【国際経済学科】留学生とSDGsについて考える
国際経済学科の特徴の一つに、多様性(Diversity)があります。カナダ人、中国人、韓国人の教員が在籍し、現在、中国、台湾、ベトナム、タイ、ネパール、ケニアなどからの留学生が日本人学生とともに学んでいます。生まれ育った環境の異なる私たちは、当然価値観も異なり、驚いたり、感心したりすることもしばしばあります。こうした環境のもとで、学生は海外留学や海外研修に参加するまでもなく、多様な価値観を自然に受け入れるようになり、地球規模で考えるようになります。先日、足立浩一教授がSDGs(Sustainable Development Goals)について、ネパールとケニアからの留学生とzoomを利用してディスカッションしました。このことについて、学長室ブログメンバーの白が紹介します。
2015年に、国連サミットで2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す17のゴール・169のターゲットが設定されました。これをSDGs(Sustainable Development Goals)といいます。「地球上の誰一人取り残さない(leave no one behind)」を誓っています。17のゴールは以下のとおりですが、国によって比較的に達成されている項目とそうでない項目があると思います。
アントニー君(ケニア)によると、ケニアではNo.1の「貧困をなくそう」、No.8の「働きがいも経済成長も」とNo.10の「人や国の不平等をなくそう」が改善すべき課題であるということで、No.5の「ジェンダーの平等を実現しよう」については、ほぼ達成されているということでした。ケニアでは、家庭内での父親の権威が非常に大きいと聞いていましたので、社会においても男性優位かと思いましたが、ケニア社会においては女性のリーダーがどんどん生まれており、賃金についても男女平等なようです。
ケニアは、東アフリカの国々の中では経済が発展しています。特に、首都ナイロビは高層ビルが立ち並び、スーツを着たビジネスパーソンが目立つ大都会です。一方で、ナイロビ近郊にはゴミ山があり、その近くにはスラム街があります。子どもたちがゴミ山からお金になりそうなものを拾い集めて、シンナー代を稼ぐ姿が見受けられます。
アントニー君によれば、こうした格差の原因は失業にあるとのことです。農村から仕事を求めて都会にやってきても、仕事にありつけない人がスラムに暮らし、治安や衛生環境が悪くなっていることです。スラムで育った子どもたちは学校に通えず、貧困が貧困を生み出す負の連鎖が起きています。さらに、農村ではいまだに児童労働などの問題もあるそうです。
次に、バンダリ君(ネパール)にネパール社会の問題点について聞いてみました。ネパールでは、No.5の「ジェンダーの平等を実現しよう」とNo.6の「安全な水とトイレを世界中に」が達成すべき課題であるということです。
ネパールでは、ヒンズー教徒が多数派で、ヒンズー教にはカーストがあります。あるカーストに生まれたら、この職業には就くことができないなどという差別が今でも残っているようです。都会では宗教意識が薄れてきており、女性の活躍も目立つようになっていますが、伝統的な田舎の社会では未だに女子は学校に通わせないという親も多いようです。また、家や学校にトイレがないというケースもあり、女子が学校に通えない原因にもなっています。トイレ設置の重要性も含めた教育が必要だとバンダリ君は強調していました。
以上は、ディスカッションの要約です。ケニアとネパールという2つの国だけを見ても様々な問題を抱えており、私たちの知らないこともたくさんありました。私たちは他国の事情を理解すると同時に、日本の抱える様々な問題についても考える必要があります。
詳しくは、YouTubeでのディスカッションを視聴いただければ幸いです。以下が動画リンクURLです。
私たちの暮らす世界はさまざまな問題を抱えており、それらを解決するために世界中の人たちが協力することが大切であり、協力するためにはコミュニケーションによる相互理解が必要であると改めて実感しました。今回はコロナ禍ということもあり、Zoomを利用し、留学生と教員でディスカッションをしましたが、今後は留学生と日本人学生で我々が抱える問題についてディスカッションする機会を設けていきたいと思います。
学長から一言:国際経済学科にふさわしい試みについてのレポートから、今まで知らなかったケニアとネパールの事情に触れることができました。自分の出身国の負の側面からも目をそらすことなく、問題を直視して解決への思いを率直に語ってくれた留学生の二人に感謝したいと思います。と同時に、こういう有意義な企画を実現させた足立学科長にも感謝。日本人と外国人留学生、あるいは国の異なる留学生同士が日常的に出会い、コミュニケーションすることで互いに理解を深め合えるのは素晴らしい経験です。こんな愉快で楽しい経験をもっともっと多くの若者に味わってもらいたいものです。