマ、ヘラジカ(ムース)などの大きな哺乳類の剥製が置かれており、さらにお土産屋さんにも哺乳類グッズがたくさん置かれており、改めて哺乳類が注目された町だと感じました。ようやく時差ボケに慣れてきたのにお別れです。

国際会議を終えて、あらためて対面で海外の研究者とコミュニケーションをとることは研究者にとって、とても大切なことであると思いました。そして、哺乳類学を志す日本の学生や若い研究者が堂々と発表しているのを見て、心強くも思いました。研究者は井の中の蛙であってはいけません。こうした国際会議に参加することでのみ知ることのできる自分の立ち位置というものがあります。皆さん、外に出よう!

福山大学は、そのユニークな教育舞台と充実した機器設備を使って、生物多様性の知識と技術を頭と体で学べる大学です。興味のある皆さんは、生物科学科(文部科学省に認可申請中:現 生物工学科)で学んでみませんか?

次回、8月20日(日)のオープンキャンパスでは、哺乳類の進化や生態の話や酵母の生物学の話を聞くことができます。ぜひお越しください!

 

学長から一言:佐藤淳教授、アンカレッジでの国際哺乳類学会議における研究発表、お疲れ様でした。日頃積み上げた研究成果を世界中から集まった、同じ分野でしのぎを削る同業者の前で披露したり、新たな情報を入手する、まさに研究者生活のハイライトですね。次回のオープンキャンパスでは、来年度から生物科学科に名称変更予定の生物工学科で、そんな佐藤教授の興味深い話もきっと聞けるはず。「いきもの」大好き人間、集まれ~!

この記事をシェアする