【備後圏域経済・文化研究センター】創設記念シンポジウム開催のお知らせ
「備後」と言えば、現在の広島県東部の地域を指す旧国名です。では、「備後圏域」とは具体的にどの地域のことを言うのでしょう。と聞かれると「そういえばどのあたりだろう…」と思う方も多いのではないでしょうか。備後圏域は、福山市(連携中枢都市)、三原市、尾道市、府中市、世羅町、神石高原町、笠岡市、井原市の6市2町を指しています(参考)。
学長室ブログメンバー、人間文化学科の清水です(私も「そういえば…」の一人でした)。今回は、この「備後圏域」を名称に冠する「備後圏域経済・文化研究センター」の創設記念シンポジウムの開催について、センター長の青木美保教授(人間文化学科)から以下のとおりお知らせします。
2020年4月、「広く地域社会と連携して活力ある地域づくりに貢献すること、学術・文化振興に資すること」を目的として創設された備後圏域経済・文化研究センターは、その創設を記念し、学内外の専門家や地域の識者を招いて、シンポジウム「コロナ後の地域社会を考える:危機と社会・文化」を開催します。また、新資料の展示を含むセンターの活動(学生の地域活動を含む)の展示を行います。以下、概要についてお知らせします。なお、感染防止対策の面から人数制限を行いますので、事前申し込みが必要です。詳細は、チラシ・センターHPを参照ください。
※本ページ下部にも、申し込み用QRコード、フォームへのリンクを掲載しています。
Ⅰ 記念講演会「コロナ後の地域社会を考える:危機と社会・文化」
午前は、2名の専門家を招いて、広く社会と危機対応に関する講演会を開催します。
最初に、東日本大震災からの復興に関する多数の著書(『希望のつくり方』岩波新書等)等で知られる玄田有史氏(東京大学社会科学研究所所長、計量経済学・労働経済学)から、現代社会と危機対応について語っていただきます。
次に、広島県の文学、占領下文学、原爆文学等の著書(『広島の文学』渓水社等)を持つふくやま文学館館長の岩崎文人氏から、文学研究の観点から地域の危機対応と地域の文学について語っていただきます。
Ⅱ 記念シンポジウム「危機への対応—備後地域の過去と未来」
午後は、福山市における過去の危機と江戸後期の福山藩の対応(義倉についてなど)を振り返り、そこに地域独自の体制を見出すとともに、福山市の現代の産業構造についての考察を踏まえてコロナ後の地域社会への対応について、以下のように講演とパネリストの協議を行います。
基調講演
前半は、2名の地域の識者から以下の観点について語っていただきます。
最初は、菅波哲郎氏(元広島県立歴史博物館副館長)から、江戸後期の災害と一揆、それと並行する菅茶山の廉塾の創設とその役割について語っていただきます。
次に、菅田雅夫氏(ホーコス株式会社代表取締役社長)から、現代の危機対応の事例について、自社の対応を語っていただきます。
パネルディスカッション
後半は、「備後の危機対応の歴史的概観」から司会の青木美保センター長が問題提起し、学内外パネリスト4名(以下参照)及びディスカッションメンバー(張楓副センター長及び基調講演者の方々)によるパネルディスカッションによって、福山市の危機対応の知恵を浮かび上がらせるとともに、今後の地域社会への問題提起を行います。
学内パネリスト
文化部門
清水洋子(人間文化学部准教授、中国思想)は、義倉の設立・運営という視点から、菅茶山をはじめとする儒者の福祉思想について話します。
柳川真由美(人間文化学部准教授、日本史)は、近年の受託研究・神辺本陣の調査を踏まえて、神辺本陣・神辺宿の運営と危機について話します。
経済部門
田中征史(経済学部講師、マクロ経済学・労働経済学)は、福山市の産業構造の分析について話します。
学外パネリスト
岩本泰典氏(コドモエナジー株式会社代表取締役)は、東日本大震災後の福島に工場を設立し復興を手助けされており、その製品ルナウェア(蓄光・蛍光建材、自然エネルギーを循環利用〕は、2012年第4回ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞を受賞しています。震災復興の現場での活動とその問題点について、話します。
ディスカッションメンバー
張 楓(経済学部教授、地域経済史・比較経済史)は、『備後福山の社会経済史:地域がつくる産業・産業がつくる地域』(編著、日本経済評論社、2020年)、『近現代日本の地方産業集積:木工から機械へ』(日本経済評論社、2021年)の著書で、福山市の産業史について深く考察しています。その観点から、ディスカッションに加わります。
Ⅲ 展示「近世近代福山災害と危機対応の歴史―シンポジウム「危機への対応:備後地域の過去と未来」関連資料―」および展示「学生の地域研究」
シンポジウムの話題となった資料についての展示の概要は、以下のとおりです。委託資料「備前邑久郡岩佐家旧蔵書」は、門田朴斎・杉東旧蔵書を含む貴重資料で、これまで未公開の新資料です。
展示「近世近代福山災害と危機対応の歴史―シンポジウム「危機への対応:備後地域の過去と未来」関連資料―」
Ⅰ 福山災害の状況―近世・近代の様子
Ⅱ 近世の危機対応理念、および近代への継承
展示「学生の地域研究」
フィールドワークに関する展示を中心に、学生がポスター発表を行います。
以上のように、経済・文化の両面から研究センター研究員及び地域内外の研究者、企業関係者がそれぞれの観点から同主題について発言し、参加いただいた地域の皆さまと共に協議します。それによって、コロナ後の地域社会のあり方について、問題提起できればと願っています。
学長から一言:昨年4月に創設された備後圏域経済・文化研究センターの活動が本格化しているようです。学内外に向けてその活動の一端を披露するための創設記念シンポジム、楽しみですねえ。本学が全学を挙げて鋭意進めている「瀬戸内の里山・里海学」は従来どちらかと言うと理系の研究に傾斜していましたが、人文・社会科学分野の研究も強力に推進する上で、その中核となるべく設置された上記センターです。きっと日頃の研究の蓄積や実績が余すところなく示されることでしょう。期待しています。