【海洋生物科学科】泉講師が「日本動物分類学会若手論文賞」を受賞!
この度、海洋生物科学科の泉講師が「日本動物分類学会若手論文賞」を受賞しましたので、学長室ブログメンバーの山岸が報告します。
日本動物分類学会では、2021年度より若手論文賞が設立されました。これは、日本動物分類学会が発刊する査読付き英文誌“Species Diversity”に当該年度に投稿された論文のうち、優れた論文を執筆した35歳以下の著者に贈られる賞です。
泉講師は、2021年(当時の肩書は日本学術振興会特別研究員PD、所属は琉球大学)に「The Largest Cnidae Among the Sea Anemones; Description of a New Haloclavid Species from Japan, Haloclava hercules (Cnidaria: Actiniaria: Enthemonae: Haloclavidae)」という論文をSpecies Diversity誌の26巻2号に投稿し掲載されました。この論文が日本動物分類学会による選考の結果、2022年6月1日に記念すべき第1回の若手論文賞の受賞論文に決定したのです。
この論文では、コンボウイソギンチャク科コンボウイソギンチャク属に属するHaloclava Hercules Izumi, 2021(図1)というイソギンチャクを新種記載(※)しました。
※世間一般で言う“新種(=名前のついていない種)”は、学問の世界では“未記載種”と呼びます。論文にして、世界共通の名前である学名(この種で言えばHaloclava hercules)を付けることで、初めて正確な“新種”となります。
この種は、2017年に東京大学大学院附属臨海実験所(神奈川県三浦市三崎)の沖で採集され、当時、大学院生であった泉講師が標本化して研究を進めていました。本種はイソギンチャクらしからぬ、非常に太い少数の触手を持ち、その触手の先端が棍棒状に発達します。そして、この先端の部分に非常に巨大な刺胞(イソギンチャクやクラゲが刺すための、毒針のカプセル)を持っていることが、最大の特徴となります(図2)。この刺胞は最大で300 µmほどの長さになり、これはイソギンチャク類はおろか、知られる限り刺胞動物でも史上最大の刺胞だそうです!
泉講師は、この巨大な刺胞を装填する棍棒状の触手を、ギリシャ神話の英雄ヘラクレスの持つ武器に見立て、本種に「ヘラクレスノコンボウ」という和名をつけました。
本論文は「大変オーソドックスな記載論文ではあるが、動物分類学の論文の基本となる“記載”という作業を丁寧に行い、新たなイソギンチャクの種を世に出した」という点が評価され、論文賞を受賞するに至りました。泉講師の地道なイソギンチャクの研究が、学会でも大いに評価されたことが分かります。2022年6月4日の日本動物分類学会大会において表彰式が行われ、表彰状(図3)が授与されました。
泉講師は「分類学自体は、決して地味な学問だとは思っていません。むしろ、“新種”や“ヘラクレスノコンボウ”などのインパクトで、市井に大いに発信できる学問であるという矜持があります。しかし、それも普段のたゆまぬ“地味な”研究があってこそのこと。今回の論文賞で、それが評価されたのは、掛け値なしに素晴らしい!」と述べていました。
学長から一言:本学赴任から間もないにもかかわらず活躍著しい泉貴人講師が、またもやアッと驚く手柄をあげました。若手対象の学会賞受賞、おめでとうございます! それもトップバッターとして日本動物分類学会史に残る功業です。このブログの説明に、「イソギンチャク好き」ならずともつい引き込まれてしまいました。もっともっと生物の神秘を解き明かして行ってください。