【海洋生物科学科】福山大学生まれの養殖シロギスがいよいよデビュー~出荷と市場調査~
新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。海洋生物科学科からの学長室ブログ2022年第1弾は、福山大学で飼育管理していた親魚から生まれ、学生たちの手によって育てられたシロギスのデビューがテーマです。海洋生物科学科の有瀧教授(内海生物資源研究所センター長、沿岸資源培養学研究室)からこれまでの取り組みと成果についてレポートが届きましたので、同学科学長室ブログメンバーの阪本がお伝えします。
なお、これに関連して、FM軽井沢の番組「軽井沢ラジオ大学」に出演の有瀧教授による説明もhttps://karuizawaradio.university/blog-dec242021.htmlで聞くことができますので、お知らせします。
シロギスの養殖技術開発
これまで福山大学では内海生物資源研究所(因島キャンパス)の施設を用いてシロギスの養殖技術開発を実施してきました。今年度は育てたシロギスをさまざまなところに出荷して、その評価を問う試みをはじめました。学生たちが頑張っている様子をご報告します。
因島大橋を望むロケーションに位置する因島キャンパスでは、6年前から瀬戸内海の沿岸資源に着目し、シロギスの養殖技術を開発してきました。
これまで学長室ブログでも「廻鮮寿司しまなみ」さんと行った商品開発(https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/25568/)や「クラハシ」さんと連携している実証的な取り組み(https://www.fukuyama-u.ac.jp/blog/48956/)を紹介してきました。今回は、実際に養殖したシロギスを世の中にデビューさせ、どのような評価をいただくのか、学生たちが半年に渡って調査しましたのでその一端をご紹介します。
福山市内の飲食店や魚屋さんにお届け
前回のレポートでも触れましたが、今、因島キャンパスで開発した技術を「クラハシ」さんが沖縄県の養殖施設で展開し、大量かつ安定的にシロギスを出荷することを進めています。数年後には産学協同で育ててきた養殖シロギスがみなさんの元に届くことになりそうです。ただ、その前には市場において養殖シロギスに対するニーズをしっかりと把握した上で、きちんとブランディングの方向性を考えなくてはなりません。そこで、まず昨年の7月から12月まで因島キャンパスで養殖したシロギスを生きたまま(活魚)約450尾、福山市内の飲食店や魚屋さん4店舗に届け、価格や利用方法、消費者の評判などについて調査しました。
東京の豊洲市場と大阪の中央卸売市場へ出荷
また、11月には氷で締めて(鮮魚)200尾を福山地方卸売市場に、12月には同じ処理を施した魚170尾を東京の豊洲市場と大阪の中央卸売市場へ出荷し、活魚と同様の取り組みを実施しました。
学生たちの汗と涙の結晶
これら調査は研究室の学生たちが主体となって進められ、データの一部は解析・取りまとめを経て、先日開催された海洋生物科学科の卒業研究発表会で発表されました。
少しだけ紹介すると、活魚での出荷は通常シロギスではできないため、非常に驚きを持って受け入れられました。また、活魚の特徴は刺身や寿司ネタとして使った時の透き通った見た目や、シコシコとした食感、上品な甘味ですが、どれも大好評でやはり活魚は養殖シロギスの大きなセールスポイントになることが再確認できました。一方、鮮魚は天然魚のほとんど流通しない秋〜春を中心に出荷することを考えています。今回も福山、東京、大阪の市場ではこの時期には珍しく、かつ状態の良いシロギスに注目が集まり取引価格も大きなものでは3500〜4500円/㎏と超高級魚の扱いをしていただきました。ただ、養殖シロギスの認知度はどの市場でもまだ低く、今後、特徴や利点を明確にして、世の中の方々に認めていただくことができるのか、そこが大きな課題であることも明白になりました。さて、これまでの地道な技術開発やそれを元にした養殖、出荷・調査の結果、学生たちの汗と涙(?)の結晶のような養殖シロギスはついに世の中に巣立っていきました。あとはどのように羽ばたき、立派になって社会に貢献できるか。担当した学生たちもこの春、世に出ていきます。まずは、育てたシロギスが一歩リードといったところでしょうか。
学長から一言:卵から孵化させたシロギスの稚魚を大型のテッポウギスに短期間で育て上げる完全養殖の技術を研究開発した成果が、いよいよ商品として本格的に市場に出回る段階になりました。これまで地道な工夫を重ね、苦労に耐えてきた教職員の皆さん、学生の皆さん、本当のお疲れ様でした。そしておめでとうございます。福山市内の寿司屋さんで実施されたデモンストレーションで一度だけ賞味する機会があり、そのおいしさに舌を巻いたものです。活魚として輸送し提供するには、また特別な技術開発が必要のようですね。そうした技術開発の過程を卒論にまとめて発表したというのが大学ならではの取り組み。今後とも、地元の株式会社クラハシさんや寿司店の皆さんと協働で、稚魚から大きく育ったシロギスのように、本事業が益々成長発展することを願っています。