【国際交流】トビタテ!留学JAPAN ニュージーランド研修報告

【国際交流】トビタテ!留学JAPAN ニュージーランド研修報告

福山と海外をつなぐ様々な経験を通じ、グローバルな視野で地域の活性化に貢献したい・・・。そんな意欲ある学生を対象に、独立行政法人日本学生支援機構の官民協働海外留学支援制度を活用し、福山市が今年度から開始した「ふくやまグローカル人材育成事業」に「ニュージーランドの大規模養殖に学ぶ瀬戸内の養殖業発展へのチャレンジ」で応募して採用された生命工学部海洋生物科学科3年生の鈴木滉己さんより、ニュージーランド研修報告が届きました。(総務部企画・文書課投稿)

 

生命工学部海洋生物科学科3年生の鈴木滉己です。私はこの度、『2018年度(平成30年度)ふくやまグローカル人材育成事業 トビタテ!留学』に、「ニュージーランドの大規模養殖に学ぶ瀬戸内の養殖業発展へのチャレンジ」という留学テーマで採択され、夏休みを利用してニュージーランドで語学学習と養殖施設等でのインターンシップを行った。語学学習を行ったのは、ニュージーランド南島のクライストチャーチにあるカンタベリー大学に併設されたCCELという語学学校で、インターンシップを行ったのは同じく南島にあるMount Cook Alpine Salmonという養殖施設と北島のオークランドにあるニュージーランド三菱商事会社の2社である。留学期間は2018年8月20日から9月24日までで、以下はその報告である。

まず、ニュージーランドに渡航後、8月20日から9月7日までクライストチャーチにあるカンタベリー大学併設のCCELという語学学校で英語を学んだ。はじめの2週間は、広島の他大学の留学プログラムと同時期になりクラスに日本人ばかりなってしまったが、最後の1週間は1クラスが14人で、ブラジル人・中国人・タイ人・台湾人・日本人の学生とともにニュージーランド人の教師のもとで授業を受けた。授業はすべて英語で行い、コミュニケーションも英語で行う。今回は私にとって初めての海外体験で、初めての環境と日本語が通じないため、とても不安な気持ちでいっぱいだった。日本人の話す英語はとても聞き取りやすかったが、自分が会話した人の中ではブラジル人の話す英語がとても聞き取りにくく、コミュニケーションがとりにくいと感じた。学校生活を送っているとき、自分の話す英語が相手に通じたときや相手の質問に対して答えることができたときは、今まで感じていた不安を忘れられるほどうれしく、英語が楽しいと感じた。

また、今回1人で語学学校に入学したことは、とてもいい経験だと思った。その理由は、大学のプログラムで複数の日本人と留学すれば、わからないことがあれば日本人の友達に聞くなどして、あまり考えずに解決できてしまったりするかもしれないが、1人だと英語でわかるまで先生に質問して解決することができたからである。そして、今まで苦手だと思っていた英語を楽しく感じることができた。

これは、はじめの2週間いたクラス写真である。8人の日本人と1人の中国人というニュージーランドなのにニュージーランドらしくないクラスであったが、一緒に観光するなど仲のいいクラスで楽しかった。

はじめの2週間いたクラスの写真

語学学校に通っている間は、ホームステイをして生活した。ホストマザーとその娘と同じ学校に通っている中国人の生徒と生活して、夜はご飯を作る手伝いをしたりテレビで映画鑑賞をしたり、とても楽しい時間を過ごすことができた。しかし、生活の文化の違いなのか、毎日洗濯を行わず慣れるまで大変だった。料理は美味しかったが、お米が日本のお米と違い細長いパサパサした品種だったため、日本のお米が食べたいと思うときもあった。ホームステイ先で食べた料理では、中国人が作った醤油や酒を使用した料理が一番美味しかった。また、みんなが自分が作ったサーモンのムニエルを美味しいと言ってくれたのがとてもうれしかった。

3週間の語学学校での研修を修了し、9月10日から9月21日まではマウントクックアルペンサーモン社でインターンシップを行った。マウントクックアルペンサーモン社はトワイゼルという町にあり、そこではバックパッカーの部屋に宿泊した。滞在中多くの観光客の人と同室になり、英語でコミュニケーションをとることができ、とてもいい経験ができた。インターンシップでは孵化場と養殖場へ行き、稚魚の生産から成体の出荷までを体験してきた。

下の写真は、孵化場での作業風景である。稚魚を大きいサイズと小さいサイズに分ける作業であり、大きいものはさらに大きく、小さいものは大きくなりやすくするための大切な作業である。1日に45000匹を3人でサイズ分けした。サイズ分けをする匹数が多く、職場の人も苦労するほど大変な作業であり、とても疲れた。

サーモンの孵化場での作業風景

下の写真は、成魚に給餌している風景である。給餌は養殖において重要な作業であるが、1日に400kgの餌を手作業で給餌するため、1日の半分以上を給餌作業に費やした。自動給餌器を使用しないのは、目視で給餌スピードや給餌量をその日ごとに変えるためである。

成魚に給餌している風景

マウントクックアルペンサーモン社で大変だったのは、語学学校と異なり専門用語や地域特有の訛りがあるため、コミュニケーションをとるのが大変だったことだ。専門用語は養殖場のガイダンスを読み理解することで、専門用語を使用し質問できるようになり、コミュニケーションがとりやすくなった。訛りは慣れることができず、最後まで訛りの強い人とはコミュニケーションがとりづらく大変であった。しかし、趣味が同じ人が多く、楽しい時間もありとてもいい経験であった。

マウントクックアルペンサーモン社でお世話になったブライアンさん

このように、養殖場での研修は作業やコミュニケーションが大変だったが、本当に大変だったのは研修以外にあった。実は、今回の申請に当たり、ニュージーランドでは当初マウントクックアルペンサーモン社とは別の養殖施設での研修を予定していたが、こちらと先方との間の意思疎通に誤解があり、出発直前に先方から研修できない旨の連絡があった。ニュージーランドでのサーモン養殖研修は、今回のプログラムの白眉なので非常に焦り大学の先生も交えて先方と交渉したのだが、結局その会社での研修は不可能との結論に達した。もう出発まで日が無かったので、先生方と相談して取りあえずニュージーランドに渡航して、語学学校に通う3週間で新たな研修先を探すことにした。初めての海外、しかも語学学校に通いながら英語であちこちと交渉して研修先を探すという厳しい状況に置かれることとなった。研修先としては養殖場が理想であるが、そうもいっていられないので水族館や水産関係の会社など手当たり次第に連絡したが、研修先が見つからなかった。そうこうするうちに語学学校での滞在も最後の週になり、さすがに焦りの色が濃くなったところ、最後の週の週末にニュージーランド大使館から連絡があり、研修を受け入れてくれる会社があるかもしれないとの連絡をもらった。その会社が今回研修したマウントクックアルペンサーモン社で、今思い返しても綱渡りの研修プログラムであった。よくタイミング良く研修先が見つかったもので、お世話になったニュージーランド大使館やマウントクックアルペンサーモン社ほか多くの方のおかげで、無事ニュージーランドでの養殖研修を終えることができた。

ニュージーランドの地図(北島と南島)

9月24日は、オークランドにあるニュージーランド三菱商事会社のオフィスを訪問し、とても貴重なお話を聞くことができた。ニュージーランドは第一次産業で多くの外貨を獲得している。日本と違うところは生産者一人一人が経営者のマインドを持って、自分たちで生きていくためにしっかり考え政府の補助金に頼っていないところであり、経営者が経済学を学び、どう付加価値をつけていくのかなど、しっかり経営しているところだそうだ。日本では地域性が強く、流通が閉鎖的であり、従業員はただ作業をこなしているだけのことが多いので、ニュージーランド人のように一人一人が経営者マインドを持って働くなど、意識改革が必要になるとおっしゃっていた。ニュージーランドは、海外から人を呼び込み、産業を発展させてきたので日本も海外から人や良いところを取り込み、日本の良いところとミックスさせることで何か新しく良いものができるのではないかと考えている。今回ニュージーランド三菱商事会社の清水様とお話をすることで、ニュージーランドと日本の違いがよくわかり、日本の良いところとニュージーランドの良いところがよく理解できた。また、周りの人との関係性がとても重要なことや、いかに周りの人を引き付けられるかなど社会に出た時に重要なお話を多く聞くことができ、とても貴重な時間であった。

今回の留学は1ヵ月と短い時間であったが、毎日の生活がとても新鮮であり貴重な体験ができた。この留学で自分に足りないものや自分の強みなど、日本にいたらわからなかったであろうことに気付くことができ、成長できた1ヵ月であった。楽しいことばかりではなくつらいことも多くあったが、それを乗り越え克服できたこと、新しくできることが増えると辛いことも楽しいことに変わることに気づき、とても貴重な経験をすることができた。

最後に、今回お世話になったCCELの先生や友達、養殖の研修先を探してくださったニュージーランド大使館のケルさん、養殖場で送り迎えも含めて大変お世話になったブライアンさん、福山市の方、国内での研修でお世話になった方、大学の先生ほか多くの方々のご尽力、ご協力と幸運で無事ニュージーランドでの養殖研修を終えることができました。この場を借りて深くお礼を申し上げたいと思います。

オークランド(北島)の街並み

 

学長から一言:海洋生物科学科の学生にふさわしい、大変に密度の濃い研修でしたねッ!これを土台として、大きく世界にトビタツ人材に成長して下さいねッ!!!今回の貴君の留学に関わったすべての人が、心から期待しています!関係者の皆様、ありがとうございました!!!

この記事をシェアする